ロイ-RöE-

中学卒業後から独学で作曲を始めたシンガーソングライター、ロイ-RöE-。音、言葉、ビジュアル……すべてのクリエイティブにおいて、ヴィヴィッドでカラフル、時に毒のある表現を創出している。

そんなロイ-RöE-が、以前から楽曲を愛聴していたという、国内のみならず海外からも熱い支持のあるインストゥルメンタルバンド、NABOWAと初コラボレーションした。NABOWAは、方向性がバラバラの色とりどりな6曲が収められたロイ-RöE-の初のオリジナルEP『ワルサ』のラストに置かれた“おまえはパラダイス”を共同アレンジ。語り掛けるようなロイ-RöE-の歌を際立たせながら、演奏で彩りを与え、サビで一気に厚みが増すような抑制の利いたアレンジは、作品に深い余韻を与えている。

そんなロイ-RöE-とNABOWAの4人に、リモートで行われたという“おまえはパラダイス”の制作について、そもそもの出会いについて、シンガーソングライターとインストバンド双方における歌詞とメロディーの役割について、様々なことをオンラインインタビューで訊いた。

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NABOWAに見つかった! TikTokでのカバーが繋いだ縁

――ロイ-RöE-さん(以下、ロイ)の“おまえはパラダイス”を共同アレンジすることになったきっかけは、ロイさんがNABOWAの楽曲をカバーをしていたことだったそうですが。

ロイ-RöE-「私が去年の自粛期間中に名曲をカバーする企画をやっていたんですが、それで元々好きだったNABOWAさんの“キッチンへようこそ feat. ACO”(2010年)をカバーしてTikTokにアップしたんです。そうしたらご本人たちが反応してくれて、〈あ、見つかった! どうしよう〉と思って(笑)。でも、今がチャンスだっていうふうに思って、昔からデモの状態であった“おまえはパラダイス”のアレンジを相談してみたんです」

@roe_noraqra

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♬ キッチンへようこそ covered by RöE - RöE-ロイ-

景山奏(NABOWA)「ロイさんの存在はロイさんの曲をプロデュースした、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)からよく聞いてたんです。自分で曲を作ってて、サンプラーとかを使いながらライブをするすごい子がいるって。僕はたまにバンドのことをエゴサーチしてるんですけど、そうしたらそのロイさんが俺らの曲をカバーしてるのを見つけて、すごく嬉しかったですね」

ロイ「私はたまに一日中サブスクで曲を聴いてるだけの日があるんです。ほんと〈闇〉みたいな人間なので、そうやって音楽で浄化しないと生きていけなくて(笑)。それで知ったのがNABOWAさんの“My Heartbeat (Belongs To You) feat. Naz Yamada”(2017年)で。イントロを聴いて〈いいな〉って思ってすぐダウンロードして、一時期死ぬほど聴いてました。“キッチンへようこそ”は、私はACOさんも好きなので〈俺得コラボ〉みたいな感じだったんです(笑)」

NABOWAの2017年作『DRAWINGS』収録曲“My Heartbeat (Belongs To You) feat. Naz Yamada”

景山「ありがとうございます(笑)。エゴサーチして反応してほんま良かったなって思います」

NABOWA
(左から)山本啓、堀川達、川上優、景山奏

デモから感じたロイ-RöE-の曲に対する強い愛

──NABOWAの皆さんはロイさんにどんな印象をお持ちでしたか?

山本啓(NABOWA)「曲をいろいろと聴かせていただいて、まず声にすごく特徴があって、一回聴いたら忘れられない、すごい歌い手の方だなって思いました。

それで一緒に作品を作ることになり、“おまえはパラダイス”のデモを聴かせていただいて。おもしろいアイデアがいっぱい詰まっていたので驚きましたね。特にレイヤーの重ね方に曲に対する強い愛を感じて、作曲家としても尊敬できるなって。あと、僕はロイさんくらいの年の時に、ここまでのデモを作るなんて絶対できひんかったので、すごいなと思いました(笑)」

堀川達(NABOWA)「僕もデモを聴いて、〈若いのにすごいな。おじさんもう曲作るのやめようかな〉って思ったくらい衝撃でしたね。ロイさんは中学を卒業してすぐに曲作りを始めたって聞いて、僕はその頃何してたんやろう?って思いました(笑)」

