タワーレコード新宿店名誉店長こと椎名林檎さんが、突如リリースしたニューアルバム『放生会』。情報解禁からリリースまでの目まぐるしさに、OTK(椎名林檎のファン)のみなさまは混乱と歓喜の渦に包まれたのではないでしょうか?
そんな『放生会』の販売にあたり、タワレコ新宿店はフォトスポットや特設コーナーの展開で今回も大々的に盛り上げています。というわけで、2019年に『三毒史』『ニュートンの林檎 ~初めてのベスト盤~』のリリースの際Mikikiに登場してもらい、2021年に東京事変『音楽』についてコラムを寄稿してもらった椎名林檎担当の名物スタッフ、吉野真代さんに話を伺いました(写真の店頭展開は2024年6月8日時点のもので、変更や終了していることもございます。ご了承ください)。

椎名さんが楽しくリラックスして仕事をまっとうされたアルバム
――副店長からのメールに、吉野さんについて〈タワーレコード新宿店名誉店長・広報官〉と書いてあったのですが、オフィシャルな肩書なんですか?
「それは副店長が呼んでいるだけなので、オフィシャルではないです(笑)! そんな大層な者ではないですが、新宿店のXのポストとかをしているのは私です。新宿店には椎名さんのファンのスタッフがほかにもいて、POP制作の手伝いとかはしてもらっています」
――先日、渋谷店のサイン会に駆けつけたビヨンセのファンの方のインタビューを載せて大ヒットしました。濃度が高くて愛や思いが強いファンの話こそおもしろいと思っています。
「ありがとうございます。でもSNSもPOPも、間口を広げたいという目的意識や思いでやっているんです。OTKのみなさまにお越しいただけるのはもちろんありがたいのですが、ふらっと立ち寄った方に椎名さんの音楽を見つけていただきたいんですね。
今回の店頭展開はリリースまでの準備期間が短かったものの、規模を小さくする考えはなかったので、メーカー様と話し合って、最大限盛り上げられるよう場所を押さえました。フォトスポットの絵は、実はジャケットには描かれていない部分も描き足していただいていて」
――えっ、すごいですね!
「そうなんです。新宿店のフォトスポットでしか見られないものなので、ぜひそちらもあわせてチェックしてみてください」

――あの素敵な特製ショッパーはまだあるんですか?
「まだ終わってません! 引き続きお配りしております。配布が終わってしまった店舗もあって、今は全国で新宿店でしかもらえません。もしまだの方がいらっしゃいましたら、ぜひお越しください」
【#椎名林檎】
— タワーレコード新宿店 (@TOWER_Shinjuku) June 2, 2024
ニューアルバム『#放生会』絶賛大展開中🎊
フォトスポットではジャケの中に入ってお写真撮れます🩶
先着特典ショッパーのお渡しは本日までの予定です🐈⬛
まだGETされてない方は是非…🫶! pic.twitter.com/z5aJ9r6b3t
――今回のアルバムはデビュー26周年の2024年5月27日に発表されて、2日後に発売、というとんでもないスピード感のサプライズリリースでした。我々メディアの人間も何も知らなかったので、驚いた次第です。
「なのでPOPはざっくりとした印象で大味になってしまった悔しみがあるのですが、今回は楽しそうなご様子が伝わってくる、リラックスした空気の中で作られたアルバムだという印象を受けました」
――椎名さんご自身も、オフィシャルライナーノーツで「『放生会』の大きな違いの一つは、私が比較的脱力しているということ」とおっしゃっていました。
「タイトなスケジュールの中でも、CDのパッケージは相変わらずのボリュームとサイズ感で大喜びです。OTKはこのサイズで自宅のCD棚が揃っておりますので(笑)。
CDの中の装丁はご覧になりましたでしょうか? 非常に豪華で、おめでたいお祭り感がパッケージから伝わってきますし、今回もテトリスがお好きな椎名さんらしく、歌詞は文字の羅列が美しく、さらに滾るメンバーのクレジットなど、ぜひ隅々までご堪能いただきたいです。みなさま、在庫があるうちにぜひ初回盤をご購入ください! ジャケットからして椎名さんが楽しく仕事をまっとうされたことがひしと伝わってきます。いちファンの私にも楽しい気持ちが伝播して、〈やった~~!!〉という気持ちになるくらいには(笑)」

OTKも追いつくのに必死
――アルバムタイトル『放生会(ほうじょうや)』は、椎名さんの地元・博多の有名なお祭りの名前なんですよね。元々は〈放生会(ほうじょうえ)〉という、捕獲した魚や鳥獣を野に放して殺生を戒める、インド起源の仏教的な宗教儀式なのだそうですが。
「博多の放生会は椎名さんも親しみを持っていらっしゃる地元のお祭りだそうですが、数年前に行こうとして諦めたとおっしゃっていました。人が多すぎて入れなかったそうです」
――さらに今回、情報解禁された5月27日に7曲が先行配信され、28日に6曲のミュージックビデオが公開される、という突然の供給過多な状況もすごかったですね。
「OTKは特別な訓練を受けていて、供給過多と放置による〈飴と鞭〉のプレイに慣れておりますが、今回の供給過多具合にはてんてこまいで大騒ぎでした。感情が追いつかないです」
――MVには、宇多田ヒカルさんを除く豪華なゲスト〈7人の歌姫〉も超強力な演奏メンバーも出演されていましたね。
「私のお気に入りは、1曲目の“ちりぬるを”と3曲目の“生者の行進”です。もちろん、全曲素晴らしいのですが! 今回は複数の曲が先行で一気に出て、そのすぐあとにアルバムがリリースされたので、OTKもまだ追いついていないというか、受け止めて解釈するのに必死で大変でした(笑)」
――5月27、28、29日は怒涛の3日間でしたね。新宿店では店頭販売もやったんですよね?
