ボルダリングが大好きでいつも夢中でのぼっている小寺さん。そんな小寺さんに惹かれ見つめることで、次第に影響され変化する登場人物たち。その変化は微細だが、少しづつしかし確実に世界は変わっていく。そんな世界=映画を見つめる私たち自身もまた少しずつ変わっていくのだろう。スクール・カーストや家族関係といった青春映画の要素を捨象し、見つめることの可能性と影響関係の非対称性を炙り出す吉田玲子の脚本が素晴らしい。菊地信之の繊細な音響設計、工藤遥をはじめとする役者たちの存在感。それらを見事に調理した監督古厩智之は、自身の最高傑作をものにした。