70歳を超えてもなお、〈ロックの最前線〉を走り続ける矢沢永吉。コロナ禍によってライヴを中止せざる負えない状況の中から生まれた、商品化されていない過去のライヴ映像の中から厳選した3本を有料配信した〈3 BODY'S NIGHT(サンバディーズナイト)〉プロジェクト。大好評を得たこの企画がDVD & Blu-rayで発売決定! 矢沢永吉渾身のこの3作品を紐解いてみよう。
矢沢永吉の過去のライヴ映像作品を配信する〈3 BODY'S NIGHT(サンバディーズナイト)〉。2020年6月から9月にかけて行われたこのプロジェクトで放送された3つの未発売ライヴ(1999年、2017年の日本武道館、2019年に開催された18年ぶりの横浜アリーナ公演)の映像がBlu-ray & DVDでリリースされる。矢沢自らがミックスダウンを行った迫力溢れるサウンド、そして、臨場感たっぷりの映像。キャリアの中でも特別な意味を持つ3本のステージをリアルに追体験できるアイテムだ。
DISC1〈LOTTA GOOD TIME 1999〉は、50歳を記念して行われた、ホール、アリーナ、スタジアムを含む全50本ツアー〈LOTTA GOOD TIME」から、最終日(1999年12月11日)の日本武道館公演を収録。加藤ひさし(ザ・コレクターズ)が全曲の作詞を手がけたアルバム『LOTTA GOOD TIME』の収録曲(“Oh!ラヴシック”、“ロックンロール・バイブル”、“バーチャル・リアリティー・ドール”など)をはじめ、“アイ・ラヴ・ユー,OK”、“止まらないHa~Ha”、“SOMEBODY'S NIGHT”、“トラベリン・バス”といった〈矢沢クラシックス〉と呼ぶべき名曲が混ざり合うセットリスト、日米の凄腕ミュージシャンが揃ったバンドサウンド(山本恭司のギターが最高!)、ストリングスやホーンを交えた色彩豊かなアレンジ、そして、武道館のステージをバイクで疾走するド派手な演出など、音楽的な質の高さとエンターテインメントがせめぎ合うステージが繰り広げられる。さらに同じ年に行われたUSツアーのドキュメント映像も。ロックが生まれた国・アメリカに乗り込み、日本のロックをぶちかます矢沢のギラついた表情とコメントも強烈だ。
DISC2〈TRAVELING BUS 2017〉は、矢沢が初めて武道館公演を行ったツアー〈TRAVELING BUS '77 CONCERT TOUR〉から40年目にあたる2017年に開催された武道館公演をシューティング。セットリストには、77年の武道館公演でも披露された9曲(“セクシーキャット”、“奴はデビル”、“最後の約束”、“キャロル”、“恋の列車はリバプール発”、“ライフ・イズ・ヴェイン”、“トラベリン・バス”、“ウィスキー・コーク”、“黒く塗りつぶせ”)が含まれ、日本のロックシンガーが初めて日本武道館でライヴを行った40年前のステージを生々しく追体験できる内容となっている。また〈本当の意味で日本にロックを定着させるには、どうしたらいいかを考え続けた〉という趣旨のMCも必聴だ。さらにこの年の7月に逝去した作詞家・山川啓介が歌詞を手がけた“親友”、“チャイナタウン”のメドレー、当時の最新アルバム『Last Song』から“夢がひとつ”、“翼を広げて”なども披露され、時代や流行を超越したロックシンガーとしての凄みと奥深さをたっぷりと堪能できる。男性パフォーマーたちによるフラッグを使ったステージング、女性ダンサーによる艶やかな和の雰囲気をまとった演舞など、大スケールの演出も見どころだ。
そしてDISC3〈ROCK MUST GO ON 2019〉は現時点での最新ライヴ映像。70才を迎えた矢沢が〈ROCK MUST GO ON=ロックは止めてはならない〉という強いメッセージのもとに行ったツアーから、18年ぶりの横浜アリーナ公演が収められている。ツアー中、喉の不調によりキャリア初の公演中止を余儀なくされた矢沢。ファンの期待がいつも以上に膨らんだステージだったわけだが、〈今から2時間、矢沢永吉魅せますので、最後までゆっくり楽しんでください〉という言葉通り、完全復活と称するに相応しいパフォーマンスを目撃できる。ライヴ前半では、オリコンランキング1位を獲得した7年ぶりのニューアルバム『いつか、その日が来る日まで...』から“今を生きて”、“ヨコハマUō・Uō・Uō”、“デジャブのように”などを披露。さらに“TAKE IT TIME”、“くちづけが止まらない”といった80年代の知る人ぞ知る名曲、“チャイナタウン”、“YES MYLOVE”、“ウィスキー・コーク”をつなぐ絶品のバラードメドレーも。幅広い時代の楽曲によって、奥深さを増した音楽性とボーカルを体感できる内容となっている。MCのなかで〈70才で現役。いつまで歌えるからわからないけど、ヨロシク!〉と挨拶した矢沢。本作を観れば、45年以上に渡り日本のロックシンガーのトップを張り続ける彼の強靭な肉体と精神を実感できるはずだ。
3作を通して感じられるのは、ロックミュージックへの強い愛情、日本のロックを牽引してきた矜持、そして、〈命ある限りステージに立ち続ける〉という覚悟。先が見えない現状において、何があっても立ち上がり、未来に進み続ける矢沢永吉の姿は、多くのロックファンに勇気を与えることになるだろう。