©Ellen Von Unwerth

私生活の変化を反映し、自身のルーツにインスパイアされた7年ぶりの新作が完成。愛を込めた花束のような『Bouquet』にはどんな想いが束ねられている?

やったことを繰り返したくない

 グウェン・ステファニーが7年ぶりに通算5枚目のソロ・アルバム『Bouquet』を完成させた。前作『You Make It Feel Like Christmas』(2017年)がいわゆるクリスマス作品であったのを考えると、純粋なオリジナル作品としては2016年の『This Is What The Truth Feels Like』以来、実に約8年半ぶりのアルバムとなる。もちろん、その間もコンスタントに新曲やコラボ・ナンバーを発表していたけれど、包括的なアルバム制作に踏み切れるまでのアイデアやモチベーションが得られなかったのだという。

GWEN STEFANI 『Bouquet』 Interscope/ユニバーサル(2024)

 グウェンといえば、超メガ・ヒットしたノー・ダウト時代の『Tragic Kingdom』(95年)や『Return Of Saturn』(2000年)、『Rock Steady』(2001年)から、さらに『Love. Angel. Music. Baby.』(2004年)でソロ・デビューを果たして以降の作品も常に話題を振り撒き、数々のシングルをチャート上位に送り込んできた。スカやレゲエをロックと融合させるのはお手のもの。R&Bやヒップホップ、エレクトロからミュージカルまで、さまざまなスタイルを取り入れ、常に新しいポップ・サウンドを創造してきた。ちょっぴりエッジー、だがエッジーすぎなくて、程良いぶっ飛びぶりが痛快なのだ。さらに、そのファッショニスタな存在感でもってロック〜ポップスターであるのはもちろん、Y2Kなヘソ出しルックから、原宿ガールまで次々と新しいイメージを打ち出してきた。

 一世を風靡したノー・ダウトの“Just A Girl”や“Don’t Speak”、ソロでの“Hollaback Girl”など、大ファンでなくとも誰もが知っている曲が多数存在する。しかも、どれもが個性的。それらヒット曲のインパクトがあまりにも強かったせいなのか、彼女いわく「一緒に仕事をすると、プロデューサーたちが以前にやった私のサウンドをなぞってしまう」というのが悩みの種でもあったという。レゲエ調の“Let Me Reintroduce Myself”(2020年)や“Slow Clap”(2021年)などのシングルを発表しながらもなかなかニュー・アルバムの制作に臨めなかった理由のひとつがそれで、〈自分のやったことを繰り返したくない〉という強いこだわりを彼女は持っているのだ。

 だが、その突破口となったのが、夫ブレイク・シェルトンとのデュエット・ナンバー“Purple Irises”だ。この曲をきっかけに方向が定まり、新たなアイデアが次々と湧き上がり、楽曲が生まれていくことに。もともとオーディション番組「The Voice」での共演をきっかけに交際を始めて3年前にゴールインしたブレイクとは、以前からもコラボを繰り返しているが、この曲は彼女が一人で歌おうと作っていたところに、途中からブレイクも参入したもの。もちろん彼はカントリー界の大スターなのだが、この曲はカントリー・ソングというよりも、豪快なギターが牽引するポップ・ロックという印象だ。80年代のMTVヒット・チューンを彷彿とさせる煌びやかさや大らかさも持ち合わせている。アルバムのジャケ写でカウボーイ・ハットを被ったり、色調もカントリー調だったりするため、てっきりカントリー・アルバムと早合点しそうだが、決してそういうわけではない。というのは本人も強調している点だ。