上白石萌音の色彩豊かな音楽を堪能できる映像作品

上白石萌音からライブ映像作品「Mone Kamishiraishi『yattokosa』Tour 2023」(Bru-ray/DVD)が届けられた。

上白石萌音 『Mone Kamishiraishi『yattokosa』Tour 2023』 ユニバーサル(2024)

舞台、映画、ドラマなど幅広いフィールドで俳優としての存在感を示す一方、歌手としても素晴らしい魅力を放ち続けている上白石萌音。本作は2023年11月から12月にかけて行われた全国ツアー〈上白石萌音『yattokosa』Tour 2023〉から11月24日の東京・国際フォーラム ホールA公演の模様を収録した映像作品。オリジナル曲、カバー曲、ミュージカル楽曲からゲストミュージシャンとのコラボまで、色彩豊かな音楽性を堪能できる作品に仕上がっている。

今回は本作のリリースを記念して、当日のライブレポートと映像で楽しむ際のポイントをお届けしよう。

 

歌声を交わし合う喜び

会場が暗転すると、客席には美しいペンライト光。ジャジーな雰囲気のSEに合わせて観客が手拍子を鳴らす。ステージの真ん中にピンスポットが当たると、そこには上白石萌音の姿が。ライブの幕開けは大橋トリオとのデュエット曲としてもリリースされた“ミルクとシュガー”。シックな手触りのサウンドとメロディが会場全体をゆったりと包み込む。さらに〈恋のはじまり〉を抒情的な旋律とともに描き出す“Little Birds“では〈ラララ~〉というコーラスを観客が合唱。満面の笑みをたたえた上白石も、歌声を交わし合うことの喜びをしっかりと味わっているようだ。

「みんなよく声が出てること!」「みなさんに楽しんでいただけるように、私達も楽しみます。どうぞよろしくおねがいします」という挨拶の後は、色彩豊かな楽曲によってさらなる一体感を演出。カントリー調のポップソング“チョイス”では観客がハンドクラップで参加。上白石はステージの上を自由に移動し、観客にマイクを向けてコミュニケーションを取る。

〈神様 お疲れ様/死ぬまで 恋していたいよ〉からはじまるロックンロール“永遠はきらい”では「立っちゃっていいじゃない?」と語り掛ける。ごくごく自然に音楽を共有しながら、オーディエンスのテンションをしっかりと上げていくステージが気持ちいい。

消灯式をやりましょうよ

ハッピーな空気を一変させたのは、“From The Seeds”。ヘヴィなバンドサウンドを浴びながら凛とした表情でエモーショナルな旋律を歌い上げる姿はインパクト十分。本当に多彩な表現を持ったシンガーだ。

「ここから、とっても灯かりがきれいなんです。なので(ペンライトの)灯かりを消してください。あ、そうだ。消灯式をやりましょうよ。3、2、1」と一斉にペンライトが消える。ここからはアコースティック編成。まずは上白石自身が歌詞を手がけた“スピン”。曲名は栞で使われる紐のこと。デビューからの日々のなかで感じたこと、大切な人、お世話になった人たちへの思いを込めた歌には、何気なくて大切な日々の素晴らしさを感じさせてくれるナチュラルなパワーに溢れていた。

ステージに置かれた階段に座ったままで歌われた“スターチス”は、小さな傷を抱えながら、それでも前を向いて進んでいく決意を綴ったミディアムバラード。歌の機微はもちろん、感情の移り変わりを繊細に伝える表情にもぜひ注目してほしい。

 

“夕陽に溶け出して”で迎えた最初のクライマックス

〈上白石萌音 × 内澤崇仁(androp)〉名義でリリースされた“ハッピーエンド”(映画「L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。」主題歌)は切なくも愛らしいラブソング。

そして彼女の歌の魅力が広く伝わるきっかけになった“なんでもないや(movie ver.)”(映画「君の名は。」より)へ。どちらも上白石自身が出演した映画の楽曲だが、映画のストーリー、世界観とリンクしながら、〈上白石萌音の音楽〉として明確な存在感を放っていた。彼女が紡ぎ出す言葉を際立たせながら、情景や感情をリアルに浮かび上がらせるバンドサウンドも素晴らしい。

“夕陽に溶け出して”では、ステージの奥に夕陽をモチーフにした映像が浮かび上がる(しっかりと振り返って見つめる上白石の姿も印象的だった)。音楽プロデューサー・小林武史が作詞・作曲したこの曲は、日々の悲しみや葛藤を乗り越え、明日に向かって歩き出す姿を描いたナンバー。〈明日がもしも 晴れるなら/あなたに会いにいこうかな〉というフレーズを伸びやかに歌い上げるシーンは、本作における最初のクライマックスだと思う。

 

物語に寄り添って歌う表現者

〈yattokosa〉ツアーでは、〈その会場だけの〉カバー曲も披露された。東京公演でセレクトされたのは、“東京”(くるり)。「年を重ねるごとにグッとくるなって感じがします。東京に出てきて10年経ちましたが、電車はまちがえるし。ですが、やっと〈おうちだな〉と思えるようになってきました」というMCに導かれた上白石萌音の“東京”は、素朴さと可憐さと決意が滲んでいた。

