田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。いや~、月曜日に開催された〈ビルボード・ミュージック・アワード〉でのBTSのパフォーマンス、最高でしたね! 7人それぞれにしっかり見せ場が用意されていて、〈アベンジャーズ〉シリーズのアツいシーンを観ているかのような興奮がありました」
天野龍太郎「ちょうど1年前、白人警察官によって命を奪われたジョージ・フロイドへの追悼パフォーマンスも行われました。ゴスペル歌手のアン・ネスビーとミネアポリスのサウンズ・オブ・ブラックネスが、“Optimistic”を歌唱。胸を打つものがありました。あと、配信された〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉でのトム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、トム・スキナーによるスマイル(The Smile)のライブも話題になりましたね」
田中「そんななか昨日、ショックな訃報が……。デンマークのインディー・ポップ・バンド、リス(Liss)のフロントマンであるセーレン・ホルム(Søren Holm)が亡くなりました。享年25。死因は明らかにされていません」
天野「リスはデビュー・シングルから聴いていましたし、かなりショックです。彼の甘くて艶のある歌声、あの美しさは、これから先も忘れないでしょう。ご冥福をお祈りします。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から」
The Linda Lindas “Racist, Sexist Boys (Live At LA Public Library)”
Song Of The Week
天野「〈SOTW〉はこれしかないですよね、リンダ・リンダズの“Racist, Sexist Boys (Live At LA Public Library)”! 先週末に世界を沸かせた、話題のパフォーマンスです」
田中「痛快でしたね。米LAのパンク・バンド、リンダ・リンダズは、16歳のベラ・サラザール(Bela Salazar)、13歳のエロイーズ・ウォン(Eloise Wong)、14歳のルシア・デ・ラ・ガルザ(Lucia De La Garza)、10歳のミラ・デ・ラ・ガルザ(Mila De La Garza)の4人組。ミラはルシアの妹で、エロイーズはいとこなんだとか。Netflix作品『クラウディア・キシ倶楽部』(2020年)、『モキシー 〜私たちのムーブメント〜』(2021年)への楽曲提供や出演でも注目を集めていました」
天野「年齢は関係ないのかもしれませんが、10代の彼女たちがこの激しいパンク・ソングを叩きつけるように演奏して、しかも〈Stop Asian Hate〉に関連したアジア人差別にノーを突きつけたメッセージが、とにかく衝撃的でした。ヘイリー・ウィリアムズのような著名ミュージシャンたちも反応して、大きなバズになったのが、先週5月21日ですね」
田中「実は、そもそもダム・ダム・ガールズのクリスティン・コントロールが演奏に誘ったことが結成のきっかけになっているそうですし、アリス・バッグやビキニ・キルと共演していて、ライオット・ガールお墨付きのバンドなんですよね。しかも、デ・ラ・ガルザ家の父親がパラモアやベスト・コーストを手がけるエンジニアで、音楽業界との結びつきも強かったと」
天野「カルチャー・エリートですよね。そういったことから、うがった見方をしている〈大人〉たちもいるようですが……。僕は、とにかく彼女たちのパフォーマンスに圧倒されたし、感動しました。僕のように彼女たちの音楽に感動するオーディエンスがいれば、背景なんてどうでもいいんじゃないかなと。映画『リンダ リンダ リンダ』(2005年)経由でTHE BLUE HEARTSの曲名から取ったというバンド名もいい! あと、演奏が上手い!!」
田中「22日にエピタフとの契約を発表しましたし、今後の活躍が楽しみ。2021年は彼女たちの年になりそうですね」
DMX feat. Westside Gunn, Benny The Butcher & Conway The Machine “Hood Blues”
天野「4月に急逝したラッパー、DMXのポスチュマス・アルバム『Exodus』が本日5月28日にリリースされました。この“Hood Blues”は同作からのシングルで、亡きDMXの不在に思いを馳せつつ……という感じなのですが、でもこれは〈最高!〉と叫びたくなる一曲ですね!」
田中「そうですね。フルートの怪しげなフレーズがループする、アヴェニュー・ビーツ(Avenue Beatz)とDMXの盟友スウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)によるダウナーでダークなブーンバップ・ビートが激スモーキー。激しい雄たけびや吠え声を入れまくるDMXのアド・リブが、聴き手を煽り立てまくる感じもすごい」
