田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週びっくりしたニュースは、新垣結衣さんと星野源さんの結婚……ではなくて、アリアナ・グランデの結婚。不動産エージェントのダルトン・ゴメスと小さな式を挙げたそうです」

天野龍太郎「アリ、マジでおめでとう! これまでの恋愛でいろいろあったけど、どうかお幸せに! そんな気持ちでいっぱいですね。あと、今週もフェスティヴァルの情報が複数発表されました。フー・ファイターズやポスト・マローンらがヘッドライナーを務める〈ロラパルーザ〉、ビリー・アイリッシュらが出演する〈オースティン・シティ・リミッツ〉など。ワクチンの接種が進んでいるアメリカでは、9月以降にフェスが普通に開催されそう。でも、それはアメリカの話。『The New Yorker』の表紙が象徴するように、アメリカは〈ポスト・コロナ〉の世界へ向かっています。ここ日本や、混乱の渦中にあるインド、ヨーロッパなどは、どうなっていくのでしょうか……」

田中「フェスといえば、配信のみですが、〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉が今週末に開催されます。日本時間では5月23日(日)の18時からで、デーモン・アルバーンやハイムら、11組のパフォーマンスが予定されています。日本からも視聴チケットを簡単に購入できるので、興味のある方はぜひ!」

天野「今年は、シークレット・ゲストが誰なのかが気になりますね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

BTS “Butter”
Song Of The Week

田中「〈SOTW〉はBTSの“Butter”! “Dynamite”、そして『BE』のリリースで昨年ポップ・シーンのアイコンにのぼりつめた7人組による、待望の新曲です!!」

天野クイーンの“Another One Bites The Dust”(80年)を引用したと思しきビートを使ったティーザー映像から想像はしていましたが、やっぱりアップリフティングなダンス・ナンバーでしたね。ヴァースは、ほとんど歌とドラム、ベース、パーカッションのみのリズミカルなアレンジ。ファットなビートとグルーヴィーなシンセ・ベースがかっこいい!」

田中「最初のヴァースは、爽やかに歌うジョングクからセクシーな声質のキム・テヒョンにぱっと切り替わるところが最高ですね。そして、コーラスでは煌びやかなシンセが加わって、一気に多幸感を喚起します。塩梅をまちがえたら、ちょっと古くさいEDMポップにも聴こえちゃいそうなところを、絶妙に品よくまとめているプロダクションが見事です」

天野「ラップも含め、タイトかつコンパクトにまとめられている曲なので、何回でも聴きたくなる中毒性がありますよね。〈バターのようになめらかに君の心に入っていくよ〉という歌詞の内容もセクシーでロマンティックだし、“Dynamite”で世界を虜にした彼らならではの自信を感じさせます。早くも今年を代表するサマー・チューンと言えるのでは?」

 

Sharon Van Etten & Angel Olsen “Like I Used To”

天野「いや~、これは最高の曲、最高の組み合わせですね! シャロン・ヴァン・エッテンとエンジェル・オルセンという、現代を代表する女性シンガー・ソングライター2人によるコラボレーション・ソング“Like I Used To”。〈裏SOTW〉です」

田中「2人とも、〈Pop Style Now〉の常連ですよね。2010年代のUSインディー・シーンを担った2人はライヴァルとも言えそうですが、この曲では2人の歌声の個性を見事に活かした力強いハーモニーを聴かせています」

天野「ジョン・コングルトンがプロデュースしたサウンドやアレンジは、オールディーズ風というか、フィル・スペクターっぽいウォール・オブ・サウンドにオルタナティヴな質感を持たせた感じ。とても感動的です」

田中「シャロンは〈常に同僚だと感じていた〉とオルセンについて語っていますね。そしてオルセンはこの共演作について、〈ピュアな原点に立ち返れる曲〉と表現しています。他者と〈ちがう〉ということを歌った歌詞は、分断の時代を歌っているようにも、2人の個性のちがいを歌っているようにも感じられますね」

 

aespa 에스파 “Next Level”

天野「今週は、珍しくK-Popが2曲登場。aespa(エスパ)の“Next Level”です。正直に言って、“Butter”とこの曲のどちらを〈SOTW〉にするか迷いましたね」

田中「こちらも最高です。aespaについて説明しておくと、彼女たちは昨年11月にデビューしたばかりの女性4人組のアイドル・グループ。メンバーは、KARINA(カリナ)、WINTER(ウィンター)、日本国籍のGISELLE(ジゼル)、中国国籍のNINGNING(ニンニン)です。この“Next Level”は、まずベースの存在感がすごい。〈ウーウウー〉というコーラスも耳に残りますし、強烈なキャッチーさを持っていますね」

天野「実はこの曲、映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)のサウンドトラックに収録されたアストン・ワイルド(A$ton Wyld)による同名曲のリメイクなんです。ベースラインなど、いくつかのフレーズは同じですが、aespaのヴァージョンはプロダクションが立体的で、よりパワフルなサウンドになっています。楽曲の中盤でビート・スイッチして、ニュー・ジャック・スウィングっぽいサウンドになるところはaespaのオリジナル。特に、この展開にはシビれました!」