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血の通った作品が出来た

 前作『Sentimental Young Ones』は〈孤独〉がテーマの曲が多かったが、今作『Panta rhei』(=〈万物は流転する〉の意)はヨシダレオのなかにまた違った感覚があるという。

 「自分がどんな信念を持って生きていくか、何を大切にしたいのかが強く表れた気がしますね。以前はもっとフワッとした歌詞だったのが、こういった時代になって、歌詞に意味を持たせることが重要なんじゃないかなと。ヘラクレイトスっていう哲学者の言葉から取ったんですけど、“パンタ・レイ”はいっしょに住んでいた祖父が去年3月に亡くなりまして、その祖父へ宛てた歌なんですよ。家族に向けた曲も初めてで新鮮だし、祖父との記憶が詰まった大切にしたい曲が制作の最後に出来て、これは入れたいなと思いました。ヘラクレイトスは人生を消えたり揺れたり二度と同じ形にはならない〈火〉に例えてもいるので、“DESTRUCTION”“REBOOT”(2020年発表の“BOOT”のリアレンジ版)の歌詞では〈火〉を象徴的に使っています。実はこの2曲が対になっていて、ラストの“REBOOT”のあと、冒頭の“DESTRUCTION”に戻りやすい感じにもしてますね。再生から破壊へ、輪を描いて流転するイメージで。だから、〈次、行きまーす!〉と話すレコーディング時の僕の声を“REBOOT”の終わりにあえて残してあるんです。“DESTRUCTION”の〈ハロー〉に繋がるように。そうやって何度でも違う聴き方ができる、同じ聴き方ができないアルバムにしたくて、タイトルを『Panta rhei』にしました」。

 加えて、前作以上にヴァラエティー豊かなサウンド・アプローチにも注目したいところ。

 「コロナ禍において、メンバー各々が自分たちのルーツになった音楽を改めて聴き直したのが大きいかもしれないです。僕、小さい頃からB'zが大好きで。去年の4月頃、B'zがYouTubeでライヴ映像を無料公開していたじゃないですか。それがきっかけでハード・ロックのスイッチが入っちゃったので、エアロスミス、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、レインボーとかを聴き返しました。“虎”はその影響で、王道ハード・ロックをサリバンの解釈で表現してみた感じですね。一方で、“教育”はデモ段階の仮タイトルが“スミス”だったくらいモロに、歯切れのいいギターや甘いメロディーにUKっぽさが出てたりするっていう(笑)。そんなサウンドに日本語の歌詞が乗るのもおもしろくて、上手くまとまったアルバムだなと思います」。

 そして、バンドに加入したばかりのハセガワペイが作詞を手掛けたブルージーでチャーミングなラヴソング“Mr.Pastman”もいいアクセントになっている。

 「明るくて牧歌的なタッチの曲だったので、ペイにお願いしたんです。当時の自分が書いたらシリアスな方向に行っちゃう気がしたし、どちらかというとアルバムの風通しを良くする歌詞が欲しいと思ってたから。僕が歌いやすいようにしてくれている優しさも感じられる、すごく新鮮な仕上がりになりました」。

 2018年発表の自主制作EPに収録されていたライヴ定番曲“ときめき”の新録を含め、渾身の8曲が揃った『Panta rhei』。全編でコーラスの厚みが増したことに関しても「カズマとペイは別のバンドでフロントマンを経験しているし、ドラムのタダカズキもけっこう歌えるんですよ」と自信を覗かせ、「血の通った作品が出来たから、もっと肉体的なパフォーマンスがしたい。前回は中止になったツアーのリベンジを果たしたいです!」とヨシダレオは語る。まずは、このミニ・アルバムで新生サリバンの凄みを存分に感じてほしい。

SULLIVAN's FUN CLUBの2020年作『Sentimental Young Ones』(ATAMANICRUZE/SPACE SHOWER)