〈まっすぐな歌声〉が武器の男性ヴォーカル・デュオ、all at once。音楽プロデューサー亀田誠治も「鳥肌が立った」とコメントするほど、デビュー前から彼らの実力はお墨付き。〈聴き惚れる〉という言葉がぴったりの5曲入りEPで、all at onceついにCDデビュー!

all at once 『JUST BELIEVE YOU』 Being(2021)

 

――デビューEPのリリース、おめでとうございます!

ITSUKI&NARITO「ありがとうございます!」

――all at onceのお2人が担当していたTOWER PLUS+の連載企画も好評でした。CDデビューが決まり連載は今号で最終回を迎えますが、まずは、連載を振り返っての感想をお聞かせください。

ITSUKI「僕はブラックミュージックやR&Bが好きなんですが、自分たちのルーツというか、好きな音楽を紹介する場所をいただけてすごく楽しかったです。楽しくて毎号原稿量がオーバーしてしまいすみません……(笑)」

NARITO「僕も楽しくて、普段プライベートで音楽を聴いているときも、〈次号はこの人の曲を紹介してみようかな〉って考えたりしていました」

ITSUKI「歌や声に注目して、それを文章で伝えることはなかなかない経験だったので、自分たちの楽曲に対しても勉強になった連載でしたね」

――連載ページにデザインっぽくあしらわれていた五線譜が、繋げていくとデビューEPのリード曲“JUST BELIEVE YOU”になるという細工も遊び心がありました。

ITSUKI「実は、五線譜のことは僕たちも途中まで知らなかったんです(笑)」

NARITO「スタジオで五線譜を元にITSUKIがピアノで弾いたら、〈“JUST BELIEVE YOU”だ!〉ってなって(笑)」

――そうだったんですね(笑)。そんな連載の仕掛けに使われていた“JUST BELIEVE YOU”を含む5曲入りデビューEPがついにリリースされます!

ITSUKI「率直に〈うれしい〉です。2020年4月27日にCDデビューする予定がコロナ禍で延期になり、頭が真っ白になって前が何も見えなくりました。でも、その状況下でもスタッフさんのおかげでお仕事をいただけて、自粛期間中も、さまざまなアーティストのライブ動画を見たりして音楽に向き合う時間もたくさんできました。僕たち自身が〈歌を歌うことに意義がある〉と実感できた日々を経て完成した『JUST BELIEVE YOU』は、僕ら2人の気持ちが入ったデビューEPになりました」

NARITO「本当に〈全身全霊〉という言葉がぴったりな作品になったんじゃないかなと思いますね。CDデビューが延期になり、all at onceとしてドン底を知った期間で、僕個人も壁にぶち当たったりもしました。でも、その間にたくさんのことを勉強させてもらえて、このような状況でもたくさんの人にall at onceの楽曲を知って聴いてもらえる機会をいただけて、恵まれた環境で僕たちが音楽活動をできていることも実感しました。デビューEP全5曲の中に色々な思いを込めさせていただいたので、たくさんの方に聴いていただけたらうれしいです!」

――NARITOさんがおっしゃっていた、〈all at onceの楽曲を知って聴いてもらえる機会をいただけた〉という曲の1つが、デビューEPのリード曲でもあり、読売テレビ・日本テレビ系全国ネット「名探偵コナン」のオープニング曲“JUST BELIEVE YOU”だと思いますが、これは、倉木麻衣さんの“Secret of my heart”をサンプリングした楽曲。そして作詞も倉木さん!

