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『Piñata』全曲解説

――ちょうど曲の話も出てきたので、『Piñata』の全曲を簡単に紹介してもらえますか。まずは1曲目の“シャンデリア”から。MVが公開されていて、YENMAのキャッチーさが詰まった曲ですよね。

希実「そうですね。ちょっとバカでかわいい曲ですね」

麻美子「恋に夢中で、ハッピーな感じで」

「青春時代の恋愛。今だからこそ青春だったなって言えるような、昔の美しい記憶を、ギラギラしたまま真空パックして作って出した曲ですね。メンバーにはさんざん弾けていただいて」

麻美子「相手の子に一直線な感じだよね」

希実「むしろちょっと怖い(笑)」

麻美子「シャンデリアに乗って人はやって来ないし(笑)」

――そこですか(笑)。プラス思考すぎて怖いくらいの。

「その狂気さはMVからも感じ取っていただければ(笑)」

――次は2曲目の“Cavalry”。

武尊「〈切り込み隊長〉みたいな意味ですね」

「改名する決意表明ですかね。その一言に尽きます」

――最初は怒りとか悔しさとかをバネにしながら、でも確実に夢に向かってる感じがありますね。

「起爆スイッチは何でもいいと思ってるんです。怒りとか取り扱い注意な感情でも糧にして、人生で積み上げてきたものをバーンと弾けさせたい。かつ仲間を信じる気持ちが芽生えたり、そうなった時に自分も信じられるようになったりして、YENMAとして奮い立って快進撃してやろうっていう決意ですね」

――ソロもめちゃくちゃカッコよくて。

希実「ありがとうございます。あれは好き放題やらせていただきました(笑)」

武尊「一発録りなのがいいよね」

――3曲目は先ほど話題にも出た“Blue Monday”。

希実「この曲は、私が歌っているところは私が詞を書いて、光のところは光が書いて、分かりやすい男女の掛け合いの歌になっていると思います」

「恋愛ってキレイなことばかりじゃないですよね。その生々しさとか毒々しさ、女性特有のズルさとか、男の持つなよなよさとか、そういったものをいかにリアルに追求するかっていうテーマで、ディスカッションしながら作りました」

希実「最後の掛け合いも男女で言っていることに温度差があって、かなり練って考えたので、そういうところも楽しんでほしいですね」

――聴いてて〈分かる~〉って思いました(笑)。

希実「共感してもらえるのが一番うれしい!」

――次は“あなたに花束を”です。

Charles時代の“あなたに花束を”のMV
 

「この曲は古くからある曲で、希実をCharlesに入れようっていう頃からやってた大切に育てている曲です。恋愛をしていた頃の気持ちを、おじいちゃんおばあちゃんになっても忘れたくないっていうのをパッキングしています」

――こういうバラードがアルバムに1曲あるといいですよね。5曲目は元気な“ユートピア”です。

「これは武尊の好きなレッチリ(Red Hot Chili Peppers)のビートを意識して作り始めて、やってるうちにカントリーの要素もぶち込みたくなって、結果的に多国籍な雰囲気になりましたね」

麻美子「歌詞も急に〈上海〉とか〈ジャカルタ〉とか出てくるしね」

「でもこの曲の根底にあるのは、僕の親友との関係ですね。その頃の何をやっても無敵だった感じとか、何事にも目が輝いてた感じ、そういう大人になるにつれて忘れがちな感情を記憶しておきたくて作った曲です」

――6曲目は“茜色のワンピース”。この曲を聴いた時はYENMAってこういうアレンジも出来るのかって思いました。

希実「けっこうボサノヴァちっくな感じで始まって」

「個人的には僕が爆発した曲だと思っています。昭和歌謡感というか」

麻美子「そうだね」

希実「でもメロディーはそうだけどサウンドはそうは聴こえないよね。サビは四つ打ちだし、急に変なセクションが入るし」

麻美子「歌謡曲がベースでも〈今感〉を取り入れるのは大事だと思っています」

「だから僕は自分の歌謡曲感を全開で出したけど、4人のいろんなルーツを組み立てて出来たので、YENMAとして新しいまとまりが作れたなと思っています」

――7曲目は“さよなら”です。

Charles時代の“さよなら”のMV
 

「これはCharles最古の曲ですね。思い入れが強かったので、あまりアレンジに変化を加えたくなかったんですけど、だからこそどういう風にしたら成長とか進化を見せられるかなって、演奏面からすごく気を使いました」