さらに〈ギターと歌〉のアレンジで歌唱された昭和の名曲“秋桜”(さだまさし)で美しい憂いを生み出した後は、〈演劇コーナー〉へ。

「私はJ-POPの曲よりも先にミュージカルの曲を聴いて育ったんです。演劇に憧れてこの世界に入りまして。役を演じながら歌うのは体の一部になっていますので、そんな曲たちを聴いていただきたいと思います」。

そんな言葉とともに披露されたのは、“叶わぬ夢”(ドラマ「探偵ロマンス」より)、“自由こそ”(「ジェーン・エア」より)、“パート・オブ・ユア・ワールド”(「リトル・マーメイド」より)の3曲。それぞれの作品のストーリーや登場人物にしっかりと寄り添いながらのパフォーマンスは、まさに俳優・上白井石萌音。シアトルカルという言葉ではまったく足りない、演じることと歌うことがこんなにも強く結びついている表現者はやはり稀だ。その立ち居振る舞いと歌声を至近距離で追体験できるのも、映像作品ならでの楽しさだろう。

 

豊かさを増すボーカル、絶品のステージングで魅せる後半

「もう終わりが見えてきたよ。点灯式やろうか」という声に導かれ、客席に再びペンライトの光が灯る。「ちょっと楽しい感じで盛り上がってまいりましょうよ」と軽やかなポップチューン“skip”を笑顔で響かせ、ライブは後半へ。

ホーンセクションの響き、ウッドベースを取り入れたジャジーなサウンドが印象的な“ジェリーフィッシュ”ではシックで切ないメロディを描き出し、〈まさかこうして/歌う人に君がなるなんて〉というフレーズがゆったりと広がった“君の名前”では大切な人に語り掛けるような表現で魅了。楽曲を重ねるにつれて豊かさを増していくボーカル、指先の動きや視線にまで意識を巡らせたステージングはまさに絶品だ。

「夜って静かだし、真っ暗だし、一人っきりだし、いろんなこと考えちゃいますよね。そうやっていっぱいいっぱい考えて、眠れない夜を過ごしている人のことをとても素敵だなと思います。その経験は誰かに寄り添う優しさになるし、この先、壁にぶつかったときの支えになると思うんですよね」。そんな言葉に導かれた本編最後の曲は“夜明けをくちずさめたら”。孤独を抱えながら生きる人たちに寄り添い、励ます力をたたえた歌は、観客ひとりひとりの心を包み込みながら大きな感動へと結びついた。

 

角舘健悟との貴重なセッション

アンコールではスペシャルゲストの角舘健悟(Yogee New Waves)が登場し、角舘が提供した“ひかりのあと”を披露。角舘はアコギとコーラスを担当し、原曲の魅力をしっかりと体現してみせた。さらに「もともと大好きだった曲です」(上白石)というYogee New Wavesの“Climax Night”をセッションする貴重なシーンが実現した。

ラストは森山直太朗の提供曲“懐かしい未来”。郷愁を誘う旋律、未来への思いが共鳴する歌によって、ライブはエンディングを迎えた。

〈上白石萌音『yattokosa』Tour 2023〉の全編をリアルに追体験できる本作には、特典映像として新曲“Loop”のMVと撮影時のメイキング映像も収録。普遍性と瑞々しさを兼ね備えた上白石萌音の歌の世界を心ゆくまで堪能してほしい。

 


RELEASE INFORMATION

上白石萌音 『Mone Kamishiraishi『yattokosa』Tour 2023』 ユニバーサル(2024)

リリース日:2024年4月17日(水)

■Blu-ray
品番:UPXH-1089
価格:5,940円(税込)
特典:手作り萌音MAP 石川/宮城/山口(計3か所)

■DVD
品番:UPBH-1516
価格:4,480円(税込)
特典:手作り萌音MAP 熊本/愛媛(計2か所)

収録内容
・オープニングSE/Tea for Two
・ミルクとシュガー
・Little Birds
・チョイス
・永遠はきらい
・From The Seeds
・スピン
・スターチス
・ハッピーエンド
・なんでもないや(movie ver.)
・夕陽に溶け出して
・東京
・秋桜
・叶わぬ夢
・自由こそ
・パート・オブ・ユア・ワールド
・skip
・ジェリーフィッシュ
・君の名前
・夜明けをくちずさめたら

 アンコール
・ひかりのあと with 角舘健悟(Yogee New Waves)
・Climax Night with 角舘健悟(Yogee New Waves)
・懐かしい未来

映像特典
・Loop Music Video
・Loop Music Video Behind the Scenes

 


PROFILE:上白石萌音

98年1月27日生まれ。鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞し、デビュー。2014年、「舞妓はレディ」にて映画初主演を飾り、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々受賞。その他の主な出演作品として、映画「君の名は。」、「溺れるナイフ」、「ちはやふる」シリーズ、「羊と鋼の森」、「L♡DKひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。」、「夜明けのすべて」や、ドラマ「記憶捜査〜新宿東署事件ファイル〜」、「恋はつづくよどこまでも」、「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」、「カムカムエヴリバディ」、舞台「組曲虐殺」、「ナイツ・テイル–騎士物語–」、「ダディ・ロング・レッグズ」、「ジェーン・エア」、「千と千尋の神隠し」などがある。歌手としては2016年にデビュー。2023年1月に武道館ライブを成功させ、10月にシングル『ひかりのあと/skip』、12月に配信シングル“Loop”をリリース。3年連続で全国ツアーを開催した。