「天候の関係で1日だけ叶いませんでしたが、発売日の水曜日は天気が幸いし、Flags(タワーレコード新宿店が入っている商業施設)の1階での販売は大盛況でした。大々的に立てた看板をはじめ、今回のビジュアルのおめでたい色が街行く方々の目を引いていましたね」
【#椎名林檎】
— タワーレコード新宿店 (@TOWER_Shinjuku) May 29, 2024
ニューアルバム『#放生会』
本日発売日を迎えました。
快晴につき、本日12:00〜20:00
Flags 1Fエントランスにて
店頭DAYを実施いたします。
ショッパー、特典シールともにお渡しいたします。
9Fの特設会場もぜひ。
ハレの日。是非お運びくださいませ。 pic.twitter.com/PYruuwkzMz

――ところで吉野さんのそのピンクのネイル、『放生会』仕様ですか?
「そうです(笑)。しばらくはプロモーションに勤しんでおりましたので、今週のお休みでようやく『放生会』仕様にスイッチできました」
ポップだけどヤバくて恐ろしいアルバム
――『放生会』は、前作『三毒史』と明らかに対照的な作りになっていますよね。女性シンガーとのデュエット曲を奇数曲に置いた今作、男性シンガーとのデュエット曲を偶数曲に配置した前作、というように。音楽的にも内容的にも少々シリアスでヘビーに感じた前作に対して、新作はポップで明るい点も対照的です。
「どの曲もキャッチーで聴きやすく、構造自体がわかりやすいものではあるのですが、だからこそ歌詞をしっかり読み込んでいただくと、相変わらずプロとしての〈仕事〉が浮き彫りになる作品だなと。
椎名さんって、一般的にはクールな印象をお持ちの方も多いかと思うのですが、OTK目線からすると、ご本人はおふざけが好きだったり、かわいくてお茶目な一面もある方なんです。それが、今作で世に知れ渡ってしまった! どうしよう! でも嬉しいなと。
“余裕の凱旋”のMVでDaokoさんとアラレちゃんっぽい格好をされているのは、本当にかわいかったですよね……。歌詞に出てくるんですけど、かねてより椎名さんは〈800歳の妖怪〉だと噂されているんですよ(笑)。それをネタにして、ファンクラブのサイトに〈800歳の妖怪と呼ばれていますが……〉という文章を載せたりしてて。それをついに歌詞にして、全国公開しちゃったんだ! かわいい!!と思いました(笑)」
――Daokoさんとの“余裕の凱旋”、すごく好きです。かわらしい曲ですよね。それこそ、いちばん脱力しているというか。
「とはいえ、さっきも言ったように、ポップに仕上がっているんですけど、歌詞をきちんと読むと問題提起がしっかりなされているんです。逆に前作の方が、曲調と歌詞が合致していたこともあり、メッセージ的にはわかりやすかったもしれません。
POPを書き終えたあと、〈椎名さん、もしかして今回かなりヤバいものを作られた!?〉と気づいて(笑)。椎名さんが大好きなアーティストを呼ばれたコラボは賑やかだし、楽しい部分が取り沙汰されプロモーションされていますけど、私は前作より今作の方が恐ろしいな……という印象です。改めて椎名さんの〈仕事〉が顕著に表れた作品になりましたね」

人生に必ず訪れる別れの先で、お守りになってくれる曲
――アルバムの宣伝文句には〈お弔いとお祭りとお祝いと〉とありますし、冒頭の “ちりぬるを”からして亡くなった人や動物への思いが込められていますもんね。お酒が頻出するのも、不謹慎や不道徳の象徴だとおっしゃっています。
「現代の我々の中に、お祭りに真剣に携わっている方は少ないと思うのですが、花火や露店のような華やかなものの背景にも歴史が相応にあるわけじゃないですか。なのでこのアルバムは、現代的な視点から見たお祭りそのものだと思って。パッと聴きは楽しくおもしろいのですが、その背後に確固たるテーマがちゃんとあることも提示されているなと」
