同じ協奏曲でアルバン・ベルクの素晴らしい名演を持つイザベル・ファウストがこのシェーンベルクで到達させた高次の表現は、12音技法という書法の向こう側を照らし出さんばかりに完成されている。緊密な響き、イディオムの深い把握、練度の高い技が作品を絶妙に解きほぐす。さらに驚かされるのは《浄夜》で、6人の最高の名手たちが、互いに差し出す響きの空間に表現の一切を開陳し交わらせ、最高度に昇華された音楽として創り上げている。抑制と開放のもとに駆使される多様なビブラートが美しいコントラストをもたらす。聴き手はいやがうえにも感覚を研ぎ、耳をすます。まさしく、極上の悦ばしき聴体験だ。