ケイシー・ベンジャミンが死去した。
ケイシー・ベンジャミンが亡くなったことは、アメリカなど海外のメディアで3月31日に報じられたのち、彼のInstagramほかSNSアカウントへ遺族による追悼動画が投稿され、公表された。ケイシーは45歳だった。
動画によると、ケイシーは最近受けた手術から回復中だったそうで、遺族は現在情報を収集中だという。また家族や関係者への感謝が述べられており、〈ケイシーは自身の音楽というアートに忠実でありつづけました。彼の魂のエネルギーは永遠に生きつづけるでしょう。私たちはケイシーのレガシーを受け継いでいきます〉とコメントされている。さらにケイシーの追悼サイトも設立されており、続報はこちらで伝えられるとのこと。
ケイシーの早すぎる死に、クエストラヴやデリック・ホッジといったミュージシャンたちが追悼の意を表明しており、ロバート・グラスパーは、「ケイシーは最も才能に溢れた存在だった」「技能においては真の意味で天才だった。彼のいないロバート・グラスパー・エクスペリメントは存在しない。世界は巨人を失い、私は兄弟を失った。彼とステージや人生をともにできたことを永遠に誇りに思う」とRolling Stoneに述べている。
ヤマハのバイオグラフィによると、ケイシー・ベンジャミンは78年生まれ、米ニューヨーク、クイーンズのサウス・ジャマイカで育った。8歳でサックスの演奏を始め、ハーレム芸術学校とフィオレロ・H・ラガーディア音楽芸術高校で音楽を学んだ。また地元クイーンズでの繋がりから、トム・ブラウンやマーカス・ミラー、ウェルドン・アーヴィンらと共演した。
97年にNYCのニュー・スクール大学ジャズ&コンテンポラリー・ミュージックでロバート・グラスパーと出会い、ロバート・グラスパー・エクスペリメントのオリジナルメンバーに。ケイシーはグラスパーの初期の重要作『Double Booked』（2009年）、エクスペリメントの傑作『Black Radio』（2012年）と『Black Radio 2』（2014年）に参加し、『Black Radio』で最優秀R&Bアルバム賞、『Black Radio 2』収録曲“Jesus Children”で最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞と、グラミー賞を二度受賞している。
またビブラフォン奏者ステフォン・ハリスのバンドメンバーとしてレコーディングに参加したほか、コンテンポラリージャズシーン以外ではナズやケンドリック・ラマー、ビヨンセ、カニエ・ウェストといった大物とも共演し、ソランジュの『A Seat At The Table』（2016年）、ア・トライブ・コールド・クエストの『We Got It From Here... Thank You 4 Your Service』（2016年）など現代R&B／ヒップホップの名盤でも演奏している。ニッキー・ギランドとのファンクユニット〈HEAVy〉でも活動しており、ソロではシングル“Dig”を2018年に発表した。
アルト／ソプラノサックス奏者のケイシーは、サックスにエフェクトをかけて独特の音色で演奏することで知られており、マルチプレイヤーとしてシンセサイザーなどの鍵盤楽器も操り、ボコーダーでのユニークな表現も特徴的だった。その自由自在な音色とプレイスタイル、実験的なアプローチは、のちのプレイヤーに多大な影響を及ぼしている。
多彩な活躍によってこれからのジャズやブラックミュージックを背負い、音楽の可能性を拡張していったであろう稀有な才能の急逝が、残念でならない。心から哀悼の意を表する。
