Photo by 操上和美

ベスト盤シリーズ4作目。魅惑の声でビートルズもユーミンもスタンダードも歌う。

 ケイコ・リーのベスト盤『Voices』は、2002年の大ヒット以降シリーズ化されて、『Voices IV』は4作目。『Voices』は、ライフワークですか?と聞くと、「ツアーでよくどの作品がオススメですか、と聞かれるので、1枚1枚説明するよりは、残してきた自分の音楽をより濃くわかっていただけるかなと思うから、時どきベスト盤を出すんですよ」と照れるように笑うが、さらにこう続けて話してくれた。

 「ベスト盤の制作は、原点回帰の機会だと思うんですね。アルバムは、全曲渾身の思いでレコーディングしていますが、それでも やりきれなかったことに向き合うことにもなるわけです、でも、忘れてはいけないことを忘れていたことに気付かせてもくれる。それがベスト盤制作の良さかな」

ケイコ・リー 『Voices IV』 ソニー(2022)

 この10年を振り返るなかで、長く組んでいるバンドのメンバー、野力奏一(ピアノ)、岡沢章(ベース)、渡嘉敷祐一(ドラムス)との「結束は、時間を積み重ねるなかで各々から生まれてきたと思います。その4人の愛情、思いやりが結集された1枚でもあります」と言う。

 全16曲の収録曲は、2010年以降の6作品から選ばれたが、この6タイトルのテーマが多彩なこと。ゲストも渡辺貞夫、玉置浩二、ラウル・ミドン、EXILE ATUSHIと豪華で、“海を見ていた午後”といったJ-POPもあるし、また、ベスト盤再登場の曲“Distance”や“Fly Me To The Moon”もある。

 「大本の選曲は私がしています。10年の歩みのなかで、みなさんに聴いてもらいたい曲が中心ですが、“Distance”など再度収録した曲は、サイン会でよく〈好き〉という声をいただく曲です。また、当時シンプルを目指して作曲したオリジナル楽曲“This Love Will Last”などは、今一度ファンのみなさんに認識してもらえたら、うれしいという思いで選んでいます」

 その深みのあるアルトヴォイスが高く評価されて、人気の理由でもあるが、「歌い始めた頃は、自分の声が大嫌いだった」そうだ。それも「反省、後悔と共に自分のことを褒める、いいなと素直に思える心を持つようになるなか、少しは嫌な気持ちが減ったかな」と。そして今、「劇的に成長する時期は過ぎて、年齢的にジャズ・シンガーとしての成熟期を迎えるわけで、今の心境としては早く70歳になりたい」と。『Voices IV』にはその成熟期に突入する前の確かな足跡である歌が詰まっている。

 


LIVE INFORMATION
発売記念ライヴ
2022年11月4日(金)東京・南青山 ブルーノート東京
■1st
開場/開演:17:00/18:00
■2nd
開場/開演:19:45/20:30
出演:ケイコ・リー(ヴォーカル)/野力奏一(ピアノ)/岡沢章(ベース)/渡嘉敷祐一(ドラムス)

2022年11月10日(木)沖縄・那覇 琉球新報ホール
開場/開演:17:30/19:00

2022年12月20日(火)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
開場/開演:18:15/19:00

2022年12月21日(水)~25日(日)九州ツアー予定
https://www.sonymusic.co.jp/artist/KeikoLee/info/544913