天野「客演はグリゼルダ(Griselda)の面々で、ウェストサイド・ガン、ベニー・ザ・ブッチャー(Benny The Butcher)、コンウェイ・ザ・マシーン(Conway The Machine)の順でラップしています。トリは、もちろんDMX。貫禄ありすぎの、デンジャラスなしゃがれ声のラップに圧倒されます。追悼ムードを吹き飛ばす、とんでもない曲ですね」
田中「グリゼルダとDMXはフッド=NYを共有している、というところもいいですね。『Exodus』、今週必聴のアルバムだと思います」
박혜진 Park Hye Jin feat. Clams Casino & Take A Daytrip “Y DON’T U”
田中「韓国出身のプロデューサー、パク・ヘジンの新曲が到着。彼女らしい不思議な浮遊感を持っているダウンテンポの楽曲ですが、ビートがいつになくトラップっぽくてビックリしました。プロデューサー兼フィーチャリング・アーティストとして参加しているのは、エイサップ・ロッキーやサーペントウィズフィートらの作品に参加してきたクラムズ・カジノ。そして、トラヴィス・スコットやリル・ナズ・Xの楽曲で知られる2人組のテイク・ア・デイトリップ。彼らの貢献が大きいのかもしれませんね」
天野「クラムズ・カジノはなんとなく繋がりそうだけど、テイク・ア・デイトリップの参加が以外でラップ・ファンとしては楽しい! この曲は彼女が以前、英ロンドンに暮らしていたときに作った曲で、それから長い時間をかけて完成させたらしいです。プレス・リリースによると、この曲は失恋と拒絶についての歌なんだとか。〈どうして私を愛さないの?〉と繰り返されるコーラスは情念たっぷりで、なんだか迫力があります」
田中「なお、コロナ禍によりいったん延期になったヘジンの来日公演の振り替え日程が決定しました。2021年12月3日(金)に東京・渋谷のContact、翌日4日(土)に大阪・住之江のBLACK CHAMBER(CCO)にて開催。楽しみですね!」
Zella Day “Dance For Love”
天野「ゼラ・デイは〈PSN〉の会議で何度か名前を挙げていたアーティストなので、満を持しての初登場ですね。LAのシンガー・ソングライターで、ラナ・デル・レイの新作『Chemtrails Over The Country Club』への参加も話題でした。僕は、2月にリリースされたワイズ・ブラッド(Weyes Blood)との共演曲“Holocene”が大好きで、繰り返し聴いていたんですよね」
田中「“Holocene”に続くこの新曲“Dance For Love”は、天国にいる憧れのロイ・オービソンに宛てたラヴソングなんだとか。いいエピソード。ドラマーはオートラックス(Autolux)のカーラ・アザール(Carla Azar)、ベーシストはケイジ・ジ・エレファント(Cage The Elephant)のダニエル・ティチェナー(Daniel Tichenor)。組み合わせもいいですね」
天野「このインディー・ディスコ感はU.S.・ガールズの最近のシングルにも近い感じで、超いいですよね~。無限に聴けちゃう。あと、亮太さんがめちゃくちゃ好きそうなライン……(笑)。アルバムがそろそろリリースされるようなので、楽しみに待ちましょう!」
Cola Boyy feat. The Avalanches “Don’t Forget Your Neighborhood”
天野「今週、最後に紹介するのは、カリフォルニアのオックスナードを拠点にしているシンガー・ソングライター/プロデューサーのコーラ・ボーイ! この曲は、アヴァランチーズをフィーチャーした爽やかなディスコ・ポップです」
田中「このコーラさん、モジャモジャ頭に髭、さらに丸メガネというキャラも最高ですね。これは好きにならずにはいられない! 彼のキャリアをさらっと紹介しておくと、本名はマシュー・ウランゴ(Matthew Urango)で、2018年にエールのニコラス・ゴダンが主宰するレーベル、レコード・メイカーズ(Record Makers)からリリースしたEP『Black Boogie Neon』が話題を集め、翌年には〈コーチェラ〉に出演しています」
天野「そして、2020年にはアヴァランチーズの新作『We Will Always Love You』の収録曲“We Go On”に、ミック・ジョーンズ御大と参加していました。一度聴いたら忘れられない、超個性的な歌声がすごい。この“Don’t Forget Your Neighborhood”を収録したデビュー・アルバム『Prosthetic Boombox』は、6月18日(金)にリリース。MGMTのアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(Andrew VanWyngarden)や、ストーンズ・スロウからのリリースなどで知られるジョン・キャロル・カービー(John Carroll Kirby)ら、期待値を上げる面々が参加しています」
田中「サイケでメロウなポップ・サウンドになってそうですね。今後もコーラさんに注目したいです!」