NARITO「デモの段階で歌詞を拝見して、クレジットを見たら作詞に倉木さんの名前があって……! ITSUKIと2人で目を見合わせて衝撃を受けました(笑)。緊張感が高まりましたし、まだまだ名前も知られていない僕たちですけど、この楽曲の魅力を最大限に引き出せるように、声質や歌い方を研究して色々なものを“JUST BELIEVE YOU”に込めました」

――コナンファンや倉木さんファンの皆さんからの評判も上々のようですね。

NARITO「それぞれのファンの方々に受け入れてもらえるのか、最初は2人とも不安でドキドキでした。でも、僕たちやスタッフさんのツイッター投稿にリプライを送ってくださったりして、聴いてくださった皆さんのSNS上のリアクションが心を温めてくれたというか、励みになりました」

ITSUKI「この曲は、〈大切な人とまた出会えると信じている〉という男女2人の心情を歌った楽曲で、曲の中でその心情がどんどん変化していくのですが、そこを声で表現することを意識して歌いました。2番サビのあとから倉木さんの声と僕たちの声が交じり合い、最後は倉木さんの素敵な透き通った歌声で締めていただいているところも魅力の1つです」

――倉木さんの歌声で終わって2曲目の“星合”が始まりますが、この一連の流れが絶妙でした。

ITSUKI「“JUST BELIEVE YOU”も“星合”もどちらも幻想的な雰囲気のある楽曲で、“星合”は織姫と彦星をイメージした部分もあって、その2人の関係性を意識して歌っています」

――歌詞に〈暮れ残る〉〈悠久の時〉〈揺蕩う〉など、詩的な歌詞が使われているところも幻想的な雰囲気が出ていますよね。お2人が〈歌っていて気持ちがいい〉部分はどこですか?

ITSUKI「僕は2番の一番最初ですね!」

NARITO「即答(笑)。確かにそこは僕も聴いていて気持ちがいいです(笑)」

ITSUKI「地声から裏声に変わったり入れ替わりがとても激しい歌い方をしているんですけど、あえてそのような歌い方をして楽曲のイメージに沿うようにしています。まだつたないヴォーカル技術ではありますが、気持ちを込めているので聴いてみてほしいです」

NARITO「僕は2番サビのあとの〈永遠という文字に 願いをただ1つ込める〉ですね。僕は基本的にハイトーンで高い声が特徴的なヴォーカリストでもあるんですけど、〈永遠という文字に〉というフレーズだけ、自分の声の深さを加えている部分があるんです。ハイトーンと言っても1つのハイトーンではなく、さまざまな声の種類があり、〈……という〉のところはすごく深い声を出しています。ハイトーンはどうしても細い音になってしまい、キンキン響くような音が多くなりがちなんですけど、その部分に深さというか男性らしさを加えることで力強さを表現しました」

――力強さもありながら、波の音で静かに曲が終わっていくのも素敵でした!

ITSUKI「やさしく終わっていくことで、何か希望というか、前を向ける形で終わっている感じになっていますよね」

 

――やさしく終わったと思ったら3曲目の“Take mo’Chance”で一気にファンクサウンドが始まって、楽曲の振り幅にびっくりしました(笑)。

ITSUKI「(笑)。“Take mo’Chance”はall at onceとして一番最初にレコーディングをして一番最初に世に出たオリジナル楽曲です」

NARITO「すごく思い入れのある曲で、レコーディングの時も〈この曲ライブで絶対盛り上がるよね!〉って言っていて、いつかライブで披露できる日を楽しみにしています」

ITSUKI「“Take mo’Chance”が持つ70年代90年代のディスコ・ファンクのサウンド感が好きで、僕の得意なジャンルですが、逆にNARITOは苦手な感じだったよね?」

NARITO「あまり触れてこなかったジャンルでもあったし、グルーヴというか楽曲のノリの取り方が難しかったですね。僕はJ-Popのバラードがすごく大好きで、ゆったりとした大きなノリで歌う曲が得意なんですけど、“Take mo’Chance”はテンポが早くて……。声質に関しても、それこそバラードの声質で歌ったら少し悲しい感じになってしまうので、“Take mo’Chance”に関しては、〈楽しさ・わくわく感・元気がもらえる〉ような歌声を模索しながらレコーディングに臨みました」

――ITSUKIさんからNARITOさんにアドバイスすることもありましたか?

