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インタビュー

『映画「騙し絵の牙」オリジナル・サウンドトラック』吉田大八監督 × LITEが対談で語る、異色の映画音楽制作

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吉田監督がLITEをプロデュースしているみたい

――そこから具体的に、どんな感じで作業を進めていったのですか?

武田「まず、期間的な話と曲数的な話を伺って……僕らが過去、作品を出しているペースって、2年に一回、10曲ぐらいのペースじゃないですか。なので、2か月でトータル30パターンぐらい、曲数で言うと20曲ぐらい作ることが、果たして可能なんだろうかっていう話をメンバーとして……」

井澤惇「話したね(笑)」

吉田「実を言うと、僕の今までの映画と比較してもかなり過酷なペースで……LITEのみなさん、よく怒らなかったなっていう(笑)。でも、実際始まってみたら、すごい勢いでデモが上がってきて。みんな、寝てるのかなって」

武田「寝てはいなかったかもしれないです(笑)」

吉田「ですよね。午後に送られてきたデモを聴いて、レスポンスを返したら、その日の夜に新しいものが送られてきて。で、ちゃんとこちらからの要望が反映されているから……毎回驚いてました」

井澤「(笑)。でも、今回は、やり方が結構上手くいった気がしますよね。監督と武田がコミュニケーションしているあいだ、僕らはずっと作業することができたので。監督からの要望も武田から聞いて、こっちでやれることはすぐにやって、また武田に返せるというか。家でやれることは、みんなバラバラに同時進行でやれるような体制を作ったんですよね」

武田「もともと僕らの曲作りって、わりとギターのフレーズから始まったりとか、ひとりが持ってきたものをもとに、みんなで考えるっていうパターンだったんですけど、さすがに今回はそのやり方では無理だねっていう話になって、最初からある程度分担して、それぞれが得意なところをやっていったんですよね」

吉田「あ、それはもう最初から、ある程度曲を分担してっていうことですか?」

武田「そうですね。もう最初から曲ごとに担当を決めて、おのおのが作るみたいな。で、それがうまくハマりそうだったらメンバーに確認しつつ、最後僕のフィルターを一回通して監督に送るみたいな。そんなやり取りではありました」

井澤「もともと監督から、ここからここまで音を当てて欲しいっていう映像を、バラバラに送っていただいて、それを各自見ながら、こういう曲はどうかなっていうフレーズをつけたものを、みんなで共有できるようにしたんです。で、それを武田に整理してもらった上で監督に送って、監督からレスポンスがあったらそれを受けて、そのデモを作った人がまた考えるみたいな感じでやっていって」

武田「最近は、そうやってフレーズごとのデータのやり取りみたいなことを結構していたので、そこに対する壁はあんまりなかったかもしれないですね。みんな、それをやれる環境がそれぞれの作業スペースに整っていたので」

吉田「なるほど。そう、今回は、お願いした時点である程度編集が進んでいたので、おおまかに尺を指定させてもらったんですよね。まあ、その後だんだん指示が細かくなっていくんですけど(笑)。でも、トータルでは大きく変わらなかったと思います」

――あらかじめ曲の長さが指定されているというのは、なかなか難しかったんじゃないですか?

武田「そうですね。それはホント初めてに近かったというか、CMとかの場合でも〈2、3分で〉とか、わりとフワッとお願いされることが多かったので。しかも今回は、すごい短い曲の中で展開とか決めのタイミングについてかなり細かい要望があって……曲として強引な感じにならないようにする調整は、おのおの結構考えたところだったと思います」

吉田「昨日、武田さんとのメールのやり取りを見返してみたんですけど、その文面を読んでたらちょっと気持ち悪くなっちゃって……途中で読むのやめましたよ」

――どういうことですか(笑)。

吉田「や、素人が、プロのミュージシャンにこんな我儘なリクエストよく出せるなって。そのときの自分の精神状態が怖いわっていう(笑)。でも、そこでLITEのみなさんが素晴らしいのは、そういうやり取りのときでも、すごく大らかなんですよね。〈ああ、やってみます〉とか〈わかりました〉とか、平然と受けとめてくれて。それは監督として、この上ない救いでした(笑)」

井澤「でも、逆に僕は、この映画に対してどうLITEの音楽を合わせていくのか、監督の中ではちゃんとした道がもう作られているんだろうなっていう感覚がありました。僕らがいつも作るのって、さっき武田が言った通り、自分たちのフレーズから積み上げていくことが多いんですけど、今回は監督の〈こうしたい〉っていう気持ちに合わせて作っていく感じがあったというか……監督がLITEをプロデュースしているみたいな感覚があったんですよね」

楠本「うん、それはあったね。曲に対する指示の出し方も、ちょっとプロデューサー的な感じがあって」

武田「だから、いつもの僕らだったら多分やらないなっていうことも監督からの要望でやってみたりしたんですけど、それはそれですごい新鮮だったし、監督の要望もすごい意味がわかるというか、僕らの音楽を知ってくれている上でそう言ってくれているんだなっていうのが、すごい伝わってきたんです。だったら、それはもう応えるしかないし、応えられるなっていう気持ちでやっていましたね」

山本晃紀「監督のレスポンスを受けて、デモの完成度が上がっていく感じがあったんですよね。今までだったらやらないことでも、監督の要望を受けてやってみたら、曲の完成度がどんどん上がっていったという」

武田「だから、いつものLITEだったら作らないような曲も、実は結構多いんですけど、それはそれですごく良いものになったと思うし、それを生み出せたのもこの映画のおかげであり、監督のプロデュースのおかげかなって思うんですよね」

吉田「いやあ、もう……このくだりは、カットしないでください(笑)」

井澤「(笑)。そう、監督は〈映像に合わせて、こういう感じにしてください〉とか〈ここの秒数で決めてください〉とか、映像ありきの言い方は絶対しないんですよね。〈こういう雰囲気なんです〉とか〈この部分から上がっていきたいんです〉みたいな感じというか、全部曲そのものに対する要望であって……それが僕の中ではすごい良かったというか、監督は本当に音楽が好きで、これは音楽そのものに対する要望なんだって、ちゃんと思えたんですよね」

楠本「確かに、それは思ったかもしれない。ミュージシャン的な指示って、〈ここ、もうちょっとギターを厚く〉とか〈もっとコード進行入れて〉とか、もうちょっと具体的なんですけど、監督の指示は〈ここは、こういう気持ちを表現したいんです〉とか、もっと抽象的だったというか。それが逆に、僕はすごい新鮮でしたね」

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