インタビュー

ビング&ルース(Bing & Ruth)、NYの室内音響アンサンブルが新作『Species』を語る

「ミニマルもカントリーも〈アメリカ音楽〉」

Photo by Tonje Thilesen

4ADの実力者が到達した、アメリカン・サブライムな音風景

 NYの鍵盤奏者/作曲家、デヴィッド・ムーア率いる室内音響アンサンブルBing & Ruth。4ADからの新作は、壮大な砂漠を長距離走って得られるトランス感をファルフィッサ・オルガンで表現。初期ミニマル・ミュージックの創造性とリンクする、魔術的作品に迫る。

BING & RUTH 『Species』 4AD/BEAT(2020)

──今作の制作プロセスについて教えてください。

「まず、1人で1年くらいかけて作曲した。オルガンを携えて色々な場所に各々数週間ほど滞在し、その後カリフォルニア州に移り数ヶ月間作曲した。ある程度曲がまとまってから、2人のメンバーを呼び、練習しながら手を加え、西テキサス州のペカン農場にあるスタジオで1週間くらい生活しながら作業したんだ」

──あなたの音楽は、ミニマリズムの作曲家たち、あるいは他の異なる音楽文化の系譜、どこに属していると考えますか?

「ミニマリズム、前衛や実験音楽も好きだけれど、ブルーグラスやオールドタイム、カントリーも、ヒップホップも好き。フィリップ・グラスやもラ・モンテ・ヤングと同程度にロジャー・ミラーにもつながりを感じる。アメリカ音楽の歴史の一部と認識しているね」

──ファルフィッサ・オルガンを今作で使用したきっかけとはなんでしょう。

「ドアーズ、ピンク・フロイドやライヒ、グラスで前から知っていたけど、友人のスタジオで弾き、瞬時に恋に落ちてしまった。自分の想像を上回る深みがあって、楽器の特性を深く探求してたんだ」

──はまっている、大砂漠における長距離走と自身の音楽とは関係していますか?

「デス・ヴァレー(広大な砂漠のあるカリフォルニア州の盆地)の真ん中では何か超越したものの存在を感じずにはいられず、最近は砂漠で過ごす時間が多くなった。長距離走も次第に本気になり、極限まで自分を追い込むようになった。1日何時間も走り続けると完全なトランス状態に陥るということが分かった。そして楽器を使ってその感覚に到達することもできるようになったんだ。リスナーには1時間のアルバムを集中して聴いてもらいたいと思っている」

──今作における作曲と即興の関係性について。

「普通はメロディやコード上での即興が多いけれど、今作では特定のフレーズの長さや形式を意識して即興した。狙いは、尺を長くしたり短くしたりして勢いやエネルギーを作り出し、変化をつけることだった。パターン化されて聴こえるものの多くは、実際に聞いてみると単純なものはなくて色々な要素が混在している。そして即興によって音楽体験は深まるんだ。日本で演奏できる日を楽しみにしているよ」 

 


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