©Alasdair Mclellan

この男を待ち焦がれていた。仲間たちのめざましい活動に続いて、新たなソロ作がついに完成! 音楽を作る喜び、パーティーの素晴らしさ――原点を純化させた超最高のダンス・アルバムだ!!

音楽の喜びを取り戻す

 ジェイミーxxにとってソロ2作目となるニュー・アルバム『In Waves』がついに登場した。レゲエやR&Bなど多彩な音楽性を美しくしなやかに内包させた初作『In Colour』から9年。その間にThe xxの3作目『I See You』(2017年)を発表していたとはいえ、決して短い期間ではない。それでも彼の存在感が薄まらなかったのは、2020年の“idontknow”や2022年の“Let’s Do It Again”など印象的なシングルのリリース、オリヴァー・シム、ロミーというThe xxを構成する2人のソロ作への参加に加えて、スクリレックスやタイラー・ザ・クリエイターらの楽曲などにその名を刻んでいたことも大きいだろう。日本のリスナーにとっては、渋谷Contactでの突然のパフォーマンス(2020年3月)を含む何度かの来日DJも印象として強いはずだ。

 アルバムの完成にここまで時間がかかったのは、スランプに陥っていたからだという。制作とツアーを繰り返してきた生活に精神を擦り減らし、ジェイミーは音楽を創造する喜びを見い出せなくなっていた。そして、なかなか満足のいくものを作れず、長らくリリースできていない焦りから、同時代の音楽を聴くことができなくなり、やがてソウルやディスコなどの古いレコードに針を落とすようになる。自然とそうした音楽からのサンプリング・ネタが貯まっていき、『In Waves』のインスピレーションが湧き出ていった。

JAMIE XX 『In Wave』 XL/BEAT(2024)

 また、ロックダウン中の英国で盛んになっていた違法の野外パーティーやレイヴもジェイミーを刺激したそうだ。2020年、テムズ河をサイクリングしていた彼は、どこからか音が鳴っていることに気付き、その場所に向かう。そこではフラストレーションを抱えた若者たちが小さなレイヴを開催していた。彼は「人間が一緒にいたいと集まり、その場で踊っているのはとても素敵で、見ていて感動的だった」と語っている。

 サンプリングを使うこと、パーティーで〈鳴る〉音楽であること――そのふたつが『In Waves』の指標になった。後者のポイントについては、現場でのトライが役に立ったそうだ。ある程度まで仕上げた楽曲を実際にDJでプレイしてみて、ダンサーたちの反応を見る。フロアからのフィードバックを受けて、改良を加えていく。本作の楽曲は、そうした過程を経て完成した。