――日本のお祭りって神様や仏様や祖先を祀る〈ハレ〉の行事ですし、政治の起源にも関係しますからね。
「ジャケットやパッケージの様々な場所に椎名さんの愛猫ユングが散りばめられているのですが、“ちりぬるを”にはユングを送り出す意味合いもあると思っています。MVでは喪服も着ていらっしゃいますし。
POPをいざ書こうと思ってこの曲を聴いたら、信じられないほど号泣してしまって、ティッシュをこのくらい(山のように)べしょべしょにしてしまって(笑)」

――重い歌詞でもあるから中嶋イッキュウさんと歌うことで中和させた面もある、というような説明もされていましたね。
「身近な人や生き物が亡くなる別れの経験って人生で必ずあることですが、亡くなった本人に対して何かを言える機会はなくなってしまうわけで、思いを言葉にすることもなくなるんですよね。その行き場のない言葉を“ちりぬるを”という曲で具現化されてしまったので、大泣きですよ(笑)。
〈あのことを言わなかった〉〈ああしておけばよかった〉と後悔しても、相手が生きていれば伝えられる。でも、亡くなった相手にはできない。死んでしまった人に恨み言は言えない。置いていかれた我々がこの先、生きていくにあたってお守りになる曲、必ずある別れが訪れるたびに思い出すことになる曲だと思います」
――なるほど。
「椎名さんの曲って、〈あたかも自分のことを歌っているかのように錯覚する〉とよく言われますが、まさにそういう曲ですね。私のことを歌っているのではないかと錯覚してしまう、自分の体験に引き寄せてしまう曲でした。
今、歌詞を読んでもしんどくて、〈うっ……〉となります。私にとってはまだ、ニコニコと笑って話せる曲ではないです」

まだ新しいものを作れちゃうんだ、ずるい!
――AIさんとの“生者の行進”は、どういうところがお気に入りなんですか?
「椎名さんの曲って、それこそ“ちりぬるを”のような、聴き込むことで表現されている意味をじわじわ感じられるものが多くて、瞬発性・即効性のあるものは少ないんです。でも “生者の行進”は、終始エネルギーに満ちていて命が燃えていることを直に感じられる、即効性がある曲だと思って。生きるエネルギーをこれほど全面に出して主張している曲はあまりなかったので、〈椎名林檎、まだ新しいものを作れちゃうんだ、ずるいな!〉って思いました(笑)。椎名さんの曲は〈お耳の恋人〉とも呼ばれていますが、こんな恋の落ち方もあるのね!と。
椎名さんの音楽を初めて聴く方にどの曲がいいかを聞かれたら、これをおすすめしちゃうかも。入門の曲を選ぶにしても、〈歌詞もしっかり読んでほしくて……〉と色んなお願いをしなきゃいけないのがファンとして心苦しかったんです(笑)。でも、これを聴いておけば大丈夫!って曲なんですよ。この曲で、ぜひ一発で食らってほしいなって」
――AIさんの歌もあいまってパワフルな曲ですもんね。
「椎名さんもAIさんも子どもがいらっしゃる親御さんなので、下の世代に向けて歌っている曲に感じます。(東京)事変の“緑酒”もそうでしたけど。MVをご覧になるとおわかりになるとおり、どこか『ライオン・キング』っぽいんですよ。これから芽生える命やこの先を生きていく人への応援歌ですし、下の世代へ大切に伝えていきたい曲です。ファンのみなさまには子育てをなさっている方もいらっしゃるでしょうし、もし今10代や20代の方で曲の意味がいまいちピンとこなくても、大人になってから染みる曲になると思っています。もし私に子どもが生まれてこの曲を聴いたら、と想像すると胸が熱くなりますね」
女の子の人生のテーマソングにまた一曲、追加されました!
