弱い部分を見せられる本当の強さ
――音楽活動を始める際に「何もわからないから挑戦することが怖くなかった」とお話されていたのが、すごく印象的だったんです。今回は〈何もわからない状態〉ではなかったと思うんですが、〈最初じゃないからこその怖さ〉はありませんでしたか。
「なかったんですよ、それが(笑)。初対面の方ばかりだったら怖かったのかもしれないですけど、亀田さんも後藤さんも一緒でしたし、スタッフさんたちがとにかく素晴らしい。〈絶対に大丈夫〉みたいな安心感がありました。それに〈また曲が作れる!〉という喜びが大きかったので。〈やりたい〉と思う状況をいただけたことが、すごくありがたいなって」
――小西さんは、いつも周りの方へ感謝を述べていますよね。
「本当に助けていただいくことばかりなので(笑)。私はひとりでなんでもできるタイプではないし、自分の考えが絶対に正しいと思うタイプでもない。だからこそ、いつも周りの方にアドバイスをいただいたり、相談に乗っていただいたりしているんです。すごく仲間に恵まれているんですよね」
――多くの人は年を重ねるに連れ、〈自分ひとりでなんでもできなくちゃいけない〉って抱えこんでしまうと思うんです。
「私も以前はそうでした。自分で頑張らなきゃいけない、ひとりでやれなきゃいけないって変なルールを自分に課していて。〈強い〉の意味をはき違えていたんですよね。ひとりで立っていること、自分でなんでもやれることが強いと思ってました。でも、それをずっと頑張っていたら息苦しくなっちゃって」
――その状態から、どうやって脱したんですか。
「素敵だなって思う年上の方々を真似していったんです。知らないことを恥ずかしがらず〈知らない〉って言ったり、わからないことがあったら相談してみたり。そうしていくうちに、新たな扉が開けていきました。
本当の〈強い〉って、弱い部分を見せられたり、ダメな部分を認めて助けてもらえたりすることなんですよね。結果的に感謝も生まれるし、誰かが困っていたら助けてあげられる。それでいいんだなって思えるようになってから、いろんなことがすごく楽しくなりました」
――小西さんって、とてもしなやかですよね。
「どうなんでしょう? でも最初の頃はガチガチのバッキバキで、ツンってしたらパリンみたいな感じだったんじゃないかな(笑)」
感じることを疎かにしない
――Instagramやブログを拝見し、ささやかな幸せを楽しむ丁寧な生き方をされている印象が強くて。柔らかくトゲのない、小西さんの歌詞に繋がっているような気がしたんですよね。小西さん流、日々を楽しむコツみたいなものってありますか。
「〈感じることを疎かにしないこと〉かな。TO DOリストをクリアしたりノルマをこなしたりするほうが、生きている感って得やすいとは思います。でも、朝起きて風を感じていただけの1時間だって、すごく豊かじゃないですか。水が美味しいとか、私のことを思って買ってくれた贈り物が嬉しいとか。ちょっとした気持ちの動きを見逃さないで過ごしていると、とんでもないできごとがなくても、世の中っていろんなことに満ち溢れているって思えるんですよね」
――些細な感情を見落とさないようにすると。
「もちろん、見過ごして生きていくこともできます。でも、そうすると自分が何を感じているのかわからなくなって、心がヘルシーでなくなってしまうし、体もヘルシーでなくなっていく。心も体もアンヘルシーって楽しくないじゃないですか。自分が満たされていると、人にも優しくすることができるので。
日々のなかで感じたいろんなことを、スルーしないように心がけています。今でも〈なんでこんなに一喜一憂しているんだろう〉って思うし、すごく疲れるなって感じることもありますけどね(笑)」
――感じたことをスルーしないためのポイントってありますか。
「ひとりの時間を大切にすること。わざわざそういう時間を作れという話ではなく、駅まで歩いている数分とかでもいいので、ちゃんと自分を見つめることが大事かなと思います。あの人にお礼を伝えようとか、体のケアをしてあげようとか。ひとりの時間って、実は贅沢で豊かで愛おしいですよ」
――感じたことを見逃さず抱きしめていけば、小西さんみたいになれると。
「そう思っていただけたらありがたいですけど、私もいまだにバタバタしていますよ。もうちょっと大人の女性になる予定だったんだけどな……。あと10年くらいかかるかもしれないです(笑)」
――日々の生活や感じてることが、『Cure』に繋がっている感覚はありますか。
「すごくあります。役者の仕事をやらせていただいたから出てきたものもあるし、〈ちゃんとしなきゃ〉とバキバキに武装していた自分がいたから出てきたものもあるし、年を重ねて柔軟になってきた今だからこそ出てきたものもある。曲を作っていくごとに、今までの自分を肯定しているというか。〈これでいいんだな〉って思える感覚は、すごくありますね」
――『Cure』を作ってみて、新しく見えた自分ってありましたか。
「一言でこれとは言えないですけど、ものすごくあったと思います。4人のプロデューサーさんとの制作や洋楽のカヴァーなど、今までの自分ではチャレンジしてなかったことを『Cure』ではいろいろやらせていただきましたから。後藤さんに至っては、ロックを共作して歌わせていただきましたし。ロックは大好きですけど、まさか自分が作って歌えるとは思っていませんでした」
――これから、どんなアーティストになっていきたいですか。
「音楽を聴いたら〈ライブを観てみたい〉、ライブを観たら〈次のアルバムが楽しみ〉と思ってもらえるアーティストになれたら嬉しいです。私自身、CDを買って聴きこんで、どんな演奏をするのか想像して、生のライブを感じるという、一連の音楽体験が好きなので。作品として評価されるものも大事ですけど、一緒になって楽しんでもらえるような作品やライブを作っていけたらと思います」
LIVE INFORMATION
小西真奈美 “Cure”
Online Live at Blue Note Tokyo
2020年11月25日(水)
開演:21:00
一般/ブルーノート東京Jam Session会員:2,500円/1,500円(いずれも税込)
アーカイヴ配信視聴期間:2020年11月29日(日)23:59まで
※公演時間は45分を予定しています
※アーカイヴ配信の内容はライブ配信と異なる場合がございます。あらかじめご了承ください
http://www.bluenote.co.jp/jp/lp/manami-konishi-2020/
■チケット
ぴあ(PIA LIVE STREAM):https://w.pia.jp/t/konishimanami-pls/
イープラス(Streaming+):https://eplus.jp/sf/detail/3337270002-P0030001
ZAIKO:https://bluenotetokyo.zaiko.io/e/manami-konishi
■メンバー
小西真奈美(ヴォーカル)/井上陽介(ギター)/楓幸枝(ドラムス)/George(マニピュレーション/シンセサイザー)/下村亮介(シンセサイザー)/中西道彦(ベース)