LIN-MANUEL MIRANDA, GERMAINE FRANCO 『ミラベルと魔法だらけの家(オリジナル・サウンドトラック)』 Walt Disney(2021)

「ハミルトン」「モアナと伝説の海」のリン=マニュエル・ミランダの才気煥発!

 2021年11月に公開されたディズニーの新作ミュージカル映画「ミラベルと魔法だらけの家」。第79回ゴールデングローブ賞でアニメーション作品賞を受賞。さらに第94回アカデミー賞3部門(長編アニメーション作品賞、歌曲賞、作曲賞)でノミネートされている。何より音楽ファンにとっては、かのリン=マニュエル・ミランダがミュージカルの要となる楽曲を手がけているというだけで胸が踊る(歌以外の劇伴スコアはジャーメイン・フランコが担当)。2015年、自身で脚本・作詞作曲・主演まで務めたヒップホップ・ミュージカル「ハミルトン」で一大旋風を巻き起こし、ディズニーのミュージカル映画「モアナと伝説の海」(2016年)ではアカデミー主題歌賞にノミネート。ブロードウェイ~ハリウッド界隈で今最も活躍している作曲家がリン=マニュエル・ミランダである。

 魔法を使うことができる一族のなかで、ただひとり〈ギフト(才能)〉を与えられなかったミランダが主人公の物語。舞台が南米コロンビアに設定されているため、音楽はもちろん、食文化、色彩、自然、国民性など、この国の特色がリアルに描かれている。リン=マニュエル・ミランダは監督とともにコロンビアを訪れ、現地の多彩な音楽をリサーチしたそうだが、プエルトリコからの移民の息子としてニューヨークで育った彼にとっては、自身のルーツに触れる旅でもあっただろう。

 冒頭で家族のギフトを紹介しながら物語の世界へと引き込む“ふしぎなマドリガル家”や、コロンビアの国民的歌手カルロス・ビべスが歌う“愛するコロンビア”には、アコーディオンが活躍するコロンビアの音楽〈バジェナート〉の要素が感じられる。一方で、“奇跡を夢みて”“本当のわたし”などではストレートな歌が登場人物の心の扉を一つひとつ開けていく。“増していくプレッシャー”のキャッチー&パワフルなビートは「ハミルトン」ファン必聴! 即興で作られたという“秘密のブルーノ”も、一度聴いたら忘れられないメロディが、複数の登場人物の心情を絡ませながら巧みに受け渡されていく。

 〈多様性〉をクリエイションの核とする彼の才能が余すところなく発揮されたミュージカルである。

 


INFORMATION
日本版オリジナル・サウンドトラック(CD)収録曲
○ふしぎなマドリガル家 歌:斎藤瑠希/中尾ミエ&Cast
○奇跡を夢みて 歌:斎藤瑠希    
○増していくプレッシャー 歌:ゆめっち(3時のヒロイン)
○秘密のブルーノ 歌:藤田朋子/勝矢/大平あひる/畠中祐/平野綾/斎藤瑠希 & Cast
○本当のわたし 歌:平野綾/斎藤瑠希
○2匹のオルギータス 歌:セバスチャン・ヤトラ
○奇跡はここに 歌:斎藤瑠希/中尾ミエ/中井和哉/大平あひる/武内駿輔 & Cast
○カシータ
○愛するコロンビア(エンドソング) 歌:カルロス・ビべス
○マリーポーサ ~羽ばたく未来へ~(日本版エンドソング) 日本語詞/歌:ナオト・インティライミ 他