INTERVIEW

ハルカトミユキ、初顔合わせのクリエイター招聘&悩みながらも〈歩みを止めない〉意志で新たなステージへ進んだ新作

ハルカトミユキ、初顔合わせのクリエイター招聘&悩みながらも〈歩みを止めない〉意志で新たなステージへ進んだ新作

悩むなら、動きながら悩め! 真っ直ぐな言葉と鮮やかな音を手に、2人はいま、自身を取り巻く〈世界〉に向けて軽やかに走り出す――


 

ハルカトミユキ 世界 ソニー(2015)

 2015年の元旦に公開された“世界”には驚かされた。この2人にしてはかつてないほどの風通しの良さを備えた、疾走感溢れるギター・ポップ。だが、分厚い音のレイヤーを覆う深いリヴァーブと、ハルカ(ヴォーカル/ギター)の透徹した歌声が、彼女たちらしい微かな憂いを運んでくる。この曲は、ハルカトミユキが次のステージへ進んだことを如実に伝えていた。

 「“世界”は、〈旅立ち〉とか、〈新たなスタート〉っていうイメージの曲で。ただ、すべてを吹っ切れてるっていうわけでもなく、たまに振り返ってしまうとか、一生懸命に手を振ってるんだけど涙が出てくるとか、そういう複雑な気持ちは絶対にあって。それでも前に向かって走ってる、そういう感じを出したかったんです」(ハルカ)。

 “世界”の配信リリースと同時に告知された2人の今年のマニフェストは、新曲を12か月連続で発表することと、ミニ/フル・アルバムを一枚ずつ送り出すこと。だが、今回の新作『世界』の制作までは足を止めていた期間も長かったという。

 「『シアノタイプ』(2013年)以降は、精神的にきつい時期があって。そこから抜け出せたきっかけは、ライヴですね。歌うってこと自体、頭で考えることじゃないというか、〈歌いたい〉っていう衝動に素直に従ったら、湧き上がってくる感情を素直に書いてみたら、もっと伝わりやすくなるんじゃないかと思って。それで、無理矢理にでも動き出す、みたいな感覚になれたんです」(ハルカ)。

 一方、これまでの作品に増して、自分の色を出したいと考えていたミユキ(キーボード/コーラス)は、自身の音楽的な嗜好を掘り下げることで、進むべき道を模索していた。

 「そういえば、ファーストEP(2012年の『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』)が出たときはフォスター・ザ・ピープルのファーストにハマってたなって。あの肌触り……みんなが受け入れやすいメロやトラックなのに、なんでこんなにカッコイイのか……。わざわざ意識して暗いものを作る必要なんてないですよね。いまの私……もしかしたら、何かが違うのかもしれないと。それで掘り下げていったら、80年代のニュー・ロマンティックに辿り着いたんです。ボーイ・ジョージ、カッコイイ!って(笑)。何より曲が良いし、アナログ・シンセや打ち込みのドラムが私のなかでフォスターと繋がって、これは私のキャラクターにできるかもしれないって」(ミユキ)。

 そうした個々の〈気付き〉を踏まえて制作を開始した本作には、miwaらを手掛けるNAOKI.Tナカムラヒロシi-dep)、黒瀧節也iiP)、根岸孝旨など初顔合わせのクリエイターを招聘。その結果、「メロディーが綺麗なので、ライドみたいなシューゲイズと合わせて。ちゃんとアナログ・シンセも入れました(笑)」(ミユキ)という“世界”をはじめ、80sシンセ・ポップ調のトラックに乗せて〈ヘタレ〉の自分に別れを告げる“tonight”、EDMにも似た昂揚感をもたらすダンス・トラック上で珍しく〈女の顔〉を見せた言葉が躍る“嘘ツキ”など、どこを取っても新味が感じられる出来に。そもそもの持ち味である弾き語りを元にした“マゼンタ”や、冷ややかな揺らぎを湛えたバラード“君はまだ知らない”も音の抜き差しやノイズ/エレクトロニクスの配置が洗練されていて、よりドラマティックな感動をもたらす。なかでも印象に残るのは、複数の楽曲に散りばめられた〈生きる〉というワードだ。諦念によるシニカルな視点をあとに、〈歩みを止めない〉という意志を露にした『世界』は、2人はまだまだ進化の過程にあることを示している。

 「これまでは諦めたふりして綺麗にまとめるとか、恥ずかしくて言い切れなかったりとか……駄目だったときのことを考えると、期待するのが怖かった。でも、いまは割と、全面的に期待しちゃってるのかもしれないです(笑)。悩むのは性だとしても、動きながら悩めと(笑)。今回はそういう気持ちで作った作品です」(ハルカ)。

 「〈音〉に対してカッコつけたりひねくれたりしてた部分が素直になったら、軸になるのは〈ポップスであること〉だと気付いた。もう見失わずに、追い求めていくだけだと思ってます」(ミユキ)。

 

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ここではハルカトミユキの関連作品を紹介。2012年11月の『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』、2013年3月の『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』と、立て続けにEPを発表した2人。短歌形式の表題はもちろん、冷めた言葉と共鳴する透明度の高い音世界で話題を集めます。そして、同年11月には初のフル作『シアノタイプ』も登場。ポップさを逆手に取って内なる怒りを浮き彫りにすると、過渡期となる2014年には3枚目のEP『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』も上梓。同年10月にはフラワーカンパニーズのトリビュート盤『I LOVE FC MORE THAN EVER ~FLOWER COMPANYZ TRIBUTE~』にも参加しています。 *bounce編集部

 

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