メセニーが絶賛する〈誰にも似ていない〉ギタリスト、満を持してのデビュー盤

 一口に〈超絶技巧ギタリスト〉と言っても、イメージは様々だ。ロック・ファンなら流れるような速弾きを思い浮かべるだろうし、ジャズ・ファンなら複雑なコードワークを縦横無尽に操る様子かもしれない。クラシック・ファンなら、〈小さなオーケストラ〉を思わせる煌びやかな響きだろうか。端的に言えば、それらをすべて兼ね備えたハイパー・ギタリストが、パスクァーレ・グラッソである。2015年、ウェス・モンゴメリー国際ギター・コンペティション優勝で注目を集め、パット・メセニーの絶賛により評価は不動のものに。優れた才能はいつの時代にも現れるものだが、サブスクリプション全盛時代に敢えてボーナストラック付きCDでメジャー・デビューするというのは、やはり只事ではない。

PASQUALE GRASSO 『Solo Masterpieces』 ソニー(2021)

 もっとも重要なのは、〈誰にも似ていない〉ということだ。メセニーが言うように、メセニー自身やジョン・スコフィールド、ビル・フリゼール以降のほとんどのジャズギタリストは、多少なりとも彼らの影響を感じさせるが、グラッソはまったく独自のスタイルを完成させた。その独自性は決して奇を衒ったものではなく、むしろ正反対。ジャズとギターの歴史を紐解いて、〈ジャズ・ギターのあり方〉を合理的かつ徹底的に追求した結果である。バド・パウエルやアート・テイタムのような、複数の旋律を自在に操るスタイルを、ギターでどうやって実現させるか。デヴィッド・ラッセルのコンサートを聴いて衝撃を受けた若き日のグラッソは、クラシック・ギターの技法が必須であると考えた。そう、ラッセルこそ、バッハやヘンデルのポリフォニーをギターで鮮やかに表現し、クラシック・ギター界に静かな革命を起こした当代随一のマエストロなのだ。高速フレーズを恐ろしくレガートにピックで弾きつつ指弾きを織り交ぜるスタイルは、まさしくジャズとクラシックのハイブリッド。ジャズ・ギターの新たな伝統が、ここに始まろうとしている。