2019年、矢沢永吉がタワーレコードの意見広告〈NO MUSIC, NO LIFE.〉ポスターに帰って来た。約7年ぶりのアルバム『いつか、その日が来る日まで...』のリリースに際し特別企画として、過去の〈NO MUSIC, NO LIFE.〉ポスターと2019年の〈NO MUSIC, NO LIFE.〉ポスターについて矢沢永吉ご本人に語っていただいた。

左から、2009年、2012年、2019年のNMNLポスター
 

――10年前と今回のポスターを比べてみて、矢沢さんの感想をお聞かせください。

「ただガツガツだけじゃなくて、もう1コ上のあたたかさ、柔らかさみたいなものをもちながら、ロックンロールをやりたいというのを10年くらい前から感じてたんだけど、2019年版はそれがはっきり顔に出てるね。余裕を楽しみながらロックンロールやり続けるみたいな、今年はもうそういう顔をしてるね」

――2009年のNMNLポスターからもう10年が経ちました。10年前と比べたいま、10年前よりも勝っているモノ、コトはなんでしょうか? 何か1つ挙げてください。

「もうご存知のように、確実に、やっぱり歳をとっていきます。歳を確実にとっていくということは、色んな意味でちょっとずつスローダウン、スローダウン、スローダウンしてくるよね。そのスローダウンが妙に、あたたかかったり、うれしかったり、そういうものを感じながら〈Still ロックンロール〉、〈Still 矢沢〉をやり続ける〈渋さ〉かな。このへんの〈渋さ〉を矢沢本人がものすごく感じながら、たぶんライヴやるんだろうね。また街から街へって、そんな感じ」

――2012年のNMNLポスター撮影のメイキング・インタヴューで語った〈現役〉へのこだわりが、70歳を迎える2019年の今回のNMNLメッセージに色強く反映されていますが、この2012年から2019年の間に矢沢さん自身が感じた変化はありましたか?

「いろいろありましたやっぱり。〈もう音楽嫌いだな〉という時もあった。〈もう音楽、俺好きじゃないな〉という時もあったり、いろいろしながら、〈あーやっぱり音楽しかないんだな〉というところにまた戻ったり、〈これが俺の職業なんだな〉ってことを強く思ったり。そうやって右行ったり左行ったりしながらも、これが〈俺の道〉なんだなっていう、そんな感じかな。どう?」

――令和元年初日に〈70歳も”STILL ROCK SINGER”宣言〉が発表されました。またNMNLのメッセージでも〈Still 現役〉という言葉が出てきたなか、『いつか、その日が来る日まで…』で〈現役〉を感じられるポイントはありますか?

矢沢永吉 いつか、その日が来る日まで… ガルル・レコード(2019)

「今回『いつか、その日が来る日まで…』っていう7年ぶりにアルバムを作ったわけだけど、このアルバムがもの凄いキャッチーでね。まぁよくぞ7年振りで、これだけキャッチーなアレンジとキャッチーなメロディ作れたなって。だからこのアルバムにそのうれしさと、〈こうやってずっとまだまだやり続けられるんだな〉みたいなことをはっきり表せたんじゃないかと思うんだけどね」

――NMNLポスターは、〈アーティスト〉にとっての〈音楽(MUSIC)と世の中(LIFE)の接点について語ってもらう〉ものとなりますが、視線を変えて『いつか、その日が来る日まで…』は、どのような音楽(MUSIC)でどのように世の中(LIFE)に届いてほしいか、コメントをお願い致します。

「いつくらいからかな、もう20年、15年くらい前なのか、10年くらい前なのか、音楽がチープになってきたよね。音楽自体がチープではなくて、音楽の扱われ方がものすごく軽くなってきたというか、インターネットの発達、携帯電話の発達、いわゆるミュージック以外の発達がものすごく進んだこともあるし、また音楽が街中に氾濫しているってことで価値がだんだん下がっていったんだね。街中で聞こえる音楽も、〈価値がなくなった〉と言われてもしょうがないくらい〈軽い音楽〉ばっかりになっちゃったわけだ。だから、だいたい似てるじゃないどれも。だから俺は〈これはまずいな〉と。〈音楽って軽いばっかりが音楽じゃないんだ〉って。〈ビートルズを聴いて泣いて、俺、音楽家になろうと思ったんだから。音楽って人を泣かせる力もあるし、しびれさせる力なんて満載にあるんだよ〉と。だから、〈おい! わかった! ちょっといまの世の中には、ちょっと出せていない、音楽は渋いんだぞというアルバム作ってやろう〉というのが『いつか、その日が来る日まで…』のコンセプトだから。だからものすごいファンキーだし、キャッチーだし、なんか、ウルッとくるようなラインもある。だから〈本物の大人のロックンロール&ロマンス〉っていうのをサブタイトルにつけたのはそういう意味だよね」

――そういった意味の〈渋み〉ってことですね。

「そういうこと。そういう音楽はなきゃいけない、また、〈おいおいおいおい、誰かがやらなきゃまずいんじゃねえの〉っていうのがものすごいありましたね」