天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週はロック・シーンの大スターが亡くなりました。ヴァン・ヘイレンの創設メンバーであり、不世出のギター・ヒーロー、エディ・ヴァン・ヘイレンが10月6日に亡くなりました。享年65。10年以上にわたって、がんとの闘病を続けていたそうです」

田中亮太「亡くなった方の年齢をふまえて発言するのは抵抗があるのですが、やはりまだまだ健在なミュージシャンが多い世代だけに、悲しみもひとしおです。ロックにおける功績は言うまでもないですが、ポップソングの作り手としても超一流だったと思います。ヴァン・ヘイレンには歴代3人のシンガーが在籍していますが、どの時代にもめちゃくちゃ好きな曲がありますね。僕は特にサミー・ヘイガ―期に思い入れが深いので、“Why Can’t This Be Love”(86年)とかたまりませんね」

天野「僕はバンドっていうよりも、やっぱりマイケル・ジャクソンの“Beat It”(83年)ですね。この曲ではスティーヴ・ルカサーも弾いていますが、ギター・ソロがヴァン・ヘイレン。とにかく、アイコニックで〈ポップ〉な方だったと思います。RIP」

田中「週末、関東地方は台風の影響でなかなか外に出られなさそうなので、ヴァン・ヘイレンを聴いて追悼しましょう。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

1. Sevyn Streeter feat. Davido “Kissez”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は、セヴン・ストリーターがダヴィドをフィーチャーした“Kissez”! これは最高ですね。アフロビーツの勢いを感じる一曲です。アフロビーツについては、9月に当連載でウィズキッドの“No Stress”を紹介したときに詳しく語りましたので、そちらをぜひご覧ください」

田中「セヴン・ストリーターは、アリアナ・グランデやアリシア・キーズ、ブランディーなど、R&Bシンガーたちの楽曲のソングライターとして知られていますよね。もともとはTG4やリッチガール(RichGirl)というガール・グループのメンバーとして活動していて、〈セヴン(Se7en)〉の名前で知られていました。2012年以降はソロでも活躍しています」

天野「重要なのは、ここでフィーチャーされているのがアフロビーツのスターであるダヴィドだということです。以前、ポップカーンとの“Risky”という曲を取り上げたときに紹介したとおり、ダヴィドは英米ナイジェリアを転々としてきたナイジェリア系のシンガー。彼が昨年発表したセカンド・アルバム『A Good Time』は傑作でしたね。今年の9月には“FEM”というシングルを発表していて、そちらもかっこいいです」

田中「そんな2人による“Kissez”をプロデュースしたのは、メルヴィン・ムーアことワンインザ4レスト(OneInThe4Rest)と、ボンゴことボンゴ・バイザウェイ(Bongo ByTheWay)。ボンゴはゲームの『The Documentary 2』(2015年)など、ヒップホップ/R&Bのシーンで活躍するプロデューサーですね。サウンドは、これぞアフロビーツといった感じの軽やかなギターとビートが特徴。艶やかに歌うセヴンと、力強く歌い上げるダヴィドのヴォーカルの絡まり合いも聴きどころでしょう」

天野「アフロビーツのいいところって、〈低音競争〉みたいになっているトラップ以降のプロダクションとは一線を画する音作りですよね。もちろん、この“Kissez”も中音域が強調されていて、スムーズかつダンサブル。キックが強調されてビートの雰囲気が変わるのは、アウトロにだけです。アフロビーツの旨味を感じられる、素晴らしい曲だと思いました。今週リリースされたマセーゴの新曲“Silver Tongue Devil”も思いっきりアフロビーツでしたし、セヴンがアフロビーツに挑んだこともこのジャンル/スタイルの勢いを証明することになっていると思います!」

2. Junglepussy “Main Attraction

天野「ジャングルプッシーの新曲“Main Attraction”が2位。彼女は、ジャマイカ人の父親とトリニダード・トバゴ出身の母を持つラッパーです。NYで生まれ育ち、2010年代前半にデビュー。エリカ・バドゥが“Cream Team”(2012年)を称賛したり、リル・キムがオープニング・アクトに抜擢したりと、活動の初期から高い評価を受けてきました」