川上優(NABOWA)「僕らのデモって結構曖昧な状態であることが多いんですけど、ロイさんのデモは完成度がすごく高くて。もう曲ができあがっているような状態だったので、あとはそれに沿って湧いてくるアレンジを形にすることができましたね」

景山「デモのロイさんのアイデアをどれだけ活かして、生楽器をどれくらい足すかっていうことを考えて進めていったんですけど、最初からかっこいい曲なので、あまりやりすぎないように、っていうことは心がけました」

『ワルサ』収録曲“おまえはパラダイス”

──“おまえはパラダイス”は歌が際立つスローテンポの曲で、ロイさんの曲の中ではど真ん中ではないと思うんですが、元々どういうイメージで作った曲なんですか?

ロイ「普段は色々と構成を練って作ることが多いんですが、この曲は珍しく歌詞から作った曲なんです。シンプルでアコギが似合って、弾き語りでもできるような曲というイメ―ジで。

だから、アレンジが活きる曲だなと思ったので、NABOWAさんにお願いするのがぴったりだなって。そうしたら、アレンジの妙も聴こえるし、歌も聴こえるすごく良い塩梅にしてくれました。私じゃ絶対できないアレンジだと思ったので、お願いできてすごく良かったなと思います。私はいつもパソコンで遊びながらアレンジする感じなので、同じ打ち込みの人より生楽器を弾ける人にお願いすることが多くて。NABOWAさんは、私のそういう部分を大いに補ってくれました。

やっぱり曲を聴いてくれるリスナーの方には〈これ、おいしいので食べてください〉って言いたいんですよね。だから〈ここはもっとこうすれば化けるのに〉って思われないように、できるだけ曲をメイクアップして出したいと思ってるんです」」

 

一筋縄ではいかない2組

──歌詞については、誰かとの関係性についてのものにも聴こえますし、自分自身の中での葛藤や逡巡にも聴こえるなと思ったのですが。

ロイ「18歳の頃に“おまえはパラダイス”っていう言葉だけをメモってたんです。その言葉から、いろんな言葉を連想してパズルみたいに組み合わせていって書きました。

私は岡崎京子先生の漫画が好きなんですけど、岡崎先生の作品って、主人公の女の子がかわいいんだけど口が悪くて〈おまえ〉って言ったりするんですよね。そういうギャップがいいなと思ってて。それで、そういうギャップがあるムーディーな曲を作りたいなと思って書いた歌詞ですね」

山本「冒頭の〈わけ合う酸素と静寂〉っていう言葉がむちゃくちゃ綺麗やなって思って。そこからどんどんイメージが広がっていきますよね。その綺麗さと〈おまえ〉っていう言葉のコントラストも良いし、声とも合ってる。歌詞の意味はロイさんにしかわからないと思うんですけど、僕はすごくロマンチックに感じました。あと、あからさまじゃない表現を大切にされてる感じがします。僕も漫画をよく読むんですけど、ちょっと影のある漫画が好きで、そういう共通点も感じました。そういうことを感じながらフレーズを練っていきましたね」

ロイ「語感や字面を優先して歌詞を決めてるんですよね。だから、伝えたいことがあって書くっていうより、この言葉が使いたいから書く、そこからどういう思いを連想するか、という作り方で。それこそ恋愛ソングとかストレートなバラードで自分のことを書くのは恥ずかしくて(笑)」

川上「〈おまえはパラダイス〉っていうタイトルを聞いて僕が思い浮かべたのは向井秀徳さんなんです。向井さんも、〈貴様〉って言葉を使ったり、ロイさんが今言ったみたいに、まっすぐな歌詞を書かないイメージがあるので。

でもそう考えると、NABOWAもド直球な曲をあまり作りたがらないというか、そういう方向性にいったとしてもメンバーの誰かが恥ずかしくなってやめることが本当に多いんですよね。直球な曲が良い/悪いの話じゃなくて、バンドとしてそういうマインドっていうか。そういう面でも、ロイさんの曲は一筋縄ではいかないし、歌詞もすごく好きですね」

ロイ「ありがとうございます。ツイートみたいに簡潔でわかりやすい日本語の歌詞が恥ずかしくて苦手なんですよね(笑)。でも向井さんの歌詞はそうではなくてアートを感じるので、自分もそういう歌詞を書きたいなって思ってます」