――そしてPerfume・のっちさんとの“初KO勝ち”は、配信された直後から非常に話題になりました。
「みなさま、加工されていないのっちさんの歌声をお聴きになったことはあったでしょうか……(笑)? 私は無加工ののっちさんの歌声を存じ上げなかったので、美しくて力強いハイクオリティなお声にびっくりして、まずはそこに圧倒されました。
私はPerfumeさんについて詳しくないので、〈かわいらしいイメージのあるのっちさんが他人にガンを飛ばすなんて〉と思っていたんですけど、この曲では、それはもうめちゃくちゃに喧嘩なさっていて最高です。MVを見て、〈のっちさんのファンに叱られはしないでしょうか……〉と不安だったんですけど、肯定的に捉えてくださっている方が多くて、椎名林檎OTKとして安心しました(笑)。
のっちさんが椎名さんのことをお好きだという件ですが、椎名さんのグッズをよく身につけていらっしゃったんですよ。それを目視確認し、OTKと心得ておりましたので、ついに実現した今回のコラボはうれしくてありがたいですね」
――歌声や節回しも椎名さんにばっちりと寄せていて、衝撃的でした。
「そうなんです。たびたび言及される椎名さんの名言に〈殿方は黙ってて!〉というものがあって、“初KO勝ち”はまさにそのシリーズの一つですね。殿方には本当に申し訳ないんですけど(笑)。
店頭に置いている全曲紹介にも書きましたが、〈はい、我々女の子の人生のテーマソングプレイリストにまた一曲、追加されました!〉という曲です。ドアを開ける時や電車のドアが開いた瞬間にイヤホンでこの曲を聴いてキメの音をハメながら〈私、今、主人公です!〉と出て行きたくなっちゃう、強い女になれる曲ですね」

殿方に女の子の現実を突きつけてしまって申し訳ない
――「殿方は黙ってて!」と同じ「関ジャム 完全燃SHOW」(現「EIGHT-JAM」)でのインタビューでの発言で、繰り返しバズる椎名さんの名言としては、「女の子たちの人生のサントラ」というのもありますよね。『放生会』は、それをいちばん体現した作品なのではと思ったんです。
「まさに、みなさまのサントラにノミネートが確定すること請け合いです。
ラジオなどでもおっしゃっていましたが、今作に参加されている方々は椎名さんが昔から一緒にやりたくてしかたがなかったお相手で、虎視眈々と狙っていただけあって、完成度がものすごいんです。OTKとしても、〈尊い!〉〈よかったね~!〉とニコニコしちゃいます(笑)」
――女性ゲストで固めたのは『三毒史』との対比でもあるのですが、女性をエンパワーするフェミニスト的な姿勢も感じました。
「これはもう、女の強さですね。奮い立たせてくれます。
もし万が一、女性に変な理想を抱かれている殿方がいらっしゃったら、ぜひこのアルバムを聴いてください。女はめちゃくちゃ食べるし、五月蠅え!と思っている時もあるし、落ち込む時もありますが、ちょっとしたことで潰されたりなんてしませんから!という姿勢が表現されています。
言い方は悪いですけど、〈で、何か?〉〈あん? 来いよ〉〈なめんなよ〉と言ってくださっているアルバムですので、私は女でよかったなと思います。椎名さんの新作が出るたびにまた一つ幸せになれて、生きていけるんです」
――女性をステレオタイプに理想化せず、その多面性を描いたアルバムだと。
「殿方に現実を突きつけてしまって申し訳ない気持ちはありますが、そのとおりです!とOTKは思っています(笑)。
我々女はかわいいし、強いし、でもぼさっとしている部分もあるし、すごくねちっこくなってしまう部分もあるし……。美しくて強くもあり、小さくて惨めな瞬間もあり。〈女って実は強いんだぞ〉で終わってしまう曲は多いのですが、椎名さんの音楽はちがうんですよね。“ちりぬるを”や“私は猫の目”など、粘度が高くて、ねばっとしてドロッとした、女のうらめしい部分を描いた曲をアルバムの序盤に入れてくれたのがうれしいですね」
椎名林檎が仕事してますよ?
――後半はいかがですか?