田中「2019年には、ロシアのフェミニスト・パンク・バンド、プッシー・ライオットとのコラボレーション・ソング“Hangerz”を発表ていましたね。USラップ・シーンの本流で脚光を浴びつつ、国際的なアンダーグラウンドのシーンとも繋がるフットワークの軽さが魅力的。おもしろい存在だと思います」

天野「“Main Attraction”は、10月23日(金)にリリースされる彼女の新作『JP4』からのリード・シングル。トラップ・ビートと、やたらと強調されたベース・サウンド、スペーシ―なシンセサイザーの音色が印象的です。艶やかだったり、キュートだったりと、ヴァースによって声色を変えるラップも見事。トラッシーでドラッギーなミュージック・ビデオは、観ているとクラクラしちゃいますね」

田中「『JP4』には、プロデューサーとしてTVオン・ザ・レディオのデイヴ・シーテックや、ラン・ザ・ジュエルズやアジーリア・バンクスの作品などで知られるニック・フックらが参加しています。『JP4』は、シークレットリー・カナディアン、ジャグジャグウォー、デッド・オーシャンズからなる〈Secretly Group〉の新しいライン、フレンズ・オブ(Friends Of)からのリリース。彼女は新作について〈自分が本当にやりたかった音楽にたどり着いた気がする〉と話しています。かなりユニークなサウンドになっているのでは。楽しみですね!」

3. Megan Thee Stallion feat. Young Thug “Don’t Stop”

天野「3位は、メーガン・ザ・スタリオンがヤング・サグをフィーチャーした“Don’t Stop”。メグのことはもう、説明不要でしょう。〈PSN〉の常連ですね。今年は何度も彼女について語っています」

田中「ヤング・サグも、いまや大スターなので紹介する必要はないかもしれません。現在のアトランタを代表するラッパーで、トラップがメインストリーム化していく2010年代前半から中盤にかけて、一気にスターダムを駆け上がった才能です」

天野「サガーは本当に変わり者ですよね。去年ついにリリースしたデビュー・アルバム『So Much Fun』はめちゃくちゃよかったな~」

田中「今回の“Don’t Stop”は、まずサウンドがかっこいいですよね。イントロから鳴り響く、歪んだ奇妙なシンセ・リフが楽曲をリードしています。プロデューサーのブッダー・ブレス(Buddah Bless)は、ジャックボーイズやミーゴス、クリス・ブラウンなどとの仕事で知られる若手です」

天野「ちなみに、〈Buddah〉は〈仏陀(Buddha)〉ではなくマリファナの隠語です。〈私のあれは超タイト、私たちがファックするとき、プッシーがしゃべる/“What's up?”なんて私は言わない、ただ彼に私が欲しいものを言うだけ〉〈態度はバッド、プッシーはソー・グッド〉などなど、カーディ・Bとの大ヒット・ソング“WAP”に続いて、今回もかなりダーティーな内容ですね……」

田中「まさに〈女性上位〉なリリック! 逆に、ヤンサグはいつもどおりな感じで、ちょっと圧倒されちゃっているのかなって思いました(笑)」

天野「〈俺はビッチどもを『長』として支配しているんだ〉なんて強がっていますけどね。そういえば、恋人であるメグを銃撃したトーリー・レインズ(Tory Lanez)は、特に謝罪することもなく新作を発表して非難を受けました。さらに、銃撃をプロモーションに利用したんじゃないかともいわれていますね。昨日、トーリーはまた起訴されています。メグは事件後、無事に回復してよかったですけど、はたしてどうなることやら……」

田中「そんななか、メグは有色人種の女性のための給付型奨学金を始めるんだとか。すごいですね!」

4. Overmono “Everything U Need”

田中「4位はオーヴァーモノの“Everything U Need”! エド&トムのラッセル兄弟によるデュオの新曲です。2016年以降、UKの名門XLや、XL傘下のヤング・タークスが運営するエレクトロニック・ミュージック・ライン、ホワイティーズ(Whities。現AD 93)から作品をリリースしてきた彼らは、UKベース/レフトフィールド・テクノ・シーンにおいてもっとも注目すべき存在です!!」