ITSUKI「そうですね。たくさんアドバイス……言いましたね(笑)」

NARITO「ITSUKIが得意なグルーヴの楽曲でもあったので、僕にも教えてほしい!ってね(笑)」

ITSUKI「いやそれじゃない、その声は違うから!みたいな感じで(笑)。“Take mo’Chance”でのアドバイスもそうですが、デビューEPに収録されている5曲はコーラスも僕がやることが多かったので、コーラスを合わせる部分のタイミングとか1ミリもズレてほしくなくて、NARITOの歌声を自分の理想にどんどん近づけて……」

NARITO「ITSUKIはこだわりが強いんだよね(笑)」

ITSUKI「そうだね、細かい性格なのでこだわりがね(笑)」

――ITSUKIさんとNARITOさんは性格は正反対なんですか?

ITSUKI「正反対ですね(笑)。楽曲に取り組む段階の考え方も違います。NARITOは感情的に大まかに捉えていて、逆に僕は楽器の鳴っているサウンド感だったりとか、メロディーも、どうしてこのメロディーにしているのかなど細かいところからストーリーを作っていきます。僕は細かいところを突き詰める性格なので全体的な部分が見えていなかったりするんですが、そこをNARITOが補ってくれています」

NARITO「真逆な性格でありがたいですね(笑)」

――ちなみに、お2人は喧嘩とかはされるんですか?

ITSUKI「喧嘩は1回もしたことがないですね」

NARITO「喧嘩……しないですね~。プライヴェートでも、2人で筋トレしたり散歩に出かけたり服を買いに行ったり、一緒に過ごすことが多いくらいです(笑)」

――ほのぼのエピソードありがとうございます(笑)! 4曲目の“雨上がり架かる虹”も、ITSUKIさんとNARITOさんのハーモニーが素敵で、仲の良さが楽曲にも表れていているような気がします。キラキラ~という音に乗せてお2人の歌声から始まるところが心地いいです。

ITSUKI「“雨上がり架かる虹”は導入でフェイクが入るんですが、一番最初の入りの部分からAメロに入る前までは、丁寧にというか、楽曲の持つさわやかさを意識しました。また、全体的にR&Bテイストのリズム感にはなっているので、そのリズム感の雰囲気を壊さず、自分たちの色にどんどん染めていく作業やアジャストしていくのが難しかったですね」

――“雨上がり架かる虹”は、他の楽曲と比べて特に歌詞が聴き取りやすかったように思うのですが。

NARITO「この楽曲はリズムを立たせてなんぼの楽曲でもあるので、導入はもちろんAメロのノリをすごく大事にしています。日本語ってどうしてもモゴモゴ言ってしまうことが多くあるんですが、“雨上がり架かる虹”に関しては、言葉感だったりとか子音をすごく大切に発音してレコーディングに臨みました」

ITSUKI「最後の〈会いにいこう〉の前のアドリブ部分も、実はリズム感をすごく意識しているところで。フェイクなどを使い自由に歌う部分ではあるんですが、自由演技ではなく楽曲のタイミングに全部合わせています。大雑把に自分たちの声や感情を乗せるのではなく、リズムだったり楽器の切れ目だったりを意識している楽曲です。聴いていたら自由に歌っているように聴こえるんですが、楽しんで聴いてもらうためにしっかり練られた楽曲です(笑)」

――すごく緻密に作られた楽曲なんですね。まんまと戦略にはまってしまいました(笑)。そしてデビューEPのラストを飾る“12㎝”は、6分超えの壮大な王道ラブ・バラード! これはもう〈歌っていて気持ちいい!〉って感じですか?

