all at onceがTOWER PLUS+誌上で2020年7月号より連載していた「Extreme score」を復刻掲載! ITSUKIとNARITOのお2人が〈声〉に着目して、自身の歌の参考にしている楽曲や、自分たちの楽曲を紹介いたします。
●1 note(TOWER PLUS+2020年7月号掲載)
Bar.1 ボーイズIIメン(Boyz II Men) “Doin' Just Fine”
ITSUKI「特にShawnのファルセット気味の息を交えたハモリは、強弱を意識した声の出し方によって他のパートに掻き消されることなく残っていて、コーラスという粋を超えていると思います! 自分らしさを消さないで、それでも楽曲は寄り添うこのShawnの声の出し方は僕たちの楽曲のコーラスでもすごく参考にしています! それと、3分24秒から始まるWanyaのパートが熱情的で、尚且つ壮大なフェイク(アドリブ)がかっこよくて、3分48秒からサビにかけて、ロングトーンからの細かいフェイクもたまらなく好きです。音がF#から高いD#まで一気に飛ぶフェイクがあり、ファルセット気味になってしまい少し弱い音になってしまうところですが、Wanyaは太くて強い、ミックスボイスを出しています。この音程を地声とミックスボイスを使い、一気に上がった後に今度は階段のように細かく短く降りていくという、技術の繊細さに聴くたびに驚かされます」
Bar.2 藤井 風 “優しさ”
NARITO「この楽曲を聴く前、タイトルから真っ直ぐ連想したのが母親から受ける愛、優しさでした。優しさへのラブソングということで、サビ中の〈Ah〉と言うフレーズの微妙なメロディの変化や声色の変化で、優しさという感情への悔やみや溢れんばかりの愛を感じました。そして、イントロでソロだった比較的低い音が聴こえるピアノが大サビではいなくなり、代わりに高いストリングスの音が楽曲を彩る形になることから、優しさに染まっていく姿を表現しているのではないかと感じ取れました。ライブ配信では飾りのない小さな部屋で、あぐらをかきながら音源とはまた違ったピアノ一本での演奏に加え、Aダッシュでの跳ね、そして楽しくなってニヤつく藤井 風さん。冒頭で〈難しいからなあ〉と言っておきながら終盤の同じフレーズではアレンジも加えていて、思わず笑顔になってしまいました」
●2 note(TOWER PLUS+2020年8月号掲載)
Bar.3 マイケル・ジャクソン(Michael Jackson) “Love Never Felt So Good”
ITSUKI「この楽曲はMichaelが生前にレコーディングを行っていて、世に出していなかったものをまとめたアルバム『XSCAPE』の1曲目に入っています。70年代のサウンド感で、どこか懐かしい昔のMichaelの声が感じられます。この曲の最大の注目ポイントはストリングスと声のバランスです。中でも、僕が好きなポイントが1分45秒から始まる2Bからサビにかけてです! 徐々に盛り上がっていき、サビでのびやかな声とその真逆の細かいサウンドのストリングスが本当に好きです。このアレンジによりMichaelのグルーヴ感がより引き立って曲のノリが良くなっているのではないかと思いました」
Bar.4 MISIA “つつみ込むように…”
NARITO「この楽曲は僕が生まれた年である1998年にリリースされた、MISIAさんのデビュー曲です。当時の音源とライブでの歌唱を比較した時に、歌声の厚みと迫力の違いを感じました。楽曲自体の絶妙な跳ね感と、伸びのあるフレーズの難しい歌い分けを、踊りながら圧倒的な歌唱力で歌い上げるMISIAさんのステージを見て、衝撃を覚えました。イントロのホイッスルボイスはいつ聴いても圧巻で、ライブではこの後にシャウト等のフェイクがあるのですが、この間の4小節で僕は心を鷲掴みにされました。サビの最後の〈つつみこむように〉と同じフレーズが全部で4回使われるのですが、それぞれに違った表現の仕方が当てられていて、中でも僕は3回目の女性特有の艶っぽい声と、異常なまでのロングブレスが特に好きです」
●3 note(TOWER PLUS+2020年9月号掲載)
Bar.5-1 R・ケリー(R. Kelly) “Bump N' Grind”
ITSUKI「アカペラから始まる歌い出しを聴いた瞬間、R.Kellyの力強い歌声に引き込まれます。エッジボイスが入っていて、尚且つ太く、ソウルフルな歌い方がとてもクセになります。そこから細かいフェイクが入り、更に熱量を上げてからAメロに入るのですが、Aメロに入った瞬間から伸びやかで包み込むような声に変わり、その切り替え
に脱帽してしまいます。サビでは訴えかけるような声にまた変わるのですが、この様な声色に変えていきつつ、楽曲のグルーヴは絶対に崩さない歌い方は本当に勉強になります。自由に歌いつつ、自分の伝えたいメッセージにあう声色に切り替える技術は、僕もできるように参考にしています!」
Bar.5-2 コブクロ “風見鶏”
NARITO「2007年発売のシングル『蕾』に収録されました。まず、Aメロでピアノの旋律と同調しながら絶妙なハネ感を歌うところにかなりのテクニックが必要です。次にサビの入りで、わざと荒々しいような表現で歌い始めるのですが、〈真っ直ぐ時代と〉のフレーズで優しく包み込むような歌声に切り替える黒田さんの抑揚に心を掴まれます。そして、2Aで小渕さんのエッジボイスで歌詞の繊細さを表現し、後半からの複雑なコーラスワークや黒田さんの抑揚で最高潮に楽曲を盛り上げるのですが、その後の小渕さんの歌うブリッジは涙が出るほど感情を揺さぶられます。特に大サビの〈弱い自分に勝てるなら誰に負けたっていいさ〉のフレーズで心の叫びのように歌い上げる部分は注目です」
Bar.6 TVアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマ“星合”をPick Up!!
「この楽曲は、お互いを想い合いながらなかなか会うことができない、そんな2人の関係性を一生懸命に純粋な思いを込めて歌いました。1番のAメロの所はパキッとリズムを合わせる感じで、Bメロはルーズにとったりしてノリやグルーヴを細かく変えています。2番のAメロの地声からファルセットに切り替わる所では、場面が変わったのを伝わりやすいように歌っています。この3つを意識して歌うと、気持ちよく歌えると思います! そしてブリッジの〈永遠という文字に願いをただ一つ込める〉というフレーズでは特に会いたいという強い想いをぶつけているので、注目して聴いてみてください!」