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〈泥臭さ〉を武器に戦っていきたい

――その一方で今作は全体的に見ると、熱いロックンロール的なサウンドの曲が多い印象です。PARIS on the City!がもともと〈60年代モータウン的サウンド〉というのを掲げていたことを踏まえると、これは結構大きな変化かと思うんですが、意識的にそういう方向へ舵を切ったのでしょうか。

明神「自分はゼロから曲を作る段階では、あまりサウンドの方向性とかを考えないようにしています。というのも、なるべく本能的に曲を書きたくて。その分、今作ではいままでの作品以上に4人でアレンジをちゃんと考えました。

今回みんなでアレンジを練る過程で〈自分たちの強みって何だろう〉と改めて考えていたとき、技術的に上手くやろうとすることよりも、気持ちをまっすぐ表現することを大事にしていた、結成当初のライブの楽しさを思い出したんですよ。ちょうどツアーが中止になってしまったタイミングだったので、改めてこれからそういう〈泥臭さ〉みたいなものを強みにして、それを武器に戦っていきたいなと思って。それでこういうサウンドになりました」

――具体的にはどういうやり方でアレンジを練っていったんでしょう?

明神「今回はレコーディング前に初めてバンドで合宿をしたんです。そこでがっちり作っていきましたね」

小林「そもそも昨年末くらいに全てのデモが送られてきてて、それを基に宅録して自分のパートをラフに固めていったんです。その状態で合宿に行き、そこでコードアレンジを考えたり、フレーズの細かい部分を変えていって。で、それを持ち帰ってもう一回宅録で色々弾いて、最終合宿をしてレコーディングした、みたいな感じです」

明神「そう言えば、今回は初めてプリプロを作ったんですよ。みんなが送ってくれた演奏を一つにまとめてプリプロを作るんですけど、その後レコーディング本番を経て出来上がってきたものは、それともまた違う。自分の想像してなかった仕上がりなんです。

そのときにしか出せないパフォーマンスによって、またもう一個違う場所に行ける。そういう発見はプリプロを作らなければなかったと思うので、やってよかったです」

 

自分がどう弾くかではなく、曲がいかに良くなるか

――プリプロを用意したというのは一つ挑戦だったかと思いますが、他に何か新しく意識したことってありますか?

小林「僕はいままでギターのことばかり考えていて、曲全体のことを考えてなかったんですけど、今回はコードアレンジを考えることとか、他の楽器のフレーズについて自分がアイデアを出すということができたので、そこはチャレンジできたところかなと。今回は〈曲をよくしたい〉という方に意識が向いてた気がします。

一方でルーツが全員少しずつ違うので、口頭でイメージを伝えるのが難しかったです。〈夜景を感じられるようなBメロにしたい〉みたいに、どうしても抽象的になっちゃうんですよね。なので実際にイメージと近い曲を聴いてもらって〈感覚を上手くシェアできないか〉ということを考えました」

田中「僕もどっちかというと、自分がどう弾きたいかより、曲全体に対して自分がどういう深さをもたらせるかというかっていうところに重きを置いてた気がします。今回は自分のルーツとはちょっと違うギターロック的な曲が多かった、というのもあって。あまり自分主体で考えない感じでしたね」

阿久津「今回はプリプロもあってやること自体は事前に固められたので、自分はもう本番でどれだけ集中してのぞめるかということをひたすら考えていました。失敗が続いたりすると気持ちがナイーブになって、ずるずる行っちゃうので」

――集中力を高める秘訣とかって何かありますか?

阿久津「秘訣かはわからないですけど、レコーディング現場へ行ったときに元気に振る舞うことは意識してましたね。エンジニアの人といかにいい雰囲気でその場を楽しめるか、というところがカギになると思っていて、そのためには結局人とのやりとりが大切だなと、今回改めて思いました」

――それは大事ですね。今作にはオリジナル曲の他に再録曲が“キミはキレイだ”、“スーパースター”と2曲入っていますが、これも一つの挑戦と言えるかもしれませんね。

明神「ちゃんと綺麗な音で録り直したかったんです。前作『この世で一番嫌いな君へ』(2017年)のときはミキシング/マスタリングだけスタジオでやってもらって、録音自体は宅録でやったので。その中でも特に録り直したかったのが、この2曲でした」

阿久津「2曲ともライブでずっとやってた曲だったので、再録にあたってはライブの勢いみたいなものをいかにパッケージするかを考えていたかもしれないです」

『擦り切れても骨になるまで』収録曲“スーパースター”