CD最盛期に思春期を過ごした直撃世代のミュージシャン/ライターKotetsu Shoichiroによる連載〈CD再生委員会〉。今回は、CD再ブームが顕在化する現在、目を逸らせない環境問題について。以前から浮上していた産業や消費者の問題は、気候変動が喫緊の問題になったことで避けて通れないものになりました。そんな中、音楽業界や消費者の間では課題をポジティブに解決しようとする動きもあり……。 *Mikiki編集部
地球6周分のCDは土に還るか?
今年、最初の更新でございます。1999~2000年がCD最盛期とするなら、既にその黄金時代から四半世紀の時を経た2025年。ここから奇跡のV字回復はあるんでしょうか? まあ、焦らずやっていきましょう。そもそも一面的で進歩主義的なあり方の先に、我々の幸せな未来はあるのか……という考えにならざるを得ないのが、今回のテーマでございます。
さて、世界でこれまでに生産されたCDは、どのくらいの量になるのでしょうか? 確定的な最新のデータがなかなか見つかりませんが、BBCによれば2007年の時点で200億枚という数字があります。
200億! 1枚の厚さを1.2mmとして考えて、積み重ねると240,000kmで、地球6周分。いやー、デカ過ぎて全然ピンと来ない数字ですね。
しかし、ここまでの量となると、気になるのが環境への影響。CDは当然のことながら石油由来のプラスチックであり、ラッカーやアルミニウムなどが複雑に絡み合い、再分解されるのには膨大な年月がかかります。それを包み込むジュエルケースもまた同様。地球6周する前に早く還って欲しいもんですね、土に。
ちなみに、オスロ大学の研究によれば、音楽配信やストリーミングの普及によるレコード~CDの衰退から、近年の音楽産業におけるプラスチックの消費量は自ずと減少した訳ですが、それに代わるように電力消費量が増えているという指摘も。いやはや、ただ生きているだけで知らぬ内に何かしらの罪を犯しているという、素朴な宗教心も芽生えましょう。
アイドル文化とCDの大量生産・大量消費
さて現在のフィジカル〜CDセールスを大きく支えているのが、やはりアイドル文化。我が国でもかつて、CDにメンバーへの投票券ないし握手券が付属したCDを売り、熱狂的なファンがそれらを目的に同じCDを何枚も買う〈AKB商法〉と言われるビジネスが良かれ悪しかれ話題となりました。一時期、ハードオフなどのリサイクルショップで、同じグループの同じCDがずらりと並ぶ不思議な光景をよく目の当たりにしたものです。まあ、そんなのはまだマシな方で、大量のCDの処分に困ったファンが福岡県の山中にCDを不法投棄する、などという事件まで起こる始末(2017年)。
華やかなブームにはダークサイドが付き物……この連載で度々話題に上がるK-POPもまた例外ではなく、世界的なK-POPの盛り上がりとともに、懸念されるのがやはりそのプラスチック消費量。2022年にはK-POP産業が使用するプラスチックの量は約800トン、2017年時点から14倍に急増したというデータも(ちょうど第4世代の登場と共に跳ね上がったことになるのでしょうか)。そしてやはりレコード会社は同じアルバムに異なるメンバーの写真をおまけとして売る〈ガチャ〉商法(ラッキードロー、ラキドロと呼ばれます)を展開する訳で、実際に聴かれることのないCDが大量生産されている訳ですね。先のAKB事件に似たような現象は、韓国でも時折起こっているようです。