子ども時代から魅了されているプライスとブルッフを録音
アメリカと韓国の血を引き、幼少時代は日本で過ごしたヴァイオリニスト、ランドル・グーズビーは数々の受賞歴を誇り、人気沸騰中だ。その彼がアフリカ系アメリカ人の作曲家フローレンス・プライスのヴァイオリン協奏曲をヤニック=ネゼ・セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団と録音した。
「プライスの音楽には独特のスピリチュアルな感覚が含まれ、以前から魅了されています。フィラデルフィア管はプライスの作品を知り尽くしているため、僕はそのスタイルのなかに自然に溶け込むことができました。彼女の作品は黒人系のルーツが色濃くただよい、強い情熱も感じられます」
カップリングはブルッフのヴァイオリン協奏曲である。
「ブルッフのコンチェルトは僕がヴァイオリンに魅せられたころからもっとも好きな作品で、心に近いと感じています。こうした作品はクラシックをふだん聴かない人をも魅了すると思いますので、もっといろんなところで弾きたい。僕はテネシー州メンフィスで音楽を広める活動を行い、子どもたちに楽器を弾く楽しさを伝えています。それが僕の“使命”だと思うからです。子どものころから音楽と歩んできたことから、その楽しさや幸福感をひとりでも多くの人に味わってほしいのです」
子ども時代から練習が大好きで、イツァーク・パールマンに師事してからその思いに拍車がかかり、いまも練習は楽しいという。
「パールマン先生は、技術的なことよりもその作品をどう感じているか、どのように表現したいかということを優先するようにということを教えてくれます。もう10年以上師事していますが、音楽からインスピレーションを得て自由な発想を広げ、自分の音色や表現力を磨き上げる、その大切さを学んでいます」
7月には待望の来日公演を実施。
「20年ぶりの日本なので大好きなゴルフもしたいし、寿司も食べたい。おいしい物を食べると幸せな音楽が奏でられるから(笑)。半年前から弾いている1708年製ストラディヴァリウス〈シュトラウス〉とともにいい演奏をしたいですね。この楽器は明るくよくうたう響きを備えていますが、録音時は1735年製グァルネリを使用し、こちらはダークで深々とした音が特徴です。9月にはノルウェーでオスロ・フィルと共演する予定です」
みんなが好きになるナイスガイ。プライスもブルッフも吸引力が強く魅惑的。21世紀を担う逸材の登場に心が高揚する思いだ。