ケンモチヒデフミが引く手数多な理由とは?　水曜日のカンパネラ、花譜、ano、Mori Calliope……歪な質感を持つ楽曲、その魅力に迫る

人懐っこいキャッチーさと未体験の歪な質感

あらゆる事象を題材に選ぶことができるケンモチの楽曲は、広告との相性も抜群に良く、多岐にわたるタイアップを行っている。anoが6月21日にリリースした“スマイルあげない”（作詞作曲はanoとの共作）では日本マクドナルドとコラボ。〈チキンナゲット〉や〈マスタード〉、〈ハッピーセット〉といったワードを小気味よく散りばめつつ、歌詞では接客は上手くできないが作業だけはきっちりこなそうと奮闘するマッククルーの独白を綴っている。anoのキャラクターに寄り添いつつ、特殊な切り口でタイアップも成立させる巧みなコラボソングを作り上げた。

バーチャルYouTuber／ラッパーのMori Calliopeが歌唱した“未来島 ～Future Island～”は、「ONE PIECE」106巻の発売を記念した公式テーマソングだ。“エジソン”で〈発明王にオレはなる〉と歌ったことがこの起用に繋がったかどうかは不明だが、作品に見事に適応した楽曲である。序盤はレトロなシンセポップだが終盤では不穏なトラップが繰り出され、楽曲の構成は極めて独特だ。素材同士を丸ごと組み合わせ、カオスな高揚感に溢れる1曲に仕上がっている。

ある種の違和感をも内包したまま、特異な言語感覚と確かなトラックメイクによって突飛なアイデアを具象化するケンモチの楽曲。人懐っこいキャッチーさとともに、未体験の歪な質感を持つからこそ何度も聴き入ってしまうのだ。

花譜やMori Calliopと時期を同じくして、水曜日のカンパネラ“マーメイド”、ExWHYZ“フラチナサマー”と手掛けた新曲が立て続けにリリースされているケンモチヒデフミ。新たな驚きを常に届けてくれる彼の楽曲は、この先も我々を魅了し続けるだろう。