西海岸のボード・カルチャーが生んだストリートのカリスマが帰ってきた。色鮮やかな陽光を放つラジカセから鳴り響くのは、言葉よりも雄弁な希望へのメッセージだ!
希望に溢れたタイトル
「希望に溢れたタイトルにしたかったんだ。どこか架空のラジオ局にチャンネルを合わせると、そこから俺のプレイリストが流れる、という物語も想像していた。それでラジカセをジャケのモチーフにして、『Sunshine Radio』というタイトルにしようと思いついたんだ。アルバムにはいろいろなフィーリングの曲が入ってるから、ラジオ局をテーマにするのもおもしろいな、と思ったんだ」。
TOMMY GUERRERO 『Sunshine Radio』 Too Good/RUSH/OCTAVE(2021)
サンフランシスコが生んだUS西海岸ストリート・シーンのカリスマ、トミー・ゲレロ。プロ・スケーターとしての活躍は言わずもがな、90年代から音楽家としても活動し、ソロ名義やブラックトップ・プロジェクトなど複数のユニット活動を推進。ジャック・ジョンソンやレイ・バービー、マニー・マークらの仲間とも絡みながら、持ち前のローファイなダウンテンポ、チルでアコースティックな意匠を軸に、長きに渡ってマイペースに作品を届けている。そんななかで、このたびニュー・アルバム『Sunshine Radio』が日本盤として届けられた。
「この作品はもう完成して何か月も経っているんだ。2019年の終わりから2020年までレコーディングしていたんだけど、大半の素材はコロナ禍によるロックダウンが始まる前にレコーディングしていた。本当は『Sunshine Radio』を7月にリリースして、日本でオリンピックのイベントに出演したり、ツアーをやるはずだった。10月からヨーロッパのツアーもする予定もあったんだけど、キャンセルになったよ」。
もともと90年代半ばにビーツ・オブ・サンフランシスコとして宅録を始めて以来、ヒップホップの手法でロック、ラップ、ファンク、ソウル、ジャズ、レゲエ、カントリー、映画音楽などの要素をミックスして独自の無国籍な音風景を描いてきたトミー。チャック・トリースと組んだ前作『Dub Session』(19年)ではかつてなくダブに特化したアプローチが新鮮だったが、今回の『Sunshine Radio』は新旧キャリアのフレイヴァーを取り込んでモダンな形に仕立てている。
「今回は『Road To Knowhere』(日本盤は『Endless Road』)の続編になるようなアルバムを作りたかった。フィーリングは似ているし、ファンク、ソウル、サーフ、マカロニ・ウェスタン、アフロビート、デザート・ロックの要素は今回も入ってる。そういう音楽的要素は自分の一部になっているから、それを自分というフィルターを通して、曲を作っているんだ。『Road To Knowhere』は多くの人に愛されて、ヴァイナルだけで7000枚も売れたんだ。ちゃんと流通もしてないし、プロモーションもしていないし、レヴューもどこにも載せてないんだけど、口コミで評判が広がっていったんだ。俺の音楽や俺のことを知らない人、スケーターでもない人からも問い合わせがくるから、そういう意味で作り甲斐があったよ」。