Photo:Akinori Ito

祝! レコード・デビュー30周年! 愛ある人たちと一緒にこの先の10年、20年も頑張っていきたい

 「ちょうど還暦を迎えたんですよ。30周年ということは人生の半分をケイコ・リーとして過ごしてきたわけで、とてもいい人生を送らせていただいたなって思いますよ」

 今や、日本を代表するジャズ・ヴォーカリストのケイコ・リーが、1995年にアルバム『イマジン』で颯爽とレコード・デビューしてから30年。ピアニストとしてキャリアを積んできた後にシンガーに転身し、3年ほど活動してからのデビューだった。当時は新人というにはすごく貫禄がある声だという印象が強かったのではないだろうか。

 「なんだか名前だけが先行しちゃったんですよね。でもその期待値に応えられるだけの実力が追いついていかなかったから、日々勉強していました。CDショップで大量のアルバムを買って、1日8時間以上は聴き続けるんです。音楽の語彙力を身に付けるのに必死。余裕に見えていたかもしれないですが、水面下では白鳥みたいに足をバタバタさせていました(笑)」

 それでも「とにかく楽しい30年だった」と言い切る彼女が、今回制作したのが『Keiko Lee Sings Super Standards』シリーズの第3弾である。このシリーズはジャズに限らず、世界中の名曲を歌うというコンセプトで、クイーンの“We Will Rock You”のカヴァーが大いに話題になった彼女にとっては、まさに真骨頂と言える企画だ。

ケイコ・リー 『Keiko Lee Sings Super Standards 3』 ソニー(2025)

 1930年代のミュージカル・ナンバーから、90年代のマイケル・ジャクソンに至るまで新旧の名曲がずらりと並んでいる。

 「皆さんに愛されている有名な楽曲をどんどん選んでいきました。エルヴィス・プレスリーの“Love Me Tender”なんて誰でも知っていますよね。“New York City Serenade”はニューヨークにあこがれていた頃に聴いた曲なので思い入れがあるんです」

 彼女の歌をサポートするのは、勝手知ったレギュラーメンバーの面々。ピアノの野力奏一、ベースの岡沢章、ドラムスの渡嘉敷祐一というピアノ・トリオを基本に、曲によってはパーカッションの岡部洋一、ギターの吉田智、ピアノ/キーボードの高橋佑成を変則的に組み合わせている。

 「もうこのメンバー以外には考えられませんでしたね。華やかなアルバムにしたかったので、曲によって編成も少しずつ変えているんですよ。“Bridges”ではギターとパーカッションだけだし、“Lush Life”は野力さんのピアノだけをバックに歌いました」

 たしかに曲調だけでなく楽器編成も多様なので、非常にヴァラエティに富んだアルバムという印象が強く、まるでベスト・アルバムのようだ。なかには高橋佑成のシンセサイザーを駆使したトラックに乗せて歌う幻想的な“Calling You”などもあり、サウンドの振り幅も楽しめる。

 「彼とはデュオで一緒にツアーを周ることもありますし、すごくガッツのあるピアノを弾くんです。彼の感性で作ったトラックで歌ってみるのも面白いんじゃないかと思って頑張ってもらいました」

 終盤のハイライトはなんといってもビートルズの“Hey Jude”だろう。ケイコ・リー自身がピアノを弾き、岡沢章とのデュエットをベースに、ミュージシャンだけでなくスタッフを巻き込んで大合唱となる様子は感動的だ。

 「あれはジョン・レノンの息子を励ますために作った歌ですが、今の時代にすごく合う一曲だと思うんです。ライヴでやれば世代や国籍に関係なくお客さんも一緒に歌えるじゃないですか。だからアレンジも必要ないというか、この曲の美しさを前面に出して演奏しました」

 カヴァーがメインの本作だが、1曲だけ彼女が書き下ろしたオリジナル曲“Light of Love”が収められているのもポイントだ。

 「無条件の愛をテーマに歌詞を依頼しました。〈愛に生きよう、人生は切り開いていくもの〉という内容なんです。音楽も最終的に行き着くところは愛なんだなと思います。共演者がいて、お客さんがいて、その間に愛情があるから成立します。だから、愛のある人たちと一緒にこの先の10年、20年も頑張っていきたいなと思っています」

 


ケイコ・リー(Keiko Lee)
1995年のデビュー作『イマジン』以来、ライヴ盤、ベスト盤を含む27枚のアルバムをはじめ、多くの作品をリリースしている。CM楽曲、TVドラマ主題歌などオリジナル作曲にも定評があり、多重録音のヴォーカル・アレンジも自ら手掛ける等、多方面にて多彩な才能を発揮している。実力・人気ともにNo. 1ジャズ・ ヴォーカリストとして国内外でその地位を確立している。2025年はメジャーデビュー30周年を迎える。

 


LIVE INFORMATION
KEIKO LEE “30th Anniversary Celebration” 〜Keiko Lee Sings Super Standards 3 Release Live〜

2025年11月19日(水)BLUE NOTE TOKYO
2025年12月14日(日)jazz inn LOVELY
2025年12月23日(月)CIB
2025年12月24日(水)BRICK BLOCK
2025年12月25日(木)New COMBO
2026年2月19日(木)Billboard Live OSAKA
and more...
※編成は11月19日 & 2月19日Band、12月14日Trio、12月23日、24日、25日Duo
https://keikolee.jp/