2024年も残りあとわずか。今年の音楽シーンの作品や出来事を振り返っているリスナーも多いのではないでしょうか? 今回はMikikiの年末企画として、2024年の洋楽のヒット曲のなかでも特に大きな話題を呼んだミーガン・ザ・スタリオン“Mamushi”の解説をお届けします。 *Mikiki編集部
TikTokのダンス動画からバイラルヒットした“Mamushi”
“Mamushi”は、ホット・ガール・メグことミーガン・ザ・スタリオンの3rdアルバム『MEGAN』の収録曲として2024年6月28日にリリースされた(その後、7月30日にシングルカットされている)。
発表後、間もなく日本のダンサー・MONAによるダンス動画からTikTokで火がつきバイラルヒット。2024年12月現在、TikTokでは“Mamushi”を使った動画が230万本も作られており、チャートではBillboard Hot 100で最高36位、Hot R&B/Hip-Hop Songsで最高7位を記録した。現代における典型的な流れでヒットした曲だと言えよう。ちなみにメグ自身も「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎのコスプレをして、MONAの振り付けを真似た動画を投稿している。
@mona712_official 流れる星達どこに向かう💫🪐🪄💖 @Megan Thee Stallion #yukichiba ♬ Mamushi (feat. Yuki Chiba) - Megan Thee Stallion
成功も苦難も経験したミーガンの歩み
ここで簡単にメグのキャリアを振り返っておこう。彼女は1995年生まれ、米テキサス州ヒューストン出身のラッパーで、大学に進学して健康管理学を学んでいたが、2016年から音楽活動を始め、SNSにラップを投稿していた。そして2018年、元プロ野球選手カール・クロフォードによるレーベル、1501サーティファイド・エンターテインメントと契約。若手ラッパーとして注目されていたなか、2019年の“Hot Girl Summer”がヒットした。
決定的な転機になったのは2020年、同郷の姉御ビヨンセと歌った“Savage Remix”、そしてカーディ・Bとの共演曲“WAP”のヒットで、Billboard Hot 100にていずれも1位を獲得、“Savage Remix”はグラミー賞を2つも受賞している。同年には、デビューアルバム『Good News』もリリースした。
そのように2020年のシーンを席巻したメグだったが、同時に不幸にも見舞われており、そのことも彼女のキャリアにおいて大きな出来事になった。当時の恋人とされるラッパーのトリー・レーンズに銃撃され足を負傷した、という大事件だ。容疑を否認していたトリーによる「自作自演だ」という虚偽の主張などもあり、被害者であるメグが批判にさらされるなど、この件は彼女に心身両面の多大な苦痛を与えた。さらに契約を巡ってレーベルの1501サーティファイドを訴えるなど、華やかな活躍とは裏腹にトラブルが相次いだ年でもあったのがメグの2020年だ。
そして銃撃事件での経験などを反映した2ndアルバム『Traumazine』(2022年)を経て、メグはレーベルから独立を果たし、自身のホット・ガール・プロダクションズから再デビューを果たしたのが2023年11月発表のシングル“Cobra”だった。苦難を吐露した告白的なこの曲に続いて、今年1月の“HISS”では先輩ニッキー・ミナージュを盛大にディス。両者の間で大規模なビーフが演じられたのは、辰巳JUNKによるコラムにある通りだ(その後、2024年最大の事件になったケンドリック・ラマーとドレイクのビーフが巻き起こったことで、すっかり忘れられてしまったように感じるものの)。