気鋭のアーティストたちによる楽曲提供でも話題の〈SF青春群像劇〉。物語のエモーションに寄り添う〈歌〉が多く収められたサントラの第2弾が到着!!

 監督・脚本を夏目真悟、アニメーション制作をマッドハウスが務め、キャラクター原案を江口寿史が手掛けるTVアニメ「Sonny Boy」。多様かつヴィヴィッドなミュージシャンが楽曲を提供していることでも大いに話題を呼んでいるこのアニメのサウンドトラック第2弾『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 2nd half』が到着する。

VARIOUS ARTISTS 『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 2nd half』 flyingDOG(2021)

VARIOUS ARTISTS 『TV ANIMATION Sonny Boy soundtrack』 flyingDOG(2021)

 韓国の宅録作家、空中泥棒の可憐なエレクトロニカ“Kodama's Theme”とエレクトロニック・デュオ、Ogawa & Tokoroによるエキゾな小品“Soft Oversight”という心地良いインスト2曲も収める一方で、多くの歌モノ楽曲を取り揃えているのが今回のサントラ第2弾の大きな特色だろう。インスト・バンドという印象の強いtoeも、ここではささやかなヴォーカルを配した“サニーボーイ・ラプソディ”を披露。ミツメはインストの“ソウとセイジ”に加えて、現在の彼らのモードに直結するシンプルなバンド・サウンドのポップソング“スペア”を提供している。

 「全ての脚本を読んで、ストーリーが分厚いバックグラウンドとしてあったので、作詞ではそれらを落とし込んでいくということを行いました。サウンドは少し(登場人物の)長良目線をイメージしました。自分たちが高校生の頃、こういう音楽ができたら最高だっただろうなと思うようなサウンドになっていると思います。時期的に、(ミツメの最新作)『VI』を作った時とそんなに離れていなかったので、熱量そのままに制作しました。アルバムを作って以降、ミツメの次に発表する楽曲自体はどうしようかなと考えているところですが、今回については普段通り力の入った制作といった感じだったように思います」(川辺素:ミツメ)。

 ひときわ流麗なオーケストラル・ポップ“Lightship”を提供しているのはザ・なつやすみバンド。メンバーの中川理沙が「担当したのは〈葬儀〉の曲なのですが、〈重かったり暗かったりする感じではなく、前を向いて行けるような、いつも通りのなつやすみバンドで作ってください〉と言っていただきました」と語る同曲もまた、彼らの持ち合わせるチャームがそのまま発揮されたナンバーとなっている。

 「映画音楽のようにドラマティックな展開にしたいなとは最初から思っていたので、ストリングスやフルートは入れたくて、とても信頼している素晴らしいサポート・ミュージシャンの皆さんに一緒に演奏してもらいました。バンドのオリジナル作品と違うのは、物語と登場人物がはっきりしていること。何もないところから自由に作るより緊張感はありますが、自分の頭の中で人物をイメージしながら(時にはその人の中に入ってみたりしながら)作っていたので、キャラに対する愛情が強くなりすぎてアニメ1話目からすでに泣きそうでした。自分たちのライヴで演奏する時も確実に彼らの顔が浮かんでくることでしょう……」(中川理沙:ザ・なつやすみバンド)。

 そんなザ・なつやすみバンドとコントラストを描くように、ガールズ・バンドのカネヨリマサルは力強いオルタナ・ロック“今日の歌”を鳴らしている。「カネヨリマサルの音楽にすることは忘れずに、この物語の中でこんな歌が流れてほしいなとイメージしながらサウンドを作りました。アニメを観終わった後に、どこか強くなれるような作品だと思ったので、そんな作品に合う芯のある真っ直ぐな音楽になるよう意識しました」というこの楽曲は、そのサウンドもさることながら、何よりも歌詞が胸を射抜く。世界/他者との関係性に煩悶する普遍的な感情を、飾らないシンプルな言葉で描いており、冒頭の〈どんな魔法でも私の心はあげないよ〉というフレーズから引き込まれる。

 「台本を何度も読み返し、人物の心情を自分に重ねて共感をたくさん得て歌詞を書きました。なので、『Sonny Boy』という作品を意識はしていたものの、自分たちの歌として、自分が今思うことや伝えたいことを歌詞にできたと思っています」(千歳美那:カネヨリマサル)。

 それぞれが「Sonny Boy」の1エピソードを担うような形で制作されたこれらの楽曲は、物語のエモーションに寄り添いながら、いずれも各人の際立った個性がストレートに反映されている。美しく刺激的な、さまざまなサウンドが詰め込まれたコンピレーションとして、『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 2nd half』は多方面のリスナーが楽しめるサントラ盤と言えるだろう。

『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 2nd half』に参加したアーティストの作品。
左から、空中泥棒の2018年作『Crumbling』(Botanical House)、Ogawa & Tokoroの2020年作『Shinmaiko』(KAKUBARHYTHM)、ミツメの2021年作『VI』(mitsume)、カネヨリマサルの2020年作『心は洗濯機のなか』(D.T.O.30.)、ザ・なつやすみバンドの2019年作『Terminal』(TNBレコード)、toeの2018年作『OUR LATEST NUMBER』(Machu Picchu)