1906年、パリを拠点として活躍したピアノのコルトー、ヴァイオリンのティボー、チェロのカザルス、という3名手が伝説のトリオを結成し1934年まで活動。録音された7曲は、不滅の名盤として聴き継がれている。本書はトリオの軌跡を豊富な史料とともに辿り、音楽面だけでなく批評、興行、戦争の影響なども詳述される。3人の名声が高まるにつれスケジュール調整が難しくなり、出演料も高騰。時間的制約からレパートリー開拓を断念せざるを得ず、出演料確保のため演奏会場も巨大化。こうしたことが芸術面に悪影響を与えトリオの活動停止に至ったとする論考は、これまで無かっただけにたいへん興味深く読んだ。