「新しい学校のリーダーズとの“ドラ1独走”に関しては、〈これ、これこそが作詞作曲・椎名林檎の仕事なんだよ~~!! ありがとう~~~!!!〉と思っています(笑)。新しい学校のリーダーズが歌っている曲だというのは誰が聴いてもわかりますが、そのように曲を書いて構成したのが椎名林檎であるという部分が、特に聴いていただきたいポイントです。〈みなさま、椎名林檎が仕事してますよ?〉と(笑)。
こんなにギラついた曲を椎名さんのソロ名義で出すのはこの先なさそうだと思っているんですけど、大人の椎名さんと若い新しい学校のみなさまとのコラボだからこそ実現した曲だと思います。〈こんなに水分量が多い曲、かつてあったかしら?〉とも思いましたね。汗とか涙とか、そういう初期衝動をひしと感じますから。アルバムの前半とはまた別の湿度の高さを感じますね。新しい学校が青春日本代表として表現してくださっているので、滾るなと。
歌われているのはSUZUKAさんだけですが、MVでは4人のパフォーマンスがしっかり立っているので、ぜひMVも見てほしいです。椎名さんがイチローの真似をしているところは、“スーパースター”というイチローさんに宛てた事変の曲があるので、OTKは沸いています(笑)。ギターを持ったSUZUKAさんの美しいお姿にも注目です。特に御御足、つま先あたりまでのライン……!」
――一連のMVは、かなりコンセプチュアルな作りですよね。
「MVについて話し出すと長くなってしまいますが(笑)、〈東京都渋谷区南平台の角の整形地二百坪〉(東京事変“一服”の歌詞)にキャバレー〈紅海月〉を開いたらこのような感じになるっていうことは、我々OTKはもう想定できていましたから、あとは実際にお店を開いていただくだけなんですよね。いつでも伺いますから! 貯金は全部払えます!という思いです(笑)。今回、お店の構想をリアルに感じてしまったので、欲しがりすぎてしまうんです」
――アルバムのリリースツアーの演出にも関係してきそうですね。
「〈不惑〉(〈(生)林檎博’18 -不惑の余裕-〉)にもゲストのみなさまがお越しになっていましたからね。きっと今回もどなたか、お呼びになるんじゃないでしょうか? 楽しみですね。
OTKのみなさまは、どちらの公演に行かれるのでしょうか? 私は、ひさしぶりにCDをたくさん買いました。CDにはツアーに応募できるシリアルナンバーが封入されておりまして、申し込み期限が7月16日なので、コラボしたアーティストのファンの方々もぜひご応募いただき、足をお運びいただいて、ともに盛り上がりたいです。CDは、各々の関係各所に布教用としてご利用いただくもよしです。椎名さんのライブはほかでは見られないエンターテインメントだと思いますし、ライブで聴いてこその曲もたくさんあるので!」
――今作は、これも前作との対比で、椎名さんの音楽を聴いて影響を受けてきた下の世代とのコラボが多いのも特徴ですよね。AdoさんやKing Gnuの常田大希さんなど、椎名さんから影響を受けたアーティストが今、第一線で活躍している状況もありますが。
「〈椎名さん以降に出てきたアーティストは、椎名さんのことを意識せざるをえない〉とよく言われますが、その言説に対して椎名さんが自らやってやったぞ!という面が今作にはありますよね」

私のために編曲してくださったんですか!?
――あと、既発曲もアルバムバージョンに変わっています。特に“私は猫の目”なんて、まったく別の曲に生まれ変わっています。
「個人的に思っていた〈そうあってくれたらいいのに〉が実現していて、〈私のために編曲してくださったんですか!?〉と思うほどうれしかったです(笑)。歌詞が江戸弁ですし、これを歌謡曲風にアレンジしたらどうなるかしら?と勝手に考えていたら、本当にそうなった!と思って。
昭和の歌番組は、イントロに〈それでは聴いてください〉という曲紹介が入るじゃないですか。あれを椎名さんの曲でやりたいとずっと思っていたので、そのうち台詞を考えて曲紹介を入れる遊びを家で一人でやると思います(笑)。〈それではお聴きください。椎名林檎で、“私は猫の目”〉って。私、そういうことを家で一人で勝手にやっているんですよ。気持ち悪いですよね(笑)」
