スーパー・ファーリー・アニマルズのフロントマン、グリフ・リースが、7作目のソロ・アルバム『Seeking New Gods』を発表した。USツアーを経たバンドと共に録音、ビースティ・ボーイズやジャック・ジョンソンのプロデュースで知られるマリオ・Cがミックスした本作は、リースらしいサイケデリック・ポップをさらに推し進めた新境地だ。
『Seeking New Gods』のコンセプトの中心は、中国と北朝鮮の国境地帯にある神秘的な白頭山。リースは本作で、ユーモアと知性に裏打ちされた歌詞を通して人間と文明、記憶と時間について思索し、地層や地形学に思いを馳せ、人類史を超えた壮大なスケールの世界をひょうひょうと旅する。
今回Mikikiは、スーパー・ファーリー・アニマルズの時代からグリフ・リースが音楽でどんなことを表現し何を歌ってきたのかを振り返り、『Seeking New Gods』へと至る道のりについて考える。ライターの木津毅が、彼の30年近いキャリアに迫った。 *Mikiki編集部
社会や政治を歌ってきたスーパー・ファーリー・アニマルズとグリフ・リース
〈新たな神々を求めて〉。何やら黙示録のような壮大なタイトルに身構えるひともいるかもしれないが、これはグリフ・リースの新作である。ソロとしては7作目となる『Seeking New Gods』には、いつものように甘く切なく、ユーモラスで、そしてとびっきりポップなサイケデリック・ロックが詰まっている。
ウェールズが誇るサイケ・ポップの至宝、スーパー・ファーリー・アニマルズ(以下SFA)が現れてもう四半世紀が経つ。90年代中頃、ブリットポップに沸いたイングランドとも、それに対抗したスコットランドのギター・ロック勢ともまた異なる、さらにオルタナティヴな場所から現れたのが彼らだった。グリフ・リースはそのフロントパーソンであり、つねにバンドの思想を体現してきた人物である。
人懐っこいポップなサウンドやユーモラスなモチーフからはすぐに気づきにくいかもしれないが、リーフはSFAの初期から楽曲に社会問題や政治的なメッセージを織りこんできた。たとえばテクノ~エレクトロニカ、カントリー、カリプソまでを取りこんで賑やかなポップ作となったサード・アルバム『Guerrilla』(99年)はバンドの初期の代表作だが、そのファースト・シングル“Northern Lites”はエルニーニョ現象についての報道に触発されたもの。森林破壊について言及しており、現在世界中で取り沙汰されている気候変動にも繋がる環境破壊の問題を訴えている。あるいは、“The Door To This House Remains Open”は移民を受け入れることについてであり、人間が他者にオープンであることの重要性を歌ったものだとリーフは説明している。