武尊「大きくは変わってないですけど、今の僕らの一番いい状態に仕上がったと思います」

希実「細かく見ると実はすごく変わってるよね。それぞれが曲の捉え方を変えたし」

「そういうのって僕らにとっては大事なことをしてると思ってます」

希実「あと前の音源と大きく違うのは、最後の最後の〈さよなら〉のところで、たまたまレコーディング中にパソコンのソフトが落ちてヴォーカル以外の音が止まっちゃったんです。でもそのたまたま演奏が消えたのが〈意外と良くなかった?〉ってなって、最終的にブレイクするアレンジになったんです」

「そうだったね。別れの歌だけど悲観的ではなくて、前向きに聴いてほしいなって思いますね」

――そして最後は“西へ行こうよ”です。

「70~80年代のディスコ・サウンドをオマージュしたらおもしろいだろうなと思って作った曲です。例えばサンフランシスコが自由の象徴だと考えられていたこととか、太陽が東から西へ向かっていくことなどから、〈西〉を希望の地だと捉えている前向きな曲ですね。だからダンサブルで当時の良さを出したかったし、もう一度ディスコ音楽の良さを伝えたかったんです」

――なるほど。アルバム名の『Piñata』(ピニャータ)というのはメキシコのお祭りで使われるくす玉のことですが、なぜこのタイトルになったんですか?

麻美子「私がこの言葉を案として出したんですけど、いろんな感情とかジャンルが詰まっていて、それをバンと割るイメージがあったんです」

「子供が割る感じとか、まさに打ってつけなんじゃないかって」

希実「かわいい馬のくす玉を、かわいい子供が無慈悲にかち割る感じが、ただかわいいだけじゃなく、毒々しかったり生々しかったりして、〈それしかない!〉くらいに思ったんですよね」

――バンドの多国籍な感じとも合ってますよね。

一同「ありがとうございます」

 


YENMAの今後

――そしてトピックとしては今回、松岡モトキさんとヒダカトオルさんがプロデュースをされています。お二人とはどういう話をしましたか?

「松岡さんは本当に歌心を大事に考える方なので、僕はヴォーカリストとして一皮だけじゃなく何皮も剥けたなと思っています。〈どういうことを伝えたいか〉ということを僕に細かく訊いてくださって、ひたすらディスカッションをしたうえで、どうやって理想の形に持っていくか、歌を軸に考えてくださいました」

希実「アレンジも闇雲にするのではなくて、〈この歌詞だからこうしよう〉っていう説得力のある音やコーラスの積み重ね方をしましたね。今までの私の中になかった発想なので、全員考え方が変わったと思います」

麻美子「そうだね、〈伝えたいことは何なのか〉ってことを考えるようになったね」

「ヒダカさんは発想が奇抜で、最初は〈いやいやいや〉って思うようなことでも、いざ当てはめてみるとがっちりハマるような方ですね。〈今っぽさ〉を出すのもうまいですし」

武尊「さっきも言ってましたけど、僕らの曲ってそのままだとちょっと昭和ちっくになりがちで、それに対してヒダカさんは〈今の色〉を出そうとしてくださって」

希実「楽曲に無理のない範囲で小さいアレンジを加えることで一気に華やかになるから、魔法をかけてくれるようなすごいアイデアをたくさんくれる方ですね」

「二人とも僕らの意見をすごく立ててくれて、相性よく出来たなと思います」

――最後に、12月にはリリースライブが控えていますが、一方で今年はライブがなかなか出来なかったり、いまだに音楽の在り方が問われていたりしますよね。今後はどういう活動をしていきたいと思っていますか?

希実「やっぱりライブハウスになかなか出られなくなってしまったのは残念ですけど、ライブに出ることだけが全てじゃないなという話はしていて、もっと他にできることはあるよねってよく言っています」

「もちろんライブハウスは絶対大事にしていくべきだと思うんですけど、ライブ活動にすがっているだけじゃ今の世の中どうしようもないので、しっかり今の情勢を捉えようと思っています。例えば配信ライブでもただ配信するだけじゃなく、今の時代だからこそできる配信ライブを突き詰めたいし、アンテナを高く張って、時代にそぐう活動をしていきたいと思っています。常識を捨てないと勝ち抜けないもんね」

希実「そうだね。みんながやってない新しいことをやりたいね。何だろうね」

麻美子「何だろうね(笑)」

――オリンピックも来年ですし。

希実「ちょっと来年は間に合わないかな(笑)。4年後とか?」

「4年後は東京じゃないよ(笑)」

 


LIVE INFORMATION
YENMA 1st LIVE “Piñata”
12月10日(木)東京・渋谷WWW
開場/開演:18:00/19:00
価格:3,300円(税込)※全席自由
(同日有料の生配信も実施。詳細は後日発表)
出演:YENMA、ゲスト:SAKANAMON