RCサクセション/忌野清志郎のデビュー50周年プロジェクト第5弾として、忌野清志郎がホーンセクションを加えたフルバンド編成に回帰したアルバム『KING』(2003年)のリマスターに未発表の4曲とライブ音源、DVDを加えた『KING Deluxe Edition』(限定盤には2LPも付属)が2021年11月24日(水)にリリースされる。ソウルフルなバラード“Baby何もかも”にはじまり、“WANTED”、“雑踏”、“胸が張り裂けそう”、“約束”など名曲揃いの今作を聴くと、ハンドマイクを持ってシャウトしながら広いステージを駆け回りジャンプする、あの忌野清志郎の姿が浮かんでくる。
今作で共同プロデューサーとして清志郎と共に制作に携わったミュージシャンが、三宅伸治だ。『KING』発表後のツアーでは、忌野清志郎 & NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNSにギタリストとして加わりバンマスも務めるなど、晩年まで清志郎の右腕的存在として関わってきた三宅に、プライベートスタジオ〈ロックン・ロール研究所〉(通称・ロッ研)で行われた『KING』の制作過程と作品への想いを語っていただいた。多くの清志郎作品に中でも間違いなく名盤の1つとして挙げられる今作の魅力が再発見できるのではないだろうか。
ロッ研での〈遊び〉から始まった『KING』
――『KING』が発売された2003年から18年を経てのリマスター、未発曲のリリースとなりますが、率直にどのように感じていらっしゃいますか。
「18年経ったということにビックリしますね。でもこうやって、『KING』をまた発表してもらえるというのはすごく嬉しかったです」
――『KING』がリリースされた2003年の少し前に遡ると、清志郎さんはLOVE JETS※1をやっていて、三宅さんはご自身の活動をされていました。その間に清志郎・泉谷・スパイスマーケット※2でのライブもありましたが、そこから『KING』の制作はどんな流れで始まったのでしょうか。
「2003年5~6月の丸2ヶ月間、スパイスマーケットのレコーディングが予定されていたんですけど、それが急遽中止になったんです。自分も2ヶ月間ライブを入れてなかったものですから、大変暇になりまして(笑)。ということはボス(清志郎)も暇になっているわけで、〈どうしてますか?〉って電話して、ロッ研に遊びに行ったんです。そうしたら、録音機材を導入したっていうので、ボスのアルバムを作るとかいうことでもなく、2人でなんとなく曲を作って録音し始めたんです。それが始まりですね」
――ロッ研が設立されたのが94年ですよね。その頃はまだ録音機材はなかったということですか。
「ロッ研を作った理由は、夜中にいつでもドラムを叩ける場所が欲しかったからっていうことだったので。〈録音機材を入れないんですか?〉とずっと訊いていたんですけど、最初は〈入れたくない〉というようなことを言っていました(笑)。僕のミニアルバム『SUN DOWN』(98年)はロッ研で録らせてもらったんですけど、そのときは機材をエンジニアの方に持ってきてもらったんです。たぶん、それが最初のロッ研での録音だと思います。
機材を導入してからは、ボスは音を録るエンジニアリング作業を楽しそうにやってました。なので、『KING』の制作は、最初のうちは曲を作って遊んでいただけ、というのが正しいかもしれません」