スキャット・ブラジリアン・フュージョンの大人気盤がCD&LPで復刻!

 グルーヴィーなリズム、きらめくフェンダー・ローズ、めくるめくスキャット! そんな謳い文句が付いているだけで反応する音楽マニアは多いと思うが、その期待を絶対に裏切らない傑作として、筆頭に挙げたいのがマンフレッド・フェストの『ブラジリアン・ドリアン・ドリーム』だ。

 マンフレッド・フェストはボサノヴァ黄金期から活躍するピアニスト。1960年代にはセルジオ・メンデスがプロデュースしたボサ・リオで音楽的なリーダーとして成果を上げ、米国での活動拠点を作り上げた。1980年前後にはいわゆるブラジリアン・フュージョン的なサウンドを追求し、リー・リトナーやジェイ・グレイドンなどともセッションを行っている。その後もジャズ、フュージョン、ボサノヴァなど様々なシーンで名プレイヤーとして名を馳せ、1999年に逝去するまで音楽シーンに大きな爪痕を残した。

MANFREDO FEST 『BRAZILIAN DORIAN DREAM』 unimusic/Far Out Recordings(2020)

 この『ブラジリアン・ドリアン・ドリーム』は、ボサノヴァを経てクロスオーヴァーやフュージョンが盛り上がりつつある1976年にレコーディングされたもの。基本的にはドラムスのアレホ・ポベーダ、ベースのトーマス・キニを従えたトリオ編成だ。安定したリズム隊の上で、マンフレッドはフェンダーローズ、クラヴィネット、アープ、モーグといったキーボードやシンセサイザーを縦横無尽に弾きまくる。彼の多才さとアイデアが詰まった演奏が、たっぷりと披露されているのだ。

 加えて、もうひとりの主役と言えるのが、スキャットで参加しているロバータ・デイヴィスだ。シンガーとしてはほぼ無名に近い存在ではあるが、彼女の華麗なスキャットがあってこそ輝いている作品である。サンバやボサノヴァの影響はもちろん、チック・コリアの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』にも通じるサウンドも聴くことができる。ジャズ好きはもちろん、DJユースにも使える心躍る一枚。この夏のアンセムとして活用していただきたい。