NARITO「そうですね。でも実は、ヴォーカルとしての壁にぶち当たった楽曲というのが“12㎝”なんです。自分自身バラードを歌うのが得意なんですが、想像していた“12㎝”と、自分のありのままの声で出た“12㎝”との違いやギャップがすごく大きくて、そこでつまずいたり、歌えなくなってしまったり、声が出なくなってしまったり。今思い出しただけでも辛くなるんですけど……。

――〈思っていた通りに歌えない〉……そんな葛藤を抱えながらの制作だったのですね。

NARITO「僕が思っていた“12㎝”の声は、ハイトーンでもハリのある突き抜けた声。メロディーと歌声を大切にした楽曲なので、聴いてくださる方に歌詞がスムーズに入る歌い方を表現したかったのに、実際に歌うと聴き苦しいというか、〈あ、この人はハイトーンボイスを頑張って出しているな〉って感じさせてしまうような声になってしまって……。涙を流しながらITSUKIに相談したこともありましたし、ボイストレーニングにも付き合ってもらいました」

ITSUKI「NARITOの中で“12㎝”の完成形を作り上げてしまっていたので、その大枠をいったん壊そうってアドバイスをしました。自分が出したい声だったり、all at onceとしての表現だったり、僕たちの武器である〈まっすぐな声〉を作ることを意識しました。僕自身が“12㎝”で心がけたことは、聴き終わったあと〈12㎝って実はこんなに長い曲だったんだ!〉と思ってもらえるよう、楽曲自体も伸びやかでロングトーンの部分があったりするので、そこを意識して歌っていました」

――“12㎝”は、音楽プロデューサーの亀田誠治さんが編曲されていることでも話題ですよね。

NARITO「緊張し過ぎて、亀田さんに最初にお会いしたときの記憶がないです(笑)」

ITSUKI「弦楽器のタイミングに僕たちの声をどう乗せていこうかすごく考えていたんですが、亀田さんが〈気にしないで自分たちの思うように伸び伸び歌っていいよ〉と言ってくださって、そこで肩の荷がおりたというか、すごくほっとして歌うことができました」

NARITO「亀田さんは僕たちの歌声を〈王道感がある〉と言ってくださっていますが、まさにall at onceは、王道感というか、純粋でまっすぐな歌声を意識してそれを目指しています。そこを亀田さんに認めてもらえたというか、僕たち自身がall at onceとしての第一歩を踏み出せた感じがして、〈王道感がある〉という言葉はうれしかったですね。だからこそ“12㎝”は、all at onceの名刺代わりになる楽曲だと思います!」

――名刺代わりの“12㎝”が収録された『JUST BELIEVE YOU』を携えて、2021年はどんな1年にしていきたいですか?

ITSUKI「CDデビューをすることができてやっとスタート地点に立てたので、まずは僕たちのことを知ってもらう1年にしていきたいですね。ライブができる機会をいただけたら、パフォーマンスで、声で、all at onceを知っていただきたいです」

NARITO「とにかく〈僕たちの歌を聴いてほしい!〉です」

――いよいよall at onceとして本格的に活動が始まります。ITSUKIさんからNARITOさんへ、NARITOさんからITSUKIさんへメッセージをお願いします!

NARITO「普段から言いたいことは言い合っていますが……このデビューEPがスタートラインというのが2人の共通認識なので、ここから改めて頑張っていこう!ですかね(笑)」

ITSUKI「本格的にプロとして頑張っていこうとNARITOを誘ったのが僕なので、責任を感じるつもりはないんですけど、やっぱり責任感は感じています(笑)。厳しい道もあると思うけど、ヴォーカリストとして切磋琢磨しながら、お互いがライバルということも忘れずに……」

NARITO「2人で高め合っていけたらいいよね!」

ITSUKI「(笑)。そうだね!」

 

all at onceがTOWER PLUS+誌上で2020年7月号より連載していた「Extreme score」を復刻掲載! ITSUKIとNARITOのお2人が〈声〉に着目して、自身の歌の参考にしている楽曲や、自分たちの楽曲を紹介いたします。

●1 note(TOWER PLUS+2020年7月号掲載)

Bar.1 ボーイズIIメン(Boyz II Men) “Doin' Just Fine”

