One More Future
実に4年ぶりとなるPerfumeのオリジナル・アルバムが到着! 強力なシングルや野心的な新機軸の満載された『PLASMA』はPerfumeの〈第4形態〉を表現する圧巻の一枚となった!
Perfumeの新作『PLASMA』がついに届けられた。オリジナル・アルバムという意味では2018年の『Future Pop』以来およそ4年ぶりで、初作に位置付けられる『Perfume~Complete Best~』(2007年)以来、アルバムの間隔としては過去最長の例となる。もちろんそれが昨今の時勢に伴う不測の事態の結果だったのは言うまでもない。メジャー・デビュー15周年イヤーに突入した2019年9月に初のオールタイム・ベスト盤『Perfume The Best “P Cubed”』を発表した彼女たちは、そのまま翌年2月から久々のドームツアー〈Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome〉へ向かうも、東京ドーム2日目の千秋楽は無念の公演中止に。その後は同年9月にシングル“Time Warp”を、2021年には初のEPとなる『ポリゴンウェイヴEP』をリリース。今年1月にはコロナ禍での新たなライヴとして〈Perfume LIVE 2022 [polygon wave]〉を実現させ、3月にシングル“Flow”が続き……そしてようやく今回のアルバム・リリースへと至ったわけである。
資料によると、タイトルの『PLASMA』=プラズマとは〈固体・液体・気体に次ぐ物質の第4の状態〉と言われており、それはすなわちPerfumeが第4形態に入ったということを意味しているようだ。そんな新章の幕開けとも言うべきアルバムは、勇壮な幕開け感と3人の幻想的なハーモニーが融和した序曲“Plasma”でスタート。シングルとは別ヴァージョンとなる“Time Warp(v1.1)”で軽快に滑り出すと、フィルター・ハウス調のベースラインが心地良い“ポリゴンウェイヴ(Original Mix)”へ。スムースなアップ“再生”に続くのはMVも公開された待望の新曲“Spinning World”だ。ブラック・コンテンポラリー系の都会的なスウィング感と抑制の効いたヴォーカリゼーションが絶妙にクールで素晴らしい新機軸となっている。
さらにアルバムの折り返し地点を温かく彩る“マワルカガミ”は、この状況下だからこそ生まれたのであろう、観客やリスナーへの感謝と信頼が率直に綴られた優しい新曲で、応援するファンたちの存在を〈光〉に例えた中田ヤスタカらしい言い回しにもグッときてしまう。オリエンタルで品のあるフューチャー・ベースの“Flow”、先述のEPからの“∞ループ”と“アンドロイド&”も一連の流れに収まることで却ってSF感を強調してくるかのようだ。新曲ではシティ・ポップの香る“Drive’n The Rain”も都会的な新味で、粋なシンセの音色やカーブを曲がるような転調のドライヴ感がかっこいい。そんな具体的な画が浮かぶ曲に続く“ハテナビト”は、未来の俳句のような不思議な言葉の響きが抽象的に耳残りするエレクトロ・ポップとなる。そしてラストは「NHK みんなのうた」に起用された“さよならプラスティックワールド”。不自然な現代社会の閉塞感や利便性の危険さを極めてポップに歌う風刺の効いた一曲で、それでも〈素敵な未来で生きていたいわ〉と結ぶあたりは実にスマートだ。
ともかく、これまでに構築してきた揺るぎない未来感を継承しつつ、生身の姿からアンドロイドまで次々に形を変えるPerfumeミュージックの現在進行形が体感できる充実の仕上がり。この後のツアー〈Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"〉ではまた新たに進化した彼女たちに出会えることだろう。