8年ぶりとなる3枚目のフル・アルバム。デヴ・ハインズ関与のEPや自主レーベル製コンピの流れを汲む越境感覚、〈Black Lives Matter〉的な動きに呼応しつつ黒人ルーツや女性の自立にまで拡げた壮大なテーマを姉ビヨンセの最近作と重ね合わせたくもなるが、音の感触はスウィートで優しい。制作ではラファエル・サディークが主導権を握り、ソウル/ファンクのオーガニックな質感と80sポップ的なソリッドな風合いを交配。先行カットの“Cranes In The Sky”をはじめ、リル・ウェイン、Q・ティップ、サンファらを招いて、控えめに声を添えるトゥイートのように艶やかな声で歌い舞う尖った美曲は、過去最高に彼女の真価が発揮されたと言っていい。頻出するインタールードにはマスター・Pやケリー・ローランドらを起用。NOLAセカンドラインを採り入れつつ、BJ・ザ・シカゴ・キッドやドリームと相見えれば、鬼才ジュニー・モリソンに捧げた曲も披露。この大作感はケンドリック・ラマーの〈TPAB〉にも匹敵する。全米1位にも納得だ。