山本「今話を聞いてて思ったのが、“キッチンへようこそ”の歌詞も決してわかりやすいわけじゃないということ。だから思考回路が似てるのかもしれないですね」

NABOWAの2010年作『Nabowa』収録曲“キッチンへようこそ feat. ACO”

ロイ「〈♪おいしくてスパイシーな話もあるよ~〉って歌詞が特に好きです」

山本「ありがとうございます(笑)」

王道ではないものが王道になるとき

景山「“キッチンへようこそ”のデモを最初ACOさんに聴かせた時、〈歌を歌ったことない人が作る歌詞とメロディーってめちゃくちゃ歌いにくい。マジで変えようかなって思った〉って言われたんです(笑)」

山本「歌ものを作ると大体〈インストバンドの人が作る曲やね〉と言われるんですよね。BRAHMANのTOSHI-LOWさんに歌ってもらった“夢の欠片”(2017年)という曲も、TOSHI-LOWさんに〈これ、一回ヒラクが歌ったものを送ってくれない?〉と言われて(笑)」

ロイ「厳しい(笑)」

山本「それで頑張って歌ったものを送ったんですけど、永久に葬り去りたいくらいの歌で(笑)。だから、俺は歌うのはほんまにできないし、歌を歌える人をめちゃくちゃ尊敬してるから、歌メロに対してコンプレックスもあって」

NABOWAの2017年作『DRAWINGS』収録曲“夢の欠片 feat. TOSHI-LOW”

ロイ「っていうことは、NABOWAさんのメロディーってやっぱり歌がなくてもインストで楽しめるということだと思うので、いいなと思います。私も、〈歌ものメロディ―〉みたいなものにはあまりしたくないと思ってるし、メロディーがなくとも歌詞を文学として楽しんでもらえたらいいなと思ってるので、NABOWAさんの一筋縄でいかないところは尊敬します」

山本「ありがとうございます。今の言葉でめっちゃ救われました(笑)」

景山「ロイさんって、マジでいろんなこと考えてはるんですね」

ロイ「ひきこもりだから考える時間がいっぱいあるんです(笑)」

景山「かっこいいな(笑)」

ロイ「NABOWAさんは〈こうしておいたら盛り上がるやろ〉みたいな王道のキャッチーなことをやらないからかっこいいです。オリジナリティーがあるっていうか」

景山「そういう王道な所にいかないように気を付けるというか。そこを探しながら曲を作るのが楽しいんですよね」

ロイ「そうなんですよね」

山本「今日お話しできて、伝わっている人にはちゃんと伝わっているんだなと思えて本当に嬉しいですね」

──NABOWAのその〈王道にはいかない〉という部分は、活動歴が長くなるにつれて変化は生じていますか?

景山「すごく変化してますね。ひねくれすぎもよくないなって思います。長いことひねくれてると、もうぐにゃんぐにゃんになって何がいいかわからなくなってくるので(笑)。自分たちがやりたいことをやるのはいいですけど、お客さんあってのバンドなので、誰も聴かないものになったらあかん、とは最近すごく思います。

僕はもともと歌ものがすごく好きなんですけど、こうやってロイさんと一緒にやらせてもらったりすると、ひねくれすぎんのもあかんし王道すぎるのもあかんっていうことを学ばせてもらえますね。やっぱインストとはチャンネルがちょっと違うのですごく勉強になる。バランス感覚はすごく大事やなって思いますね」

ロイ「塩梅が難しいですよね。例えば飲料水のCMソングのようなキラキラした〈めっちゃ王道!〉みたいな感じの曲がみんなどうせ好きなんやろ?って私はずっと思ってたんです。でも、TikTokのカバー企画をやってみて、今の若い子って意外とそういうキラキラ系の曲だけが好きなわけじゃないんだなって思いました。洋楽のコアな曲だったり、それこそインストとかもよくTikTokで流れてくるし、時代も変わってきよるんやなと。

