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インタビュー

村治佳織が参加者として語る、ロイヤル・フィルのカヴァー企画盤『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』での挑戦

「ギターで演奏することで、メロディーそのものの美しさを堪能できるんです」

オーケストラと豪華アーティストの共演によるディズニー音楽――日本からは村治佳織が参加

 オーケストラによる、単なるディズニーのカヴァー企画と侮るなかれ。アルバムのトリを務めるのは、オペラ界の最高峰ルネ・フレミングなのだから。言葉ひとつひとつを慈しみつつ、これほどまでに神々しい“星に願いを”が、かつてあっただろうか……。ルネと並び、本盤の白眉となるのが村治佳織による“パート・オブ・ユア・ワールド”だ。

ROYAL PHILHARMONIC ORCHESTRA 『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』 Decca/ユニバーサル(2020)

 「録ったのは1年以上前なんですよ。いつもDECCAで仕事をしているプロデューサーが日本に来た時に、東京のスタジオでレコーディングしました。既にロイヤル・フィルの録音は出来上がっていたので、そこにギターを合わせていったんです。でも自分の歌わせたい方向性もあったので、オケのパートを事前に繰り返し聴いて、どこまで歌わせられるか、かなり準備しました。相手の表現が決まってしまっているなかで、即興のような表現を出していくのは新たな挑戦でした」

 図らずもコロナ禍に先んじて、リモート・アンサンブルでの自然な表現にチャレンジしていたというのは実に興味深い。今回、村治が主に弾いたのは主旋律なのだが、作曲者アラン・メンケンの魅力をこう語る。

 「モリコーネみたいな抑揚で心をすぐに持っていかれるんじゃなく、どちらかといえば控えめ。でも抑制がきいているからこそ聴けば聴くほど、弾けば弾くほど味を感じられる。そんな魅力があるんじゃないかな」

 その旋律の魅力を最大限活かすため、少し普段とは異なる工夫をしたという。

 「今回、1859年製のトーレスというギターを弾いているんですが、とても豊かに歌わせたかったので、普段はギターのソロだとなかなか使う機会のない、まろやかな太い音がする第3弦(G)の高音で敢えて弾いてみたり、クラシックで多用すると暑苦しくなってしまう(ポルタメント的な)スライドも使ってみたりと、今までになかった弾き方も取り入れています」

 〈時の重み〉を感じさせるふくよかな音色を持つトーレスは、前作のアルバム『シネマ』から愛用されるようになった楽器。ディズニー〈映画〉という繋がりも含めて、まさに今回の録音は『シネマ』のボーナストラックにあたるような存在だといえるのだろう。是非、2つのアルバムをセットでお聴きいただきたい。

 「ギターで演奏することで、歌詞を離れてメロディーそのものの美しさを堪能できるんです。そして歌詞がないからこそ、言葉にならない感情を改めて音で表現できる。そんな喜びを感じながら演奏しています」

 映画音楽を、クラシック音楽に決して引けをとらない領域にまで昇華して聴かせてくれるのは村治ならでは。ギター・ファンならずとも必聴の演奏だ。

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