椎名林檎は心の支え

――その他に、a子さんの音楽観を変えるような衝撃的な出会いはありましたか?

「メラニー・マルティネスをアメリカの有名なオーディション番組『ザ・ヴォイス』を観たときです。そのオーディション番組がテレビでたまたま流れていて、いつも観ていまして。

アメリカのオーディション番組って、歌唱力が高かったり、シャウトがすごかったり、ビヨンセみたいに迫力あるパワフルな感じがウケてて、そういう子が勝ち上がっていたんです。でも、メラニーは他とは違う個性的な歌い方や歌声をしていて。勝ち上がる人とは違うのに、マルーン5のボーカルのアダム(・レヴィーン)から気に入られて審査を通ってて、それで勝ち進んでいっていました。

自分は歌唱力とかにまったく自信がなかったのですが、メラニー・マルティネスを見て、個性の魅力っていろんな種類あるんだなってそのときに思って、自分もアーティストを目指そうって思いました」

――その他に影響を受けたアーティストはいますか?

「日本人だと、椎名林檎さんがものすごく好きで……。実は、林檎さんの楽曲は上京するまでしっかり聴いたことなかったんですよ。ずっと存在は知っていて、〈あ、素晴らしい方がいらっしゃる〉みたいな。恐れ多いのですが、昔から目の端のほうで存在を捉えてはいたのですが、私の第六感が〈いまは聴くのをやめたほうがいいよ〉と言っていて。〈いま聴いたら自分のやりたかったこと全部完璧にしていらっしゃる椎名林檎さんと自分を比べて絶望して、音楽を辞めちゃうのでは〉と少し思っていまして。

でも、上京してから〈でもやっぱり聴きたい〉という思いに負けて、圧倒的なオーラを放っていらっしゃる林檎さんを聴いちゃいましたね。それで、椎名さんが出されているアルバムとかライブDVDとかを片っ端から聴いたり観たりしまして。もうまんまと沼に落ちまして、いまでは大好きなアーティストです」

――では、椎名林檎さんはいまのa子さんにとって、心の支えと言っていいくらいに大切なアーティストでしょうか?

「そうなんですよ。自分は音楽をやっていて、〈しんどいな〉と思うときも多いんですよ。それでも東京事変とか椎名林檎さんを聴けば、全部治ります(笑)。

余談ですが、うちのバンドのドラムが『Mステ』にサポートとして出演したんですよ。そのときに椎名林檎さんがいらっしゃって、会釈したらしんですよ。もううらやましくて、憎くて憎くて(笑)。すごくないですか? 会釈されたということは、認知されたということですよ? もうすごすぎて、彼から椎名さんの残り香をすごいもらいました」


――(笑)。a子さんが、一人の弾き語りで活動するのではなく、バンドを組むことに至った経緯は?

「一番の理由は、わたし、ライブがあんまり好きではなくて……。人様の前で歌うのは、いまだに苦手で緊張するんですね。

それで、シンガー・ソングライター、一人で舞台に立つのは嫌なので、〈そうだ! 人数を増やして、(観客の)視線を散らそう!〉と思ってバンドを組みました。一人でいるよりは心強いかな、とも思いまして。あと、普通にバンドを組みたかったという純粋な気持ちもあります」

――いまも作曲はギターで行うのでしょうか?

「いまは色々と覚えまして、いっちょまえにビートからです」