性別も年齢も感じさせないロイ-RöE-という不思議な名を持つマルチクリエイターは、実はすっごく面白い。ファッションは派手でありながら所作には繊細さも見えるし、歯に衣着せぬ発言ではっきりとものをいうのに悪意の欠片は微塵も感じさせない。
強い信念を持ち、無邪気に笑い、本音で話す。〈子どもの素直さを持ったまま年を重ねたら、こんな女性に成るのかも〉。ロイ-RöE-の話を聞いていると、そんなふうに思わせられた。
今回は2021年9月15日にリリースされたニューEP『ワルサ』の話題を中心に取材を決行。彼女の持つこだわりや美的感覚について、少しだけ触れさせてもらった。女の〈飴と鞭〉を唄うマルチクリエイター、ロイ-RöE-とは果たしてどんな人物なのだろうか。
自由で無敵な女の子
――なぜ『ワルサ』は〈13~18歳の不安定で危なっかしい女の子の罪悪感、わるだくみ、心の非行、背伸び、反抗〉というコンセプトになったのでしょうか。
「好きな映画や小説が、13~18歳くらいの女の子が周りの人を振り回してめちゃくちゃにしていく内容ばかりなんですよ。そういう作品に触れると〈自分も若いころ、そうやったな〉ってホッとする。〈みんなこういう時期があるんやな〉と思ってもらえるようなアートを作りたいと思ったのが始まりです」
――ロイ-RöE-(以下、ロイ)さんは〈13~18歳の女の子〉にこだわりが強いですよね。
「あの期間の女の子って自由で無敵じゃないですか。女の子でも女性でもないから、メイクをして大人ぶるときもあれば、都合が悪いと何も知らない子どものふりをする。都合のいい部分だけ選んでる感じがいいですよね」
――ご自身も「思考が14歳で止まってる」とお話しされているのを見かけました。
「止まってます。どうやったら動くんでしょうか。大人のなりかたがわからないです。昔は敬語とかも使えんで、そこらへんは成長したんですけど……。地元の子とかとしゃべりよると、〈まだ、そんなん言いよるん?〉って言われることもあって。自分は、まだ子どものままでいたいです」
妥協はマジで嫌い
――先ほど「アートを作りたいと思った」とお話しされていましたが、ロイさんはどのようなものをアートだと考えていますか。
「〈これをこうやって例えるんや!〉がアートだと思います。わからんすぎたらわからんだけやけど、〈自分の言葉で言っとるな〉と感じさせるものというか……。中原中也さんや三島由紀夫さんって、そういうタイプやないですか。すっごい変なことを言いよるし偏見もすごいのに、あたかもいいことのように美的にいうとる。含みを持たせて、いかに上手く表現するかが、アートの醍醐味だと思いますね」
――歌詞へのこだわりに通じるところもありそうですね。
「わかりやすい言葉とか、Twitterでいいやと思っちゃうんですよ。それに歌詞はデザインも大事にしていて。私はスマホで作詞をするんですけど、ちょっと(字数が)はみ出したりするだけでイラッときます」
――歌詞のデザイン性のように、ロイさんのなかで譲れないことってほかにもありますか。
「服の形やメイクの色とか、めっちゃこだわります。人それぞれ合う合わんはあると思うから、一番自分に合うことをしたいんですよ。だから〈時間ないけ、仕方ない〉みたいな妥協は、マジで嫌い」
――仕方ないと切り捨てられると、ないがしろにされている感じがしますよね。
「楽曲制作でも〈編曲、時間ないからこれで〉って言われたら、〈こっちは合わせたんやけど⁉〉ってなると思う。できないなら、やらんかったらいい。〈時間がないから……〉って、宮崎駿監督の前で言えるのかって思うんですよ。じゃあ、駿さんに〈妥協してください〉って言うんかって。今のチームは、そういうことなくやれてますけどね(笑)」
――100の精度で作ったものを、妥協なく100のまま届けるのがロイさんの美学のような気がします。
「むしろ自分にとっては、120くらいの出来の作品を世に出したいですね。リスナーやスタッフさんに褒められて、200になるのが理想かな。
妥協したり自信がなかったりしたら、評価を得られないと思うんです。〈これまずいけぇ、食べて〉って勧められても、みんな食べんやろうし。だけぇ、〈いいものしか出してない!〉って感じです。自分も嘘をつききらんから、自信がなかったら笑えないんですよね」