ITSUKI「特にShawnのファルセット気味の息を交えたハモリは、強弱を意識した声の出し方によって他のパートに掻き消されることなく残っていて、コーラスという粋を超えていると思います! 自分らしさを消さないで、それでも楽曲は寄り添うこのShawnの声の出し方は僕たちの楽曲のコーラスでもすごく参考にしています! それと、3分24秒から始まるWanyaのパートが熱情的で、尚且つ壮大なフェイク(アドリブ)がかっこよくて、3分48秒からサビにかけて、ロングトーンからの細かいフェイクもたまらなく好きです。音がF#から高いD#まで一気に飛ぶフェイクがあり、ファルセット気味になってしまい少し弱い音になってしまうところですが、Wanyaは太くて強い、ミックスボイスを出しています。この音程を地声とミックスボイスを使い、一気に上がった後に今度は階段のように細かく短く降りていくという、技術の繊細さに聴くたびに驚かされます」

 

Bar.2 藤井 風 “優しさ”

NARITO「この楽曲を聴く前、タイトルから真っ直ぐ連想したのが母親から受ける愛、優しさでした。優しさへのラブソングということで、サビ中の〈Ah〉と言うフレーズの微妙なメロディの変化や声色の変化で、優しさという感情への悔やみや溢れんばかりの愛を感じました。そして、イントロでソロだった比較的低い音が聴こえるピアノが大サビではいなくなり、代わりに高いストリングスの音が楽曲を彩る形になることから、優しさに染まっていく姿を表現しているのではないかと感じ取れました。ライブ配信では飾りのない小さな部屋で、あぐらをかきながら音源とはまた違ったピアノ一本での演奏に加え、Aダッシュでの跳ね、そして楽しくなってニヤつく藤井 風さん。冒頭で〈難しいからなあ〉と言っておきながら終盤の同じフレーズではアレンジも加えていて、思わず笑顔になってしまいました」

 

●2 note(TOWER PLUS+2020年8月号掲載)

Bar.3 マイケル・ジャクソン(Michael Jackson) “Love Never Felt So Good”

ITSUKI「この楽曲はMichaelが生前にレコーディングを行っていて、世に出していなかったものをまとめたアルバム『XSCAPE』の1曲目に入っています。70年代のサウンド感で、どこか懐かしい昔のMichaelの声が感じられます。この曲の最大の注目ポイントはストリングスと声のバランスです。中でも、僕が好きなポイントが1分45秒から始まる2Bからサビにかけてです! 徐々に盛り上がっていき、サビでのびやかな声とその真逆の細かいサウンドのストリングスが本当に好きです。このアレンジによりMichaelのグルーヴ感がより引き立って曲のノリが良くなっているのではないかと思いました」

 

Bar.4 MISIA “つつみ込むように…”

NARITO「この楽曲は僕が生まれた年である1998年にリリースされた、MISIAさんのデビュー曲です。当時の音源とライブでの歌唱を比較した時に、歌声の厚みと迫力の違いを感じました。楽曲自体の絶妙な跳ね感と、伸びのあるフレーズの難しい歌い分けを、踊りながら圧倒的な歌唱力で歌い上げるMISIAさんのステージを見て、衝撃を覚えました。イントロのホイッスルボイスはいつ聴いても圧巻で、ライブではこの後にシャウト等のフェイクがあるのですが、この間の4小節で僕は心を鷲掴みにされました。サビの最後の〈つつみこむように〉と同じフレーズが全部で4回使われるのですが、それぞれに違った表現の仕方が当てられていて、中でも僕は3回目の女性特有の艶っぽい声と、異常なまでのロングブレスが特に好きです」

 

●3 note(TOWER PLUS+2020年9月号掲載)

Bar.5-1 R・ケリー(R. Kelly) “Bump N' Grind”

