©Dennis Leupold

アットホームでフレンドリーな5人ならではの、初めてのクリスマス・アルバムが届いたよ!

 「僕らは30年近く前からクリスマス・アルバムを作りたいと思っていて、ついに実現したことにこのうえなく興奮している」と語るのはハウィー・D。つまりは29年前に結成された頃からの念願を叶えた作品が、バックストリート・ボーイズ(以下BSB)の『A Very Backstreet Christmas』ということになる。欧米におけるクリスマス/ホリデイ・アルバムというものは、ジャズでもソウルでもカントリーでもフィールドを問わず人気者の象徴としてリリースされてきたものだと思うが、それだけに長らくポップ・フィールドの最前線に立ち続けてきたBSBがまだ出していなかったのは意外にと言えば意外(揃って時代を作ったイン・シンクは99年に早々と『Home For Christmas』を残している)。だが、ここまでキャリアを重ねたからこその円熟味や包容力も踏まえて考えれば、すっかり大人になった5人が歌うクリスマス・ソングというのも非常にいいものだ。しかも、現在のBSBには年輪だけではない再盛期の風格が備わってきている。

BACKSTREET BOYS 『A Very Backstreet Christmas』 K-BAHN/BMG/ワーナー(2022)

 2019年初頭の『DNA』で19年ぶりに全米No.1の座にカムバックし、グラミー賞にもノミネートされた“Don’t Go Breaking My Heart”などがヒットして以降のBSBは、史上最高のボーイ・バンドという認められたポジションすらも越えてリブランディングに成功した。2019年に開始した大規模なアリーナ・ツアー〈The DNA World Tour〉は、途中パンデミックによる延期/休止期間を挟みつつ、2022年に再開されてからも精力的に世界各国を訪れており、現在も5人は世界のどこかで歌っている。そんな最中に届いた『A Very Backstreet Christmas』は、世界中のリスナーにとって文字通りのプレゼントになったことだろう。

 アルバムのプロデュースにあたったのは『A Very Backstreet Christmas』はバックストリート・ボーイズにとって初のクリスマス・アルバムで、“White Christmas”や“Silent Night”などのスタンダードはもちろん、ワム!の“Last Christmas”やダニー・ハサウェイの“This Christmas”、ダン・フォーゲルバーグの“Same Old Lang Syne”などポップ時代の定番たちもイキイキしたハーモニーで披露される。プロデュースの主軸を担うのはトミー・ブラウンとトラヴィス・セイルズらで、温かみのあるサウンドで主役の楽しげな歌声をシンプルに盛り上げている。アルバム終盤にはオリジナルのホリデイ・ソングが固められ、カントリー畑のゲイリー・ベイカーが書いたジャジーな“Christmas In New York”、さらにメンバーたちで共作したラヴリーな“Together”とパーティー気分のアップ“Happy Days”が収録されているのも嬉しいところだ。

 よく考えると5人体制に戻った2013年の『In A World Like This』からちょうど10年。5人のイニシャルを繋いで命名した自主レーベルのK-BAHNも同じ年月を重ねているわけで、その固い絆があるからこそ本作のアットホームでフレンドリーな雰囲気が生まれたのだろう。

 「僕らのお気に入りのクリスマス・クラシックにBSB流のアレンジを加えるのはとても楽しい経験で、みんなのホリデイ・シーズンの一部になるのが待ちきれないよ」(ハウィー)。 *轟ひろみ

左から、バックストリート・ボーイズの2019年作『DNA』(K-BAHN/RCA)、バックストリート・ボーイズが参加したスティーヴ・アオキの2020年作『Neon Future IV』(Ultra)、ブリトニー・スピアーズの2016年作の豪華盤『Glory(2020 Deluxe Edition)』(RCA)