ユカリサは、空気公団の山崎ゆかりの新プロジェクト、ではない。もちろん、ユカリサの発案者は山崎で、空気公団にサポートで参加していた中川理沙(ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり)、吉野友加(tico moon)を誘って結成されたトリオではある。だが、山崎が望み、3人が同意したのは〈積み上げてきたものをゼロにして作る〉サウンドだった。

個性の違う女性ボーカル3声がうねるようにして混ざり合うハーモニーの特異さ、そしてピアノ、ハープ、オルガン、シンセ・ベースなどを中心に限られた楽器の音が織りなすサウンドスケープは、とても静謐。だが、それは息をひそめて鑑賞することを要求されるようなものじゃない。ある意味で、ユカリサという新しい生き物が動き出すさまを見つめ、彼女たちの声と音が作り出す呼吸とこちらの感覚とが一緒に混ざり合っていくようにさえ思える。

ジャケットやアルバム・タイトル、曲の持つ世界観、そして冬の海で撮られたというアーティスト写真が伝えるのは〈水〉のイメージ。生命の起源は海の水の中から生まれたということを自然と思い出した。

水から生まれ、これから始まるユカリサのことを、山崎、中川、吉野の3人に訊いてみよう。

ユカリサ WATER fuwari studio/Polystar Songs(2020)