ITSUKI「アカペラから始まる歌い出しを聴いた瞬間、R.Kellyの力強い歌声に引き込まれます。エッジボイスが入っていて、尚且つ太く、ソウルフルな歌い方がとてもクセになります。そこから細かいフェイクが入り、更に熱量を上げてからAメロに入るのですが、Aメロに入った瞬間から伸びやかで包み込むような声に変わり、その切り替え
に脱帽してしまいます。サビでは訴えかけるような声にまた変わるのですが、この様な声色に変えていきつつ、楽曲のグルーヴは絶対に崩さない歌い方は本当に勉強になります。自由に歌いつつ、自分の伝えたいメッセージにあう声色に切り替える技術は、僕もできるように参考にしています!」

 

Bar.5-2 コブクロ “風見鶏”

NARITO「2007年発売のシングル『蕾』に収録されました。まず、Aメロでピアノの旋律と同調しながら絶妙なハネ感を歌うところにかなりのテクニックが必要です。次にサビの入りで、わざと荒々しいような表現で歌い始めるのですが、〈真っ直ぐ時代と〉のフレーズで優しく包み込むような歌声に切り替える黒田さんの抑揚に心を掴まれます。そして、2Aで小渕さんのエッジボイスで歌詞の繊細さを表現し、後半からの複雑なコーラスワークや黒田さんの抑揚で最高潮に楽曲を盛り上げるのですが、その後の小渕さんの歌うブリッジは涙が出るほど感情を揺さぶられます。特に大サビの〈弱い自分に勝てるなら誰に負けたっていいさ〉のフレーズで心の叫びのように歌い上げる部分は注目です」

 

Bar.6 TVアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマ“星合”をPick Up!!

「この楽曲は、お互いを想い合いながらなかなか会うことができない、そんな2人の関係性を一生懸命に純粋な思いを込めて歌いました。1番のAメロの所はパキッとリズムを合わせる感じで、Bメロはルーズにとったりしてノリやグルーヴを細かく変えています。2番のAメロの地声からファルセットに切り替わる所では、場面が変わったのを伝わりやすいように歌っています。この3つを意識して歌うと、気持ちよく歌えると思います! そしてブリッジの〈永遠という文字に願いをただ一つ込める〉というフレーズでは特に会いたいという強い想いをぶつけているので、注目して聴いてみてください!」

 

●4 note(TOWER PLUS+2020年10月号掲載)

Bar.7-1 スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder) “Lately”

ITSUKI「Stevieの声の魅力が集約されている1曲だと思っています。Aメロでは優しい声で包み込むような表現をしているのですが、Bメロになった瞬間に一変して悔やんでいるような悲しい声に変わります。1つの楽曲の中で起こる心情の変化をわかりや
すく伝えている歌い方はとても勉強になります。さらに、この曲の注目ポイントはラストサビです。転調し音の高さが4段階上がっているにも関わらず、力感を感じさせることもなく優しさを含んだ声のままサビを歌い切り、ラストの弛緩された力みのないロングトーンは必見です」

 

Bar.7-2 ヨルシカ “雨とカプチーノ”

NARITO「ボーカルのsuisさんは、歌い出しからテクニックを使い分けて、楽曲に色をつけていきます。まず1番のAメロの中で、ハネたメロディと鼻にかけた明るい声から、少しずつ暗く深い声を出しつつ、ハネ感をキープする事で、悲しい現実を受け入れられない主人公の不安定な気持ちを表していると僕は感じます。2サビでは、ゆったりとメロディーをなぞりながら息を混ぜて歌うことで、悲しい現実を受け入れて涙を流しているかのように思わせます。このように、声色だけでなくアクセントの位置、メロディのなぞり方に多彩な変化を与え、明確な意味を持たせるsuisさんの歌には、本当に衝撃を覚えます。楽曲の意図を聴いた人に的確に伝えるテクニックの使い分けは、表現の幅を広げる参考にしています!」

 

Bar.8 TVアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマ“星合”をPick Up!!