――ははは……(苦笑)。
「それと今回も各曲に英題がつけられておりますが、歌詞を読み解く上でも、アルバム全体を紐解いていく過程でも重要な要素なので、ぜひとも注目してください。“私は猫の目”の題がシングルとちがうじゃん!と気づきまして」
――シングル版はフランス語で“je suis libre”、アルバムでは“i’m free”となっているんですね。
「英題にすることで、アルバムの中でのシンメトリーが保たれているんです。細かいお仕事までありがてぇ……。
あと“公然の秘密”は石若(駿)さんのドラムで録り直されていますが、手数のものすごい多さにばかり気がいっちゃうように仕組まれているように感じて、まんまと〈石若丸~~!!〉と拳を握ってしまいますね。今作はドラムが石若丸、ベースが鳥越(啓介)さんなので、お二方への愛が止まらないです」
希望にあふれた若者たちの未来を損ねてしまわないように
――4月に発表されたシングル “人間として”は、社会批評的な歌詞がけっこうヘビーだと思ったんですよ。
「たまらない曲でした。最近、SNSでは〈うっ……〉となるようなことが多いじゃないですか。弱いものいじめとか、お互いの意見のぶつけあいとか。自分の正義が互いあるからヒートアップして、戦争のように精神を削っていくような出来事が増えてきて。
そういう時代だけど、考え方を変えればどちらも共存していけるかもよ、あなたはどうしますか?という問いかけや提案をなさっていて。今まで椎名さんの曲の歌詞を読んで、〈正しくあろう〉と思わせてもらってきましたけど、〈その正しさは、果たして他人にとっても正しさなのか?〉と、はっとさせられた人は多いんじゃないでしょうか。
それこそ仕事でも、お互いに〈自分が正しい〉と思い込んで衝突する瞬間って、やっぱり大人になるとどうしても出てくるじゃないですか。私もたまにやっちゃうんですけど、それでのちのち反省したり。自分の価値観一辺倒ではいけない、見直さないといけない部分があると椎名さんのおかげで思わせてもらえたので、生きる道筋を得たOTKは勝ちです(笑)」
――ほかに既発曲では、宇多田ヒカルさんとの“浪漫と算盤TYO album ver.”がアルバムの中央に置かれています。
「突出した盛り上がりがない曲構成にあえてされていて、椎名さんと宇多田さんが淡々と言葉を紡がれる様の説得力がすごいですよね。
お祭り騒ぎなアルバムの中で特に歌詞が入ってきやすい曲なので、〈みんな、気持ちを落ち着かせて、一回この曲を聴いてくれ!〉と思います」
――いち労働者として響く歌詞ですよね。
「働くこともそうですし、年を重ねることについての人生観も感じますね。やっぱり人間、大人になると、どうしてもずるくなっていくじゃないですか」
――〈算盤〉の方ばかりを優先しがちだと。
「そういう、ずる賢さを今一度見直させてもらえる曲というか。私もここで働き続ける中で、一回り下の世代の子もスタッフとしてたくさん入ってくる年齢になりました。真面目に一生懸命働いている若い子たちを見ていて、この子たちが損しないように我々も努力しないといけないなと、己のあり方を見直させてもらえる曲です」
――よくわかります。最近Mikikiにも若いスタッフが入ったので、そのピュアさやフレッシュさを横で見ていると、自分がくたびれた中年のように急に感じてしまって(笑)。若い〈浪漫〉を忘れてはいけないなと。
「希望にあふれていて、〈あれもやりたい! これもやりたい!〉と目をキラキラ輝かせている子たちの未来を損ねてしまわないように、と思いますよね。もちろん思いどおりにいくことばかりじゃないし、現実を受け入れないといけない瞬間はあるんですけど、大人の小ずるさがない若者たちがそのまま生きられるにはどうしたらいいかしら?と、この曲には考えさせられます……(鼻を啜る)」
――……泣いてます?
「……いやいや!
椎名さんの音楽は、本当に私の人生のサントラです。私のサントラ、なかなかのボリュームになりそうなので、何枚組にしましょうね?」

こんな熱い椎名林檎、なかなかないよ!
――スペイン語で歌われる“茫然も自失”はいかがですか?