天野「テンション高いな……。まあ、亮太さんは2年くらい前から〈いまホワイティーズ周辺がアツい!〉なんて鼻息荒く言ってましたもんね」

田中「そうなんですよー。アヴァロン・エマーソンやジャイアント・スワンらの作品がカタログに並ぶAD 93は、基本的にフロア・オリエンテッドなクラブ・ミュージックを12インチ・シングルとデータで発表しているんですが、いずれのリリースも一筋縄ではいかない実験性やエクストリームな感覚を備えているんです。ここ数年はLPのリリースも増えていて、アルバムだとより前衛的なサウンドのものが多く、どれを聴いてもほんとに刺激的でおもしろいですよ」

天野「っていうか、今回はXLからのリリースなので、AD 93はあんまり関係ないじゃないですか……。で、オーヴァーモノは去年XLからジョイ・オービンソンとのコラボ・シングル『Bromley / Still Moving』をリリースしていましたね。ロザリアトム・ヨークフォー・テットといった、名だたるアーティストの楽曲のリミックスでも存在感を示していますし、ブレイク間近と言っていいのではないでしょうか」

田中「ですね! この“Everything U Need”はヒプノティックなシンセ・フレーズと推進力のあるキックが最高にかっこいい。硬めの音色のハイハットがバウンシーに鳴っている感じは、これぞUKテクノと言ったところ。時折挟まれる、チョップされたヴォイス・サンプルも耳に残ります。フロアで聴いたら気持ちいいだろうなー。同名のEP『Everything U Need』は11月6日(金)にリリース! オーヴァーモノ、この名前は覚えておいて!!」

5. CocoRosie feat. Big Freedia, ANOHNI, Brooke Candy & Cakes Da Killa “End Of The Freak Show”

田中「今週の最後の曲は、ココロージーがアノーニら4人のゲストをフィーチャーした“End Of The Freak Show”。反ドナルド・トランプのメッセージともに、米大統領選挙への投票を促している扇動的な楽曲です。〈見世物の終焉〉というタイトルから強烈!」

天野「〈freak show〉というのは、障がいを持った方などを見世物にしていた〈見世物小屋〉の意味なので、強烈な言葉ですね。ビアンカ・レイラニ・キャサディ(Bianca Leilani Casady)とシエラ・ローズ・キャサディ(Sierra Rose Casady)の姉妹によるデュオのココロージーは、2016年にもトランプ大統領の誕生に際してアノーニと“Smoke ’Em Out”を発表しています。こちらも、歌詞は〈家を焼いて/奴らをいぶり出せ〉という怒りに満ちたもの。さらに、今年の3月にリリースしたアルバム『Put The Shine On』には、“Smoke ’Em Out”をアレンジした“Burning Down The House”を収録。そこにラッパーたちを迎えて、“End Of The Freak Show”にヴァージョン・アップ……。つまり、彼女たちにとっては反トランプ・ソングの第3弾なわけです」

田中「アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ時代から日本でも人気の高いアノーニは説明不要でしょうけど、他のゲストを紹介しておきます。まず、ビッグ・フリーダはシシー・バウンスの女王と言われるラッパー。ケシャやチャーリーXCXとの共演でも知られていますね。ファッション・アイコン的な存在感を放つブルック・キャンディも、チャーリーやグライムスとのコラボが有名。最後のケイクス・ダ・キラは、2010年代前半、ミッキー・ビアンコらLGBTQ+のラッパーが多く登場した際に注目された才能です」

天野「皮肉っぽく笑いながら〈私は群衆の点火者〉と野太い声で放つビッグ・フリーダがかっこいいですね! これまでのヴァージョンと比較して、サブベースが前に出ていて、よりバウンシーなサウンドになっています」

田中「今後、いろいろなラッパーやシンガーがめいめいのライムや歌を乗せたリミックスがたくさん生まれていったら、おもしろそうですよね。米大統領選挙は11月3日(火)に実施。トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した騒動もあり、混迷を極めている印象ですが、はたしてどんな結果が待っているのでしょうか?」