「どんな曲を歌う時もそうなんですが、頭の掴みは凄く大事でこだわっている部分です。この曲をレコーディングする時も世界観を表現できるように儚い気持ちを最大限込めました。Aメロの歌詞の内容は少し寂しげなのですが、どこか嬉しそうな気持ちを歌に込めているので注目して欲しいです。この楽曲は会いたくても中々会うことが出来ないそんな関係を歌っているのですが、特にそれが感じられるのは落ちサビの2分26秒のところです!リズムをあえてルーズにとって、語りかけるように歌うのを一番に意識し、会いたくても会えない切なさを表現しています。最後のサビでは、前を向いてまた会えることを願っている楽曲の主人公を意識しながら歌っています。たくさんの心情を声で表現しているので、違いを楽しみながら聴いてみてください!」

 

●5 note(TOWER PLUS+2020年11月号掲載)

Bar.9-1 アッシャー(Usher) “Can U Help Me”

ITSUKI「恋を熱情的に歌っている楽曲で、〈声〉だけで表現する、愛しさ、切なさ、寂しさ、強い愛がとても特徴的です。Aメロでは切ない寂しい声で歌い、Bメロでは心に訴えかける歌詞とメロディーで一気に聴いている人々の心を掴みます。この後のサビでは寂しさを纏わせたウィスパーボイスで歌うところから、後半の強く太く復縁を願って歌うところがあるのですが、僕はこの後半に来る強く太い声が好きです。この楽曲は鼻にかかった少し高い声なのに太いというUsherのギャップにすごく心奪われます。ブリッジからは、愛を願うように伸びやかに声高らかに歌っているのでそこにも是非注目して聴いてみてほしいです」

 

Bar.9-2 久保田利伸 “声にできない”

NARITO「バラード曲の多くは一つ一つの音符が長く、スローテンポのゆったりとした雰囲気で作られているイメージですが、久保田利伸さんは楽曲の世界観を強く感じさせるようなテクニックをいくつも使っています。例えば、Aメロではベンドアップという音階を上げていくテクニックをアクセントにし、Bメロからサビにかけては細かくフレーズを切り、そこにあえてマイクにブレスの音を入れ、休符まで音として活用する技術を使い、思わず体が動いてしまうような乗りやすいリズムを全体的に作り出しています。バラード曲といえど、自分の声を細かくして楽曲にグルーヴを与えつつ楽曲の雰囲気を大切にする歌い方は、僕たちの楽曲にも取り入れられるようすごく練習しています!」

 

Bar.10 TVアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマ“JUST BELIEVE YOU”をPick Up!!

「この楽曲は、大切な人と会えずにいるけど、きっとまた会えると信じている2人の心情を歌っています。Aメロは低い音ではあるのですが、言葉を埋もれさせないようにはっきりと発音するのを意識しました。Bメロに入ると楽曲の雰囲気がガラッと変わり、徐々に熱を帯びていく様に声で表現しました。サビの〈はらりとふわりと舞い散る花びら〉という歌詞では、花びらのように優しく包み込むように歌っているのですが、最後の〈心が震えてる〉という所では、皆様の心を震わせるように、熱情的に歌っています。歌詞ごとに変わっていく僕たちの〈声〉に注目して聴いてください!」

 

●6 note(TOWER PLUS+2020年12月号掲載)

Bar.11-1 ジェニファー・ハドソン(Jennifer Hudson) “And I Am Telling You I'm Not Going”

ITSUKI「恋に溺れ、依存してしまった女性が〈あなたなしじゃ生きていけない〉と強く歌うソウルの名曲です。Aメロは語りかけるように優しく歌い始めているのですが、次に来る1サビから別れを切り出された時のような今にも泣き出しそうな震えている声を使いつつ、〈嫌だ、離れたくない〉と強い気持ちを表現した芯がある声も駆使しています。2番からは1サビとは違った別人のような力強さでとにかく別れたくないとより強い感情を表現する為に、シャウト、フェイク、そしてガナりとソウルを歌う時に使われる技術をこれでもかと入れています。特に1分42秒からのサビに向かっていくメロディーの声色の変わりようは必聴です! Jenniferの力強さ、そしてソウルに1番必要な魂に響く歌声は聴く人の心を必ず震わせます。映画「Dream Girls」の劇中歌にもなっているので映像も見ながら聴くと更に聴き応えがあると思います!」

