日本のジャズ評論界にとっては月面着陸のような大きな1歩だったのでは、ともいえる日本初のジャズ評論集が復刻。本著が書かれたのは1948年。ジャズ評論家で言えば瀬川昌久さんはまだ24歳、故岩波洋三さんは15歳、今活躍中の評論家諸氏は生まれていない時代。マイルス、エヴァンス、コルトレーンなんて、この時点のジャズ史の中では存在しないに等しく、ディジー・ガレスピーは新人として紹介されている。ビバップ前のスイング・エラがまだまだリアルタイムだった頃に、深く掘り下げられた研究文献としてはかなり貴重で、 “スイート・ジャズ”、“ホット・ジャズ”といった当時の独特のジャンル分けも興味深い。