Page 6 / 7 1ページ目から読む
本秀康

神アルバム『FIFTH DIMENSION』制作秘話

――個人的な話になりますが、僕は当時洋楽が好きで、日本の音楽は大滝詠一さんとかほんの一部しか聴いてなかったんです。それで、『FIFTH DIMENSION』が出た時に〈ジャニーズのアイドルのアルバムがこんな攻めたデザインということは、きっとアイドルポップとロックが良い塩梅でミックスされた音楽なんだろう〉と興味を持って買ったんです。聴いてみたら想像以上に攻めすぎで驚きましたが(笑)。

曾我「僕らはもともとビートルズだったり(ローリング・)ストーンズだったり、色々な洋楽を聴いて育ったからね。しかも、80年代はMTV全盛期でしょ? 海の向こうから入ってくる音楽が楽しくてしょうがなかった。でも、〈ヒューイ・ルイスのような音楽をやってみたい〉と思ってやってみても、出てくるものは全然違うものになる。洋楽の影響はあるけど、それを日本人の僕らが表現したら、ちょっとへんてこなものが生まれるんです。それがThe Good-Byeなのかなと思いますね」

――そのロックバンドとしての魅力に僕がようやく気づいたのが、先ほど言ったとおり『FIFTH DIMENSION』だったんです。お恥ずかしいことに、それまで気づけていなかったんですね。また個人的な話をしちゃいますけど……。

野村「いいよいいよ!」

――“僕色に染めて”を野外で演奏しているのをTVで観たんですね。その日は風が強くて、野村さんの長髪がなびいていて。

野村「もう髪が長かった頃だね」

――そのビジュアル込みで〈めちゃめちゃ良い曲だ!〉と思って。『FIFTH DIMENSION』ってドロドロのサイケ一辺倒というわけでもなくキャッチーな曲もあるんだなと、もっと注意深くアルバムを聴くきっかけになりました。

衛藤「本さんにとって神アルバムだったわけですね」

――ええ。本当に大好きで、もう何枚買っているかわかりません。

一同「(笑)」

The Good-Bye 『FIFTH DIMENSION』 ビクター(1986, 2004)

――『FIFTH DIMENSION』の頃からファン層が変わった実感はありました?

曾我「ライブではわからなかったけれども、他のバンドの方から〈『FIFTH DIMENSION』、良いアルバムですね〉と言われたのがすごくうれしくて、印象に残ってますね」

――『FIFTH DIMENSION』がサイケデリックアルバムになったきっかけは何なのでしょうか? 川原さんがこのタイミングでビートルズの『Revolver』のようなアルバムを作らせようと仕組んだのでは?と少し勘ぐっていたのですが……。

曾我「それはないね。ほんとに、たまたまそういう流れになったの」

野村「〈こういう作品を作れ〉なんて言われたことないからね」

曾我「まったくね。僕がデュークス・オブ・ストラトスフィア(XTCの変名バンド)のアルバムにハマってて、“THE VOID”のデモを8チャンネルのオープンリールで作ったのがきっかけかな。デモを川原さんに聴かせたらすごく褒めてくれて、寝ている奥さんを〈これ、聴いてみろ!〉って起こしたほどだった(笑)」

デュークス・オブ・ストラトスフィアの85年作『25 O’Clock』収録曲“The Mole From The Ministry”

野村「『FIFTH DIMENSION』の後に12インチ盤(86年のシングル『僕色に染めて/GOING DOWN』)を出したけど、あれはもっとめちゃくちゃだったね(笑)。別世界に行っちゃってるから」

曾我「“ANOTHER WORLD”だからね(笑)」

 

The Good-Byeはメドレーの名手?

――それとまたビートルズ的な話ですが、『ALL YOU NEED IS…グッバイに夢中!』のB面はメドレーで繋がっているじゃないですか。僕はThe Good-Byeというとメドレーのイメージがあって。

野村「3枚目でもうそんなことやってたんだね(笑)」

曾我「あれは川原さんのアイデアだったかもね」

川原「まだそれほど複雑な曲を書けなくて簡単な構成の短い曲が多かったら、アルバムで聴かせるんだったらメドレーにしたほうが効果的かなと思ったんです」

――ジョン・レノンの短い曲をなんとかしようとして、ポール・マッカートニーが『Abbey Road』でやったことと同じですね。

川原「『Special ThanX』の“タイムカプセル”も、短い曲の断片がたくさんあって、それを無理に一曲に仕上げる必要はないから繋げちゃおう、って作ったんだよね」

2019年作『Special ThanX』収録曲“タイムカプセル”

――『Album』のメドレー曲“THE DAY ILLUSION SUITE”は、ベスト盤の『OLDIES BUT Good-Buy! vol.II』(90年)には、野村さんのヘビメタパートが“祭り気分で TAKE A CHANCE”に差し替わったバージョンで入ってるじゃないですか。中間部が違うとメドレー全体のイメージが全然変わってくるんですよね。テイクは同じなので『Album』の再発盤のボーナストラックに入れるか悩んだんですが、メドレーの差し替えなんて斬新すぎるので思い切って入れちゃいました。

野村「“THE DAY ILLUSION SUITE”は良い曲だよね、すごく」

曾我「いいよね~!」

――衛藤さんの歌がまた良いんですよ。

衛藤「僕も好きです(笑)」

川原「4人それぞれの持ち味が出てるからね」

野村「この曲を渡されてさ、〈どう歌詞を書いたらいいんだ?〉って思ったよ(笑)」

川原「主人公は“祭り気分でTAKE A CHANCE”と一緒でしょ?」

――えっ! マジですか!?

野村「そう。会社の歌だからね」

――そっか、“THE DAY ILLUSION SUITE”のメドレー差し替えは歌詞面でも意味があったのか! 感動です!

野村「この頃はアイドルとしてTVに出ることもほとんどなくなってて、〈レコーディングだけしたいんだ!〉という気持ちになってたんだよね。ライブももういいかなって」

――そうだったんですか!?

野村「うん。とにかく〈アルバムを作りたい〉〈レコーディングをしたい〉という状態だったから、このまま事務所に所属しててもしょうがないんじゃないかって思って書いた詞なの。でも、考え直して〈♪だけど今の会社は一番〉と自分に言い聞かせてるんです」