 

Bar.11-2 DREAMS COME TRUE “ねぇ”

NARITO「僕が人生で初めて行ったLIVEで、一番衝撃を受けた一曲です。〈分かるよ その気持ち〉というイントロのフレーズで一気に心を掴まれました。隣で誰かが寄り添ってくれているかの様に母音を大切にした優しい声とエッジボイス、息を混ぜたウィスパーボイスのバランスは絶妙です。1サビの終わりに声がブレたり、力ずくで歌ったりなどしがちな、特に難しい〈い〉の母音でのロングトーンを、息の流し方などをうまく使い、フェイクを重ねる技術は圧巻で、僕も発声をする時すごく参考にしています。曲全体を通して、一つ一つの音をしっかりと繋げて歌う事で高い音でもスムーズに声を出せるように歌われていて、聴いていると身体にゆっくり染み込んでいくように歌詞が入ってくる素敵な楽曲です」

 

Bar.12 TVアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマ“JUST BELIEVE YOU”をPick Up!!

「この楽曲は、TVアニメ「名探偵コナン」のEDテーマだった倉木麻衣さんの“Seacret of my heart”をサンプリングして作られた楽曲になっています。ブリッジに僕達の歌声と倉木さんの歌声が重なる部分があるのですが、ここは特に力を入れてレコーディングに臨みました。倉木さんの優しさそして力強さがあるメロディーに僕達はフェイクを重ねています。幻想的な世界観を崩さず、尚且つ新しいスパイスを入れることを意識して歌いました。最初のフェイクは優しく入り、後半に行くにつれ力強さを増していく音のグラデーションを感じながら聴いてみて下さい!!」

 

●LAST note(TOWER PLUS+2021年1月号掲載)

Bar.13-1 C&K “Y”

ITSUKI「この楽曲は僕達all at onceが2人とも大好きな曲です。Aメロの入りではCLIEVYさんが儚くとてもか細い声から入り、KEENさんに変わったタイミングで優しく包み込む声で歌っています。サビではその優しさを引き継ぎながらCLIEVYさんの透き通るようなハイトーンで明るくも切ない情景を表しています。2番の最初では一転して孤独を感じさせるような寂しい声で歌っています。サビ前の歌詞〈僕だけ知らない君がそこにいた〉の心に訴えかける声は必聴です。ブリッジ部分ではKEENさんのソロでやるせない気持ちを強く歌にこめています。最後は時が過ぎてしまった心情を細い弱い声で表現しており、ここから落ちサビ、大サビと続いていくのですが、この時は是非皆さんの大切な人を思い浮かべながら聴いてみてください。心が震えて涙が溢れてくると思います。僕達のEP『JUST BELIEVE YOU』と一緒に聴いて欲しい一曲です!」

 

Bar.13-2 森山直太朗 “愛し君へ”

NARITO「歌い出しの1フレーズに息を多く混ぜた深く厚みのある歌声、子音を強く叩いたようなアクセント、繊細で寸分の歪みもないビブラートなど、森山直太朗さんの歌い方の魅力がぎゅっと詰まっていて引き込まれます。サビの高い音では、A~Bメロの力強い声とは裏腹に〈フッ〉と力の抜けたナチュラルな声や、同じメロディの二回し目で出てくるフェイクなど、細かなテクニックが登場しその使い方がなんとも絶妙です。〈抱きしめて〉という歌詞を繰り返すフレーズの頭では強いアタックと低音からのしゃくりを加えつつ、リリースでは柔らかく音を響かせ、力強くも儚い心を表現するなど、一文字一文字を大切にした歌は僕も思わず涙した魅力的な楽曲です」