1945年にメシアンが作曲した悲恋物語「ハラウイ」の名録音を再発売!
現代歌曲のなかで飛び抜けた人気を誇る大作といえば、やはり“ハラウイ -愛と死の歌- Harawi”になるだろう。フランスのメシアンが1945年に書いた全12曲の歌曲集で、邦人歌手の録音も多い一作である。メシアン曰く「ペルーの民謡からメロディを採り、歌詞は(仏語で)自作した。題名のハラウイは、古い言語のクチョワ語で〈愛と死の歌〉を意味する」とのこと。詩の内容は、抗い難い恋愛に燃える男女が死に至るさまを描くので、有名なトリスタン伝説を想起させもする。今回は、鎌倉出身でパリ在住のメゾソプラノ小林真理の録音(2008年収録)が再発売の機を得たことから、さっそくインタヴューに応じて貰った。
「東京藝大の大学院で“ハラウイ”をテーマに博士論文を書きました。なので、この歌曲集は私のライフワークでもあるんです。給費留学生としてフランスに行き、パリのコンセルヴァトワールに入りましたが、ピアニストの棚田文紀さんとはその時からのお友達。この録音も、二人で意見を交わしながら作り上げました。棚田さんは藝大の作曲科のご出身ですが、ピアノの腕前はコンセルヴァトワールでも話題を集めたぐらいで、ご一緒出来て本当に嬉しかったんですよ」
録音を聴くと、小林の静かな歌声が天の川のようにゆったりと流れるなか、棚田のピアノは、夜空の星々のごとく、メロディに煌めきを添え続ける。それは、プラネタリウムの空間のごとく「人の心に落ち着きをもたらす」歌いぶり。マグマのような熱気や、奔流にも似た勢いを示す歌手たちとはまた違う世界観が聴き取れる。
「ありがとうございます。メシアンの譜面にはテンポが明示されない箇所が多く、解釈は一から作り上げました。コンセルヴァトワールではレジーヌ・クレスパン先生に習ったのですが、先生は私の声が活きる道を幾つも呈示して下さり、『絶対音感があるのだから現代ものも歌えるし、声質から考えてバロックも勉強した方がいいわ』と仰って、ウィリアム・クリスティ先生のクラスにも入れて頂きました。長年ストラスブールで教えていまして、パリとの往復で忙しい日々ですが、7月には日本で、フランソワ・ファイトさんのオペラ“卒塔婆小町”の世界初演にも出演します。ただ、今の私は、このCDを通じて、もっと多くの方に“ハラウイ”の素晴らしさを知って頂ければと願うのみです。ぜひ手に取って下さればと思います」
LIVE INFORMATION
オペラ『卒塔婆小町』
2023年7月15日(土)京都文化博物館 別館ホール
開場/開演:16:30/17:00
2023年7月16日(日)京都文化博物館 別館ホール
開場/開演:14:30/15:00
作曲:フランソワ・ファイト
原作:三島由紀夫
企画・演出・出演:小林真理(MS)
https://marie.groupe-chene.com/