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††† (Crosses) “Initiation”

田中「〈†††〉と書いて〈クロシズ〉と読むこのバンドは、デフトーンズのボーカリストであるチノ・モレノ(Chino Moreno)、ファーのギタリストとして知られるショーン・ロペス(Shaun Lopez)、そしてベーシストのチャック・ドゥーム(Chuck Doom)からなるグループで、2011年から活動しています。EPを3作リリースし、ファーストアルバム『†††』を発表した2014年までは活発に活動していましたが、同年のツアー後に沈黙していました」

天野「ところが、2020年末にコーズ&エフェクト“The Beginning Of The End”のカバーを、1年後の2021年末に映画『羊たちの沈黙』で使われたことで有名なQ・ラザラス“Goodbye Horses”のカバーを発表。さらに、ワーナーと契約をして、突如オリジナル曲の“Initiation”と“Protection”という両A面シングルをリリースしました。実に8年ぶりの新曲ですが、以前のゴスでダークな雰囲気、インダストリアルなヘヴィネスと浮遊感が同居したエレクトロニックなアプローチは変わっていなくて、2曲ともすごくいいですね。この“Initiation”は、特にナイン・インチ・ネイルズのファンはぜひ聴いてほしい! ウィッチハウスが持て囃されてから10年ほど経っていますが、いまこそフレッシュに聴けるサウンドなのでは? クロシズの活動には、今年かなり期待しています」

 

Yaya Bey “keisha

田中「ヤヤ・ベイは、米NY出身、ワシントンD.C.で活動するシンガーソングライター。昨年、彼女のEP『The Things I Can’t Take With Me』が、黒人/有色人種/マイノリティーによって運営される、黒人/有色人種/マイノリティーのアーティストのためのレーベルとして生まれ変わったビッグ・ダダの第1弾作品としてリリースされました。そんなヤヤ・ベイのニューシングル“keisha”は、プレスリリースによると、〈恋愛に全力を尽くしても、肉体的にも精神的にも決して満足できず、うんざりした女性たちを体現した〉曲だそうです」

天野「〈プッシーは超グッドなのに、あなたは私を愛してくれない〉と、この曲では繰り返し歌われていますね。まるでラッパーの曲のような、性的にかなりあけすけなリリックですが、だからこそ男の不甲斐なさや不義理、情けなさを攻撃した、かなりフェミズム的な曲だと思いました。いろいろな含みはあると思いますが、〈あなたはその程度なの?〉という挑発すら感じます。6月17日(金)に彼女がリリースする新作『Remember Your North Star』は、R&Bシーンにおける注目の一作になると思いますね!」

 

700 Bliss feat. Lafawndah “Totally Spies”

田中「米フィラデルフィアの詩人でエクスペリメンタルミュージック界の異端ムーア・マザー(Moor Mother)と、同じフィラデルフィアのプロデューサー/DJのDJハラム(DJ Haram)によるユニット、700・ブリスが再始動。2018年のEP『Spa 700』以来の新曲“Totally Spies”をリリースしました」

天野「この曲では、ファーストアルバム『Ancestor Boy』(2019年)が話題になったラファウンダのボーカルがフィーチャーされていて、すごい組み合わせの3人だと思いました。ラファウンダの儚げな歌声も存在感がありますが、ムーア・マザーの太い声のスピットとDJハラムのUKベース的なダークでヘヴィーなビートが地下世界を描き出していて強烈。さらに、レゲエ/ダブやジャングル/ドラムンベース、ダブステップ、そしてボルチモアクラブなどから受け継いだ低音がすごすぎて、とにかく圧倒的です。700・ブリスはハイパーダブから5月27日(金)にデビューアルバム『Nothing To Declare』をリリースするとのことで、この曲を聴いて、ものすごく期待が高まりました」