一昨年、バンド結成20周年を迎えたYOUR SONG IS GOOD。そのアニヴァーサリー・イヤーの記念として、翌年の2019年4月21日に東京・日比谷野外音楽堂でワンマン・ライブを開催。そのライブ直前の3月には、20年のバンド・ヒストリーを描き出してきた過去の楽曲10曲をリアレンジし、一発録りにして1日で録音したアルバム『Sessions』をリリースした。ハードコア・パンクからポスト・ロック/エモ、ファンク、スカやカリプソと、その音楽性を進化させ続けてきた彼らは、2013年の『OUT』以降、ハウスやバレアリックといったコンテンポラリーなダンス・ミュージックに触発されたバンド・サウンドに磨きをかけ、『Sessions』においては、バンドのレガシーを未来の原動力に変えるという新たな局面を迎えた。
5月20日にリリースされたばかりの『Sessions 2』はその第2弾アルバムにあたる作品だ。COVID-19の影響によりライブ活動を封じられながらも、バンドは過去の楽曲を検証&再構築し、現在やるべき姿にチューンアップ。次なる活動に向け、更なる飛躍の機会をうかがうサイトウ“JxJx”ジュン(オルガン)、ヨシザワ“MAURICE”マサトモ(ギター)、松井泉(パーカッション)が、バンドの充実ぶりを色濃く投影した新作について語った。
再解釈と更新――ダンス・ミュージック的発想で生まれた〈Sessions〉
――去年3月に過去の楽曲を再レコーディングした『Sessions』のリリース。そして、4月に日比谷野外大音楽堂でのライブと続いたバンド結成20周年を記念する一連の流れを経た手ごたえ、心境はいかがですか?
サイトウ”JxJx”ジュン「心境としては、コロナウイルスの影響による大きな状況の変化で、すべてがリセットされてしまいました(笑)。まあ、そこは置いておくとして、流れという意味では、前作『Sessions』は20周年の野音ありきの企画盤だったんですけど、あの作品を作ってみて、昔の曲と最近の曲を共存させるのはいろいろ難しいところもありつつ、不可能なことではなかったな、と。
作品リリース後の野音のライブはそれ自体が特別なものだったので、バンドの歩みとしては良い意味でイレギュラーなものとして捉えているんです。そうした一連の流れを経て、正規の新作アルバムをそろそろ出さなきゃなと思いつつ、手を動かすじゃないですけど、まず、バンドで動かせるところを動かして温めておこうかなってところで、『Sessions』の続編に取り掛かろうと思いました。
僕らは何でか、いまだにいつも手探りしちゃってるバンドなんですけど(笑)、『Sessions』の制作を通じて、バンドとしてやれることが増えたので、第2弾の今回はそれを試したり、さらに発展させたりしてみたくもありました」
ヨシザワ”MAURICE”マサトモ「あと、これまで、ライブ盤を出してほしいという話が出たことはあったんですけど、実際に作ったことはなくて。『Sessions』では結成から20年越しで、昔の曲も今の曲もライブでやっているように一発録りで作品にまとめることができた。しかも、その制作中に候補から漏れた曲も結構あったので、〈『Sessions 2』も出来るね〉という話になり……。今回の『Sessions 2』の制作中にも候補から漏れた曲が出てきたので、それが『Sessions 3』になるかどうかはわかりませんけど、まだまだ出来るなとは思っていますね」
松井泉「過去の曲を過去のままじゃなく、今のYOUR SONG IS GOODとしてアップデートするのは、すごい面白い試みだなと思いますし、永久機関を手に入れたような気分でもあります(笑)」
MAURICE「確かに。今後も新作を出し続けていけば、新たな〈Sessions〉もきっと出来るよね(笑)」
JxJx「確かにそういう意味では、永久機関を手に入れた感じはあるね(笑)。若い頃は、過去の曲の焼き直しに対して、ポジティヴな印象を持っていなかったので、常に新しい曲を作り、演奏し続けなければ、と考えていましたが、世の中には再結成したバンドが代表曲を再レコーディングした作品がいっぱいあるし、リスナーとして音楽を聴き続けてるうちにそういう作品もぜんぜん嫌いじゃなくなっていったという」
――はははは。例えば、ジャズがスタンダード・ナンバーをインプロヴァイズしてオリジナリティーや演者の個性を表現するように、新曲を作ることだけがオリジナルな表現というわけではないですし、音楽は知れば知るほど、価値観が広がっていくと思うんです。
JxJx「そういったこともあって、自分のなかで何かいろいろほどけてきて、この〈Sessions〉シリーズに関しては楽しく作れてるような気がします。実際の作業としては大変な部分もいっぱいあったんですけど、精神的には楽しい作業でしたね」
――ダンス・ミュージックにおけるリミックスやリエディットは解釈の斬新さ、批評性が問われる創作行為であって、当たり前のように行われていることですし、リミックスやリエディットを〈焼き直し〉とは言わないじゃないですか。ダンス・ミュージックの考え方をインストールしたYOUR SONG IS GOODが『Sessions』と今回の『Sessions 2』でやっていることもリミックスやリエディットに近いものだと思うんですよ。
JxJx「確かにそうですよね。これだけダンス・ミュージックを聴いてきたのに、思わず〈焼き直し〉という、昔ながらのロック・リスナー気質な発言をしてしまいました(笑)。確かに、ダンス・ミュージック的発想ではごくごくポジティヴな行為といいますか、そういう考え方がインストールされたからこそ、『Sessions』が生まれたところは少なからずありますね」