「椎名さんは(ブラジルの)イヴァン・リンスやラテン音楽もお好きなので、納得感のあるタンゴ調の曲ですね。
日本語詞じゃないのでBGM的に聴くこともできるんですけど、歌詞が実はかなり直接的で情熱的な内容なんです。さっき言ったように、椎名さんの曲って間接的なものが多くて、時間をかけて噛み砕いていくと、じわじわ効いてくる曲が多いんですけど、“茫然も自失”はちがう。ぜひ歌詞を和訳アプリとかで訳してみてください。わかりやすく〈愛です!〉って曲はこれまでなかったので、〈こんなに熱い椎名林檎、なかなかないよ!〉と思わせてもらえる貴重な曲ですね。
この曲が使われている〈SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao〉のCMにも部分的に和訳が入っておりますので、ぜひご覧ください。お酒を煽りながら酔っ払った状態で聴いていただくもよし、冷静に分析したいOTKはシラフの状態でしっかり和訳アプリを使って暗がりで聴いていただくもよし。二度おいしい曲です」
――そしてアルバムは、チャラン・ポ・ランタンのももさんとの“ほぼ水の泡”で締め括られます。
「これはもう、椎名さんのプライベートって感じの曲ですね。もともと仲がいいお二方が日常的にお話しされていることが、そのまま描かれているようで。椎名さんはそんなにお飲みにならないそうなんですが、ももさんはお酒にお強いらしく、飲みながらムービーを撮られるようなんです。それを歌詞にしちゃったそうで、もう愛おしくてしょうがないです。
銅鑼の音が1曲目の冒頭にも登場し、作品の始まりを告げていますが、最後に〈これでお開きになりますよ〉とドーンと鳴って、潔くパキッと終わるんですよね。終わりが近づいてくる時に我々が抱く物寂しさを気にも留めず、呆気なく終わってしまうお祭りのリアルさで、夢から醒めるような終わり方です。
寂しさがない終わり方で、この曲自体もお祭りの終盤、へべれけになっている大人たちのごとく、ある意味ふざけていて不謹慎な曲ですよね。椎名さん、こんなこともしてくれるようになったんだなって。OTKは存じ上げていましたけど、〈椎名林檎様〉って感じじゃない、みなさまにお伝えしたい本来の姿の〈りんりん〉をついに知らしめることができたぞ! ね? より一層可愛くて愛おしいでしょう?という満足感がすごくて」

CDを買ってツアーに応募しよう!
――椎名さんのディスコグラフィの中でも、かなり特殊なアルバムですよね。
「ほんとに。〈落ち込んだとき再生して良いすか〉。このアルバムを聴いて、ガハハ!と笑って、お酒をカッと飲んで寝られたら、どれだけ幸せなことかと。
人生、ふざける瞬間と、そこからパリッと切り替える瞬間がありますけど、そんな人間のありさまが描かれている気がして。このアルバムを聴いて元気を出して、パッと切り替えて真顔に戻って仕事をする……というように」
――吉野さんのお話を聞けたおかげで、アルバムの理解がめちゃくちゃ深まりました。
「恐ろしいアルバムが出来てしまいましたね。初見のみなさまを沼に引きずり込むには最適なアルバムですが、その視点では『三毒史』よりも深い沼だという気がします。
新宿店には毎回書かせていただいている全曲の感想とOTK的なおすすめポイントを置いておりますので、お店にいらした方は、よろしければそれを読んでいただきつつ、〈自分はこう思う〉という感想もお聞かせいただけたらと思います。発信することを仕事にさせていただいてる反面、一方通行になりがちなので、みなさまの感想も聞かせていただけると中の人は喜びます。
椎名さんは毎回、ツアーの時期や土地の特産品にもこだわっていらっしゃるので、それぞれお好きな会場を選んでいただくのがよいと思います」
――福井公演は越前かにの解禁日に合わせた、というエピソードが衝撃的でした(笑)。
「ご本人がそう宣伝されている分、福井公演は激戦になると思います(笑)。CD封入のシリアルからも、ぜひご応募くださいね。きっと同じ日程でご一緒させていただく方もいらっしゃるかと思います。このアルバムを胸に、ぜひ楽しみましょう!」
RELEASE INFORMATION
■初回限定盤
リリース日: 2024年5月29日(水)
品番:UPCH-29472
価格:3,960円(税込)
・ケース付きハードカバーブック仕様
・封入特典:ワイワイシリアルナンバー(応募締切:2024年7月16日23:59受付有効)
■通常盤
リリース日: 2024年5月29日(水)
品番:UPCH-20671
価格:3,300円(税込)
・初回プレス封入特典:ワイワイシリアルナンバー(応募締切:2024年7月16日23:59受付有効)
特典:シール
※台紙サイズ:12 × 12cm
※特典は先着となり、なくなり次第終了となります。
※一部特典取扱いのない店舗もございますのでご予約・ご購入の際に必ずご自身でご確認ください。
配信リンク:https://lnk.to/RS_houjoya/
TRACKLIST
1. ちりぬるを 椎名林檎と中嶋イッキュウ(tricot、ジェニーハイ)
2. 私は猫の目 album ver. 椎名林檎
3. 生者の行進 椎名林檎とAI
4. 人間として 椎名林檎
5. 初KO勝ち 椎名林檎とのっち(Perfume)
6. 公然の秘密 album ver. 椎名林檎
7. 浪漫と算盤 TYO album ver. 椎名林檎と宇多田ヒカル
8. 茫然も自失 椎名林檎
