
お互いの変態性を見せ合いながら制作するのが楽しい
――4曲目がドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」のオープニングテーマだった“VIOLATION”。この曲も、なかなかサウンドがヘビーですよね。
「今思えば、ダークな警察ドラマのオープンングとして“VIOLATION”が作れたから、明るい警察を描いた『ハコヅメ』にハマる“YY”が書けたのかもしれないですね。『ストロベリーナイト・サーガ』は〈ダークで疾走感がある曲〉という要望で、最初はすごく悩んだんです。〈どうしようか〉と思ったんですけど、その頃ちょうどハマってた初代の『ストロベリーナイト』と(手塚治虫の)『火の鳥』を落としこんで“VIOLATION”のAメロができました。
デモまで作ってFace 2 fAKEに投げたら、〈こういうことだろ!〉ってふうに仕上げてくれて。〈こういうこと!〉ってなりました。作家さんやアレンジャーさんも意図を汲んでくれるんですよね。私がわかりやすいんかな……」
――ロイさんは、イメージが隅々まで定まってる感じがします。
「具体的に映像や主人公が浮かんでこないと作れなくて……。だから、もとから映像があって、誰が演じるかも決まっているタイアップは、超ありがたいんですよ。無から作ったら、出口がなくて大変なことになる(笑)。
でも作りよるうちに、やりたいこともどんどん浮かんでくるし……。勉強とか少しも興味が湧かんかったのに、好きなものやったらこんなにこだわりが出てくるんやと思ってます」
――好きなことに貪欲なんですね。
「気づいたら時間が経ってるんですよ。8時に寝て14時に起きるような生活をしてるので、早起きとか無理です。この生活リズムを崩されたら終わりなので、太陽がポジティブな表現で使われるのも〈マジでなんなん?〉って思ってます。〈君は太陽〉ってなに? 夜のほうがよくない?って(笑)」
――5曲目の“そぼふる”は、どのような曲でしょうか。
「これは、曲名から浮かんできました。〈そぼふる〉ってパワフルっぽくて、なんかかわいいなって。
海が近くにあるマシコさんのスタジオで、ダラダラしながら作ったんですけど、2時間くらいでパパッとできましたね」
――ロイさんの新たな声質に出会える作品ですよね。
「レコーディングを井上うにさんにお願いしたので、いろんなものが引き出されているのかも。歌う段階でマイクが整ってるから、気分が乗るんですよね。
それに、うにさんもこだわりの人だから、ご自分の変態性をすごくぶつけてくれる。頼んだことだけじゃなく〈ここは譲れんのやろうな〉っていうこだわりを見せてくれるから、〈この人、大好き!〉ってなるんですよ。ロイの作品を自分の作品としても捉えて作ってくれとるんやなって」
――手を抜こうと思えば、いくらでも抜けますからね。
「〈やれ!〉って言われたことをやるのは簡単だけど、それってアートじゃない。事務処理みたいに、流れ作業をされたら悲しくなります。お互いの変態性を見せ合いながら、制作をするのが楽しいんですよね」

『チェンソーマン』や『銀魂』の女の子がリアル
――そして、ラストが“お前はパラダイス”ですね。
「曲が仕上がったのはコロナ前やけど、〈お前はパラダイス〉って言葉は5年前くらいから温めてたんです。すごく気に入っている言葉なので、歌詞を引き立てるために弾き語りでできるシンプルな曲にしました。
自粛期間中に曲をカバーしたのをきっかけに、NABOWAにコライトをお願いしたら引き受けてくださって。リモートやったんですけど、一日中テレビ電話を繋いで一緒に作りました」
――陽気な雰囲気の曲をイメージしていたので、聴いてみたらバラードでびっくりしました。
「真逆が好きなんです。明るい曲調でタイトルが〈お前はパラダイス〉だったら、絶対に恥ずかしくて歌えない(笑)。バラードだからこそ、歌える言葉があるというか。まだ世に出していないバラードが何曲かありますけど、全部タイトルがやばいですよ」