というのも、相対性理論や小島麻由美さんの曲をカバーした時の反応がめっちゃ良かったんです。みんな〈元気の押し売り〉みたいな曲がそんなに好きなわけじゃなくて、リアルさのある曲が好きなんやなって。私がカバーした相対性理論や小島麻由美さんの曲は10年以上前の曲っていうこともあって、若い世代の子たちにあまり知られてないだけで、昔の曲でも掘り起こしたら若い子が好きな曲はいっぱいあるんやろうなと思う。昔は王道ではなかったけど、今やったら王道になることもあるんだろうなと。最近、小学生の子に〈何聴いてるの?〉と訊いたら、〈Spotifyでビリー・アイリッシュ聴いてる〉って言ってて、英才教育だなと思いました(笑)」

2020年のシングル『少女B*/チャイナアドバイス』収録曲“チャイナアドバイス”。相対性理論のカバー

 

お笑い好きに悪い人はいいへん説

――コロナ禍ということもあって、ロイさんとNABOWAの皆さんはまだ実際に会ったことはないそうですけど、今後そういう機会があるといいですよね。

ロイ「そうなんです。最初のリモートの打ち合わせでも緊張してあまり喋れなかったので、会ってちゃんと喋りたいですね(笑)」

山本「リモートならではの変な緊張ってありますよね(笑)。打ち合わせもお互いのマネージャーから〈じゃあ、どうぞ!〉と言われて、いきなりどう話してたらいいかよくわからないところがあったので」

ロイ「リモートだと無駄話もしづらいですしね(笑)」

山本「そうですよね。作品作りを通して、〈こういう人なのかも〉っていうことがだんだん分かり始めたところがあって。それを経て、今日はだいぶほぐれてきたのかなとちょっと思ってます」

ロイ「私、お笑いも好きなんですけど、NABOWAの皆さんもお笑い好きで」

景山「そうだ(笑)。前、お笑いコンビのニューヨークが作った映画『ザ・エレクトリカルパレーズ』(2020年)のことを話したらロイさんが反応してくれて、〈あ、お笑い好きなんや〉ってわかって。僕は〈お笑い好きに悪い人はいいへん説〉を唱えてるんですけど(笑)、そこで一気に親近感がわいて」

ロイ「(笑)。会っていろいろ話したいですね」

景山「特に『エレパレ』についてはゆっくり話したいです(笑)」

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年9月15日
配信リンク:https://roe.lnk.to/warusa

TRACKLIST
1. YY(作曲・編曲:ロイ-RöE- & SUNNY BOY)
2. ファボリテ(作曲:ロイ-RöE- & マシコタツロウ/編曲:GAKU)
3. 少女B(作曲:ロイ-RöE-/編曲:ロイ-RöE- & The Anticipation Illicit Tsuboi)
4. VIOLATION(作曲・編曲:ロイ-RöE- & Face 2 fAKE)
5. そぼふる(作曲:ロイ-RöE- & マシコタツロウ/編曲:GAKU)
6. おまえはパラダイス(作曲:ロイ-RöE-/編曲:NABOWA)

全楽曲作詞:ロイ-RöE-

 


PROFILE: ロイ-RöE-
作詞作曲編曲からミュージックビデオやアートワークの制作まで、枠に囚われずマルチに創作を行うシンガーソングライター。中学卒業後、モノを創る仕事をしたいと思い立ち、独学で音楽の道へ。ジャズ、フレンチポップ、昭和歌謡、ヒップホップなど多様な音楽的ルーツから生み出されるジャンルレスなサウンドと、三島由紀夫や中原中也からインスパイアされた文学的歌詞が魅力。2018年10月にファーストデジタルEP『ウカ*』をリリースし本格的に音楽活動をスタート。2020年8月31日にカバープロジェクトの集大成であるデジタルEP『61Filter』をリリース。企画内でカバーした“チャイナアドバイス”(相対性理論)は楽曲使用回数が4万回超、関連動画の再生回数が1億回を超え、TikTok流行語にノミネートされるなど他のSNSを巻き込み、さらなるバズを生んだ。戸田恵梨香と永野芽郁がW主演を務める日本テレビ系ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」のオープニングテーマソング“YY”を2021年7月21日にリリース。

PROFILE: NABOWA
京都を拠点に活動している4人組インストゥルメンタルバンド。国内外の大型フェスへの出演や、近年は台湾での3都市ツアー、香港でのワンマンライブを行うなど、ライブアクトとしてアジアでも高い評価を獲得している。2021年6月に2年ぶりとなる7作目のフルアルバム『Fantasia』をリリース。