9. ドラ1独走 椎名林檎と新しい学校のリーダーズ
10. さらば純情 album ver. 椎名林檎
11. 余裕の凱旋 椎名林檎とDaoko
12. いとをかし album ver. 椎名林檎
13. ほぼ水の泡 椎名林檎ともも(チャラン・ポ・ランタン)
■初回生産限定盤(アナログ盤)
リリース日:2024年10月2日(水)
品番:UPJH-20064/5
価格:4,180円(税込)
・重量盤(180g × 2枚組)
TRACKLIST
Side A
ちりぬるを 私は猫の目 生者の行進
Side B
人間として 初KO勝ち 公然の秘密
Side C
浪漫と算盤 茫然も自失 ドラ1独走
Side D
さらば純情 余裕の凱旋 いとをかし ほぼ水の泡
LIVE INFORMATION
林檎博’24-景気の回復-
2024年10月5日(土)青森県営スケート場・盛運輸アリーナ
開場/開演:17:00/18:00
2024年10月20日(日)新潟朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
開場/開演:17:00/18:00
2024年10月29日(火)大阪城ホール
開場/開演:18:00/19:00
2024年10月30日(水)大阪城ホール
開場/開演:18:00/19:00
2024年11月7日(木)静岡エコパアリーナ
開場/開演:18:00/19:00
2024年11月21日(木)さいたまスーパーアリーナ
開場/開演:18:00/19:00
2024年11月23日(土)さいたまスーパーアリーナ
開場/開演:17:00/18:00
2024年11月24日(日)さいたまスーパーアリーナ
開場/開演:17:00/18:00
2024年11月30日(土)福井 サンドーム
開場/開演:17:00/18:00
2024年12月15日(日)マリンメッセ福岡A館
開場/開演:17:00/18:00
■『放生会』購入者限定でチケット先行受付実施
本作購入者限定で〈林檎博’24 ―景気の回復―〉ツアーのチケット先行受付を実施。CDに封入されているワイワイシリアルナンバーで専用ページよりお申込みいただけます。受付期間は2024年7月8日(月)18:00~2024年7月16日(火)23:59まで。期間厳守でぜひご参加ください。なおワイワイシリアルナンバー並びに購入者限定受付ページのリンクはアルバム『放生会』に封入されているチラシに明記されています。
※チケット先行受付は抽選により当落が決定いたします。ご了承ください。
〈林檎博’24 ―景気の回復―〉の詳細はオフィシャルサイト〈SR猫柳本線〉または〈SR猫柳本線ポケット〉の特設ページをご覧ください。
SR猫柳本線 特設ページ:https://www.kronekodow.com/gaiko/ringo_expo2024/
SR猫柳本線ポケット 特設ページ:https://sp.kronekodow.com/goraku/ringo_expo2024/ ※スマートフォンのみ
INFORMATION
椎名林檎カタログキャンペーン実施中
椎名林檎のアルバム、映像、アナログ盤をお買上げの方に先着でクリアファイル[A4サイズ]を差し上げます。
先着特典:クリアファイル[A4サイズ]
※一部特典取扱いのない店舗もございますので、ご予約・ご購入の際に必ずご自身でご確認ください。
※特典がなくなり次第、キャンペーン終了とさせていただきます。
カタログ・キャンペーン実施店舗:タワーレコード(店舗/オンラインショップ) 全国 ほか
※実施店舗は追加となる場合がございます。
※諸事情により、一部実施していない店舗がございます。
※特典がなくなり次第、キャンペーン終了となります。
PROFILE: 椎名林檎
1978年11月25日生まれ 福岡市出身。1998年にシングル“幸福論”でデビュー。音楽家、演出家。バンド・東京事変を主宰。自らの発信と並行し、歌い手/踊り手/演じ手の表現や、舞台/映画/広告/番組などへの楽曲提供も精力的におこなっている。2009年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2016年、リオオリンピック・パラリンピック閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーに於いて演出/音楽監督を務め、国内外から高い評価を得た。2019年、オリジナルアルバム『三毒史』およびベストアルバム『ニュートンの林檎 ~初めてのベスト盤~』をリリース。2023年、初のリミックスアルバム『百薬の長』をリリース。2月24日~5月10日、全国ツアー〈椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常〉を開催(11都市/22公演)。5月24日、シングル“私は猫の目”をリリース。2024年4月17日、シングル“人間として”をリリース。
オフィシャルサイト(SR猫柳本線):https://www.kronekodow.com/
SR猫柳本線ポケット:https://sp.kronekodow.com/(スマートフォンオンリー)
特設サイト:https://sp.universal-music.co.jp/ringo/
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