――なぜ、曲調とタイトルをチグハグにするんですか。
「強がっとんのかもしれないですね。バラードって、自分の弱みを見せないけん気がして、一番恥ずかしくないですか。だから〈お前は〉っていったりして、かっこつけとるというか。失恋系の曲とか〈この人は、失恋したらこうなるんや〉ってイメージさせるし。熱愛がバレとるのに、ラブソングを書く人は本当にメンタル強いと思います」
――〈あの人のことを歌ってるのかな……〉って、特定の誰かが脳裏をかすめることありますもんね。
「リスナーからしたら、それも面白いんやろうなって思うんですけどね(笑)。最近は、恥ずかしくて恋愛をテーマにした映画やドラマも見れんくなりました」
――どのようなところに違和感を感じるのですか。
「『チェンソーマン』や『銀魂』に出てくる女の子がリアルだと思ってます。
膝を擦りむいた男の子に〈大丈夫だったあ? 絆創膏貼ってあげるぅ(ぶりっこな声色で)〉ってする女性は、あまりいない気がしてるんですよ。性癖もあるし、男性向けコンテンツでそういうのがあるのは仕方ないとも思うんですけど、女性向けコンテンツでされたら違和感を感じちゃいますね(笑)」
――では最後に。今後は、どのような活動をしていきたいですか。
「自分と真逆の人とコライトしてみたいですね。芸人のくっきー!さんとか、一緒にやってみたい。バンドをされていたころの曲も、泥臭いのにキラキラしててめっちゃいいし、汚いものを美しく見せる人だと思うので。
あとは、化粧品の広告もしたいし、歌詞の和訳もしたい。〈作りたい〉〈歌いたい〉と同じレベルでしたいことが、いっぱいあるんですよね。嘘をつききらんけ、演技は無理やろな……。でも、声優はしたいんですよ。おばあちゃんや子どもみたいに、現実の自分だと絶対になれないものになれるから。
エンタメだったら、なんでもいいかな。私は、浜ちゃん(浜田雅功)になりたいんで(笑)。全部のことを、音楽を理由に繋げていこうと思います」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年9月15日
配信リンク:https://roe.lnk.to/warusa
TRACKLIST
1. YY(作曲・編曲:ロイ-RöE- & SUNNY BOY)
2. ファボリテ(作曲:ロイ-RöE- & マシコタツロウ/編曲:GAKU)
3. 少女B(作曲:ロイ-RöE-/編曲:ロイ-RöE- & The Anticipation Illicit Tsuboi)
4. VIOLATION(作曲・編曲:ロイ-RöE- & Face 2 fAKE)
5. そぼふる(作曲:ロイ-RöE- & マシコタツロウ/編曲:GAKU)
6. おまえはパラダイス(作曲:ロイ-RöE-/編曲:NABOWA)
全楽曲作詞:ロイ-RöE-
PROFILE: ロイ-RöE-
作詞作曲編曲からミュージックビデオやアートワークの制作まで、枠に囚われずマルチに創作を行うシンガーソングライター。中学卒業後、モノを創る仕事をしたいと思い立ち、独学で音楽の道へ。ジャズ、フレンチポップ、昭和歌謡、ヒップホップなど多様な音楽的ルーツから生み出されるジャンルレスなサウンドと、三島由紀夫や中原中也からインスパイアされた文学的歌詞が魅力。2018年10月にファーストデジタルEP『ウカ*』をリリースし本格的に音楽活動をスタート。2020年8月31日にカバープロジェクトの集大成であるデジタルEP『61Filter』をリリース。企画内でカバーした“チャイナアドバイス”(相対性理論)は楽曲使用回数が4万回超、関連動画の再生回数が1億回を超え、TikTok流行語にノミネートされるなど他のSNSを巻き込み、さらなるバズを生んだ。戸田恵梨香と永野芽郁がW主演を務める日本テレビ系ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」のオープニングテーマソング“YY”を2021年7月21日にリリース。