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小西真奈美と亀田誠治の“ギブス”

――リード・トラックの“君とはもう逢えなくても”は、どのような曲でしょうか。

「亀田さんのキラキラしている感じと前へ進む躍進感、そこにちょっとした切なさを取りこんだ作品にしたくて。そういった女性像を延々と私が語り、できた曲です(笑)。亀田さんは、本当に人間性も曲も素晴らしい。最初にご一緒したとき、まだインディーズで駆け出しの私と同じ目線と熱量で曲と向き合ってくださったのは、本当に感動しました」

『Cure』収録曲“君とはもう逢えなくても”

――椎名林檎さんの“ギブス”のカヴァーも最高でしたね。

「私が初めて亀田誠治さんというお名前に出会ったのが、『勝訴ストリップ』(2000年)に収録されている“ギブス”のクレジットだったんです。〈あのアルバムすごい素敵です!〉と本人にお伝えした経緯があったので、亀田さんにプロデュースしていただくカヴァーだったら絶対に“ギブス”だと思っていて。お願いしたら、OKをいただけました。

決定したあとに〈これまでも“ギブス”のカヴァーをプロデュースしてほしいってオファーがあったけど、ずっと断ってきた。でも、真奈美ちゃんならいいかなと思って〉って言ってくださったときは、嬉しいと同時に気が引き締まりましたね」

――個人的に小西さんらしい歌い方が見えたのが“ギブス”のような気がしていて。息継ぎや音の繋げ方が独特だなと。

「最初は椎名林檎さんの歌い方に寄せるべきか悩みました。でも亀田さんが〈今のその感じが真奈美ちゃんの特徴だから、むしろ活かしたほうがいい〉って言ってくださって。そこから吹っ切れて、自分らしく歌えるようになりました」

――ジャネット・ジャクソンの“Again”は小西さんが洋楽にハマるきっかけになった1曲ですよね。ほか2曲は、どのような経緯で決まったんですか。

星野源さんの“Ain’t Nobody Know”は、後藤さんが挙げてくださった候補の中から自分で選んだ1曲。いろいろ歌ってみた結果、この曲が1番フィットしたんです。

逆に“Lost Stars”はスタッフさんに、私の声を通して聴いてみたい曲を訊いて選びました。映画『はじまりのうた』でキーラ・ナイトレイさんが歌っているMVを見せていただいて〈これにしよう!〉と思って」

 

ロシア製マイク、ありがとう!

――作品を重ねるごとに、新たな歌い方を習得されていますよね。

「前作(2018年作『Here We Go』)はラップだったので、ビート重視というか。ピッチや音程が多少ズレていても、ノリを1番大事にしていました。

一方で今回は、曲ごとにこだわるポイントが違っていて。〈これは歌を大事にしたい〉とか〈この曲はビートが活きる感じで〉とか、エンジニアさんと相談しながら作っていきました。マイク選びも、こだわって歌録りしたんです」

――それが、SNSに載せていたロシア製マイクに繋がってくるわけですね!

「まさに、“Lost Stars”に合う粗削りな声を録れるマイクが、なかなか見つからなくて。エンジニアさんが〈もしかしたら……!〉と出してきてくださったのが、あのマイクでした。歌った瞬間に〈これだ!〉って。夜中にふと目覚めたティーネイジャーが、ポロンとギターを弾きながらぼそぼそ歌う、私のイメージにぴったりでした」

――さりげなくあげた1枚に見えて……。

「実は〈ロシア製マイク、ありがとう!〉の気持ちだったんです(笑)。

前回はエンジニアさんとプロデューサーさんにお任せして自分でマイクを選ぶことはなかったのですが、今回は1曲ごとに選ばせていただきました。マイクが大事とはよく聞きますけど、こんなに声の質感や曲の雰囲気が変わるとは。マイク選びで1時